なぜ不動産購入が相続税対策になる?その仕組みと注意するポイントをプロが解説

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2021.5.25
更新 2022.4.12

 
不動産は相続税の節税効果が高く、資産形成にもなることから相続税対策の方法として注目されています。不動産会社や税理士などの専門家も、不動産を使った節税対策をよく提案をしています。
 
不動産購入が節税対策になるのは、「相続税を算出するための相続税評価額が、現金よりも下がる」という仕組みがあるからです。
 
そして、その不動産の中でも節税効果が高いのが区分マンションです。
 
本記事では、なぜ不動産は相続税対策に効果があるのか、そして相続税対策として購入するときの注意点をお伝えします。

 
 

今回のポイントは以下の通りです。
 

・現預金と不動産の相続税評価額を比べると、不動産の方がかなり低くなる。そのため現預金を不動産に換えることで相続税評価額が下がる。
 
・区分マンションが相続税節税になるからくりは「貸家評価」「土地面積」にある。
 
・区分マンションの中でも大規模マンションやヴィンテージマンションはより対策効果が高くなる。
 
・区分マンションは1棟アパートよりも遺産分割の対策として有効というメリットもある。
 
・空室になると賃料収入が0となることやなどリスクもある。相続税対策だけの効果をみて購入せず、あくまでの不動産投資であることを考えて検討することが大切。

 
 

 区分マンションと分譲マンションの違い

分譲マンション
 
まず初めに、区分マンションと分譲マンションの違いについて理解しておきましょう。
 
一般的にマンションを所有する場合には、マンション1棟を所有する場合と、マンションの部屋部分のみを所有する場合があります。
 
1棟ではなく後者の部屋部分のみを所有する場合を「区分マンション」や「分譲マンション」と呼んでいます。
 
そして、不動産賃貸など投資目的や相続対策目的で所有する場合を「区分マンション」、自分が自ら居住するために所有する場合を「分譲マンション」と呼びます。
 

 不動産はなぜ相続税対策効果が高いのか


 
相続税を計算するとき、まずは遺産の相続税評価額を求めることになります。
 
現預金は額面どおりの金額が相続税評価額ですが、不動産の相続税評価額は購入価格ではなく、相続税法で決められた算式で求めます。
 
一般的には購入価格よりも相続税評価額の方が低くなることが多く、その差額が大きくなればなるほど相続税対策に効果的となります。
 
それでは、そのからくりをみていきましょう。

 不動産の相続税評価額の求め方

不動産の相続税評価額は、土地と建物に分けて次のように計算します。
 

土地:土地面積×相続税路線価
建物:固定資産税評価額
※土地は形状などで一定額を減額できますが、本記事では割愛します。

  
では例をみてみましょう。
 

・現預金1億円で取得した自宅
・土地面積は100㎡
・相続税路線価は1㎡当り45万円
・建物の固定資産税評価額は3,000万円
 
この自宅の相続税評価額をさきほどの計算式に当てはめます。
 
土地 100㎡×45万円=4,500万円
建物 3,000万円
土地+建物=7,500万円

 
自宅の相続税評価額は、土地建物の合計で7,500万円となります。
 
つまり現金を不動産に組み換えることで、1億円―7,500万円=2,500万円も相続税評価額が下がったことになります。
 
単純計算ですが、もし相続税率が30%だしたら、下がった分2,500万円×相続税率30%=750万円も相続税を安くできたことになります。
 
所有している不動産の相続税評価額を計算してみたい方は、「路線価ってなに?相続の前におさえておきたい路線価の基本と2つのポイント」をごらんください。
 

 人に貸すと貸家評価となり相続税評価額が下がる

不動産を貸していた場合は、上記で求めた価格から「貸家評価」として相続税評価額を減額することができます。
 
先ほどの自宅を賃貸した場合から考えてみましょう。
 
・現預金1億円で取得した自宅を第三者に賃貸する
・自宅の土地の相続税評価額は4,500万円(自用地評価額といいます)
 自宅の建物の相続税評価額は3,000万円(自用家屋の評価額といいます)
 
賃貸した場合の相続税評価額は、土地は貸家建付地、建物は貸家割合という減額割合を乗じて計算することになります。
 
減額割合の正しい求め方はありますが、本記事では簡易的な算式で求めます。
 

土地:自用地評価額×(1-20%×賃貸割合)
建物:自用家屋の評価額×(1-30%×賃貸割合)

 
この計算式に当てはめると
 
土地:自用地評価額4,500万円×80%=3,600万円
建物:自用家屋の評価額3,000万円×70%=2,100万円
 
現預金1億円で取得した自宅を第三者に賃貸すると、相続税評価額は土地建物合計5,700万円となります。
 
つまり現預金を不動産に組み換えて賃貸することで、1億円―5,700万円=4,300万円も相続税評価額が下がることになります。
 
賃貸割合とは、アパートの部屋を貸している割合のことをいいます。
例:同じ広さの部屋が10室あるアパートの場合
  全部屋を貸している:賃貸割合100%
  9部屋を貸して、1部屋は子が使っている:賃貸割合90%
  9部屋を貸して、1部屋は募集中:賃貸割合100%
  9部屋を貸して、1部屋は募集していない:賃貸割合90%
 
賃貸不動産の相続税評価額の求め方や、相続税評価額の下げ方を知りたい方は、「築40年の古いアパートが相続税対策になる!?子どもに贈与するか相続させるかの判断基準を徹底解説」をご覧ください。
 

 借入金があると相続税の課税対象の財産額が下がる

相続税を求めるときは、現預金や不動産等のプラス財産から、借入金などのマイナス財産を差し引いて課税対象となる遺産を求めます。
 
マイナス財産があると、その分だけ相続税が課税される遺産額が減るということですね。
 
金融機関からお金を借りて不動産を購入した場合、その借入金が、相続発生時点で残っていて相続人が引き継ぐときはマイナス財産として扱うことができます。
 
なお、団体信用生命保険に加入している場合は、相続があった時に一括で借入金が返済されますので残債0となるのでマイナス財産にはなりません。
 

 時価と相続税評価額の差が大きい不動産

相続税対策として不動産を購入するなら、すこしでも効果が高い不動産が良いと考えますよね。
 
以下の図は、時価を100とした場合の不動産種類ごとの相続税評価額を表しています。
 
表
 
黒色が相続税評価額で、オレンジ色が時価を示しています。
 
左側になればなるほど、相続税評価額>時価の関係となり、対策効果は低くなります。
右側になればなるほど、相続税評価額<時価の関係となり、対策効果が高くなります。
 
現預金を使って不動産を購入すると相続税評価額(黒色)が下がることが分かると思います。
 

 区分マンションは不動産の中でも相続税対策効果が大きい

税金
 
不動産を使った相続税対策で効果が大きいのは、アパートや区分マンションです。
実際どのくらい差が付くのか計算してみましょう。
 

 アパートと区分マンションの相続税評価額の差

購入価格(時価)などの条件を同等にして比べてみましょう。
 
表
 

※各数値等は、効果イメージを分かりやすくしたものであり、実際は詳細計算が必要です。
※相続税対策の効果検証は、税理士等の専門家に確認してください。
 
購入価格や相続税路線価など同じ条件で計算すると、アパートよりも区分マンションの方が相続税対策の効果が高いことが分かります。
 
なぜ同じ購入金額や条件でこうも差が付くのでしょうか。
 
それは、すでにお気づきの方もいると思いますが、区分マンションは土地持分が少ないため、土地の相続税評価額がかなり低くなるというからくりがあるからでした。
 

区分マンションの中で対策効果が大きいもの

区分マンションの中で時価と評価の差が大きく対策効果が高いものを2つご紹介ます。
 

・超高層マンション等の大規模マンション
 ⇒総戸数が多いため、その分土地持分が少なくなる。
 
・ヴィンテージマンション
 ⇒築年経過により固定資産税評価額は下がるが、売買価格は下がらない人気マンション。
  売買価格と相続税評価額の差が大きくなり、相続税対策効果も高くなる。

 
 
この他、区分マンションではありませんが、不動産持分で所有する『小口化不動産』が最近注目されています。
 
新築や築浅の駅前のビルや1棟のマンションを持分(購入口数に応じる)で所有することでき、相続税対策にも区分マンションと同様の効果が得られるため人気を集めています。
 
▽小口化不動産の記事はこちら▽
相続対策に使える小口化不動産とは?5つのメリットと留意点をお伝えします。

 

 相続対策における区分マンション購入のメリット


 
これまでお伝えしたとおり、区分マンションは相続税対策として効果が高いことが分かりました。これは大きなメリットですね。
 
次に区分マンション購入による相続対策上の税効果以外のメリットをお伝えします。
 

 区分マンションは揉めずに遺産を分けやすい

親の資産内容にもよりますが、遺産分割がしやすくなることがメリットとして挙げられます。
 
一例をあげて考えてみましょう。
 
前提条件
・父はすでに亡くなっていて、母の相続対策
・母の財産は自宅と現預金12,000万円
・相続人となる子が3人
・この家族は現預金のうち9,000万円を使って不動産を購入したいと考えている
・子の希望は、借入せず対策することと、兄弟で揉めないようにすること
 
対策として購入検討している不動産
(1)9,000万円のアパート1棟
(2)3,000万円の区分マンション×3戸
 
さて遺産分割で揉めないためにはどちらの方が良いでしょうか。
 
この前提条件では、(2)区分マンション3戸の方が揉めないように分けられるでしょう。その理由は、子それぞれに区分マンションを1戸ずつ分けることができるためです。
 
(1)のアパート1棟の場合には、子3人の共有名義でアパートを相続させるか、もしくは、子1人がアパートを相続し、他の子2人にはアパートに代わる財産を相続させるかなど遺産分割の方法を検討しなければなりません。
 
このように、区分マンションは節税の他に相続のとき分けやすいというメリットがあります。
 
 

 区分マンションを利用した相続対策の2つの留意点


 
区分マンションを利用した相続対策において、留意すべき点もあります。
 

 賃借人が退去すると賃料収入が0円になる

区分マンションは、1棟アパートのような複数戸ではありません。そのため、空室になると賃料収入は入らず0円となります。
 
もし、借入金で購入していると、賃料収入がないので手元の資産から借入金を返済しなければなりません。また、給湯器やエアコンが故障したら10万円単位の費用負担があります。
 
親が財産を持っている方であれば賃料収入が0円でも困らないかもしれません。しかし、子が生活することで手いっぱいで資金的な余裕がないとしたら、借入金を返済したり、エアコンなどの交換費用を捻出するのに苦労することになるでしょう。
 
そうなるとせっかくの区分マンションを売却しなければならないかもしれません。
空室に困らない立地などの良い区分マンションや、賃貸経営で困らない程度の現預金を残すなど、もらう側の子の財産状況なども踏まえて考える必要があります。
 

 賃借人の有無が売却価格に影響する

 
賃借人がいるかどうで売買価格の計算方法が違うため、同じ不動産でも売買価格が変わります。
 
賃借人がいないときは、実需向け不動産(購入して住む人向け不動産)
賃借人がいるときは、収益不動産(投資用に購入する不動産)
 
このように分かれます。
 
まず、実需向け不動産は、分譲マンションを購入し、購入した人が住むことをいいます。不動産価格は、同じマンションや近隣のマンションの取引事例を参考にして計算します。
 
賃借人がいるときは、投資用不動産として購入します。不動産価格は、投資利回りを使った収益還元法という計算方法で求めます。
 
それでは、空室の物件を購入したときの価格と、第三者に貸して売却しようとした場合の価格を比較してみましょう。
 

自分で住むために中古区分マンション(物件A)を価格4,000万円で購入。このときは実需価格として4,000万円ですね。
 
購入後、自分で住むのをやめ、第三者へ月額15万円(年間180万円)で賃貸し、その後すぐに売却したとします。
 
このときの物件Aは賃借人有りなので収益不動産として、年間賃料収入÷投資利回りの計算式で価格を求めます。
 
年間賃料180万円÷投資利回り6%=3,000万円
※周辺の投資利回りを6%と仮定
 
賃借人がいる場合と、いない場合とでは、なんと1,000万円も差が付きました。
 
上記の事例のように、同じ物件なのに賃借人がいるかいないかで売買価格が変わります。
 
相続後に売却する予定がある方は、賃借人いる・いない場合の価格査定をしたほうが良いでしょう。
 
 

賃借人有り・無しを選択できるように『定期借家契約(再契約型)』を利用する

空室状態で購入し、賃貸物件で売却しようとすると、先ほどの事例では▲1,000万円も価格に開きが出てしまいます。相続税をいかに安くできたとしても売却損の方がおおきくなったのでは意味がありません。
  
賃借人の有無を大家(賃貸人)サイドでコントロールできるよう計画を立てた方が良いでしょう。
その方法としては、賃貸借契約の形態を『定期借家契約(再契約型)』とする方法があります。
  

【良く知られている更新型】

・賃借人が契約更新したいと言えば、借主の希望が優先され原則更新されます。
・立ち退きに正当事由がなく賃借人が合意しない限り、契約解除ができません。

  

【定期借家契約:再契約型】

・賃貸借契約満了日の1年前から6カ月前まで賃借人に書面通知すると、契約期間満了と共に契約は終了します。(再契約が可能な場合もあります)
・上記の契約満了日をもって契約終了させるのに正当事由や賃借人の合意は不要です。

 
 
区分マンションによる相続税対策は、対策効果が高いので、その効果だけを期待して深く考えず購入する方が多いです。しかし留意点にあげたことも踏まえて、計画を立てて進めなければなりません。
 
 
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 まとめ

 

・現預金と不動産の相続税評価額を比べると、不動産の方がかなり低くなる。そのため現預金を不動産に換えることで相続税評価額が下がる。
 
・区分マンションが相続税節税になるからくりは「貸家評価」「土地面積」にある。
 
・区分マンションの中でも大規模マンションやヴィンテージマンションはより対策効果が高くなる。
 
・区分マンションは1棟アパートよりも遺産分割の対策として有効というメリットもある。
 
・空室になると賃料収入が0となることやなどリスクもある。相続税対策だけの効果をみて購入せず、あくまでの不動産投資であることを考えて検討することが大切。

 
 
本記事でお伝えしたとおり相続税対策の効果は得られますが、留意すべき点もありますので、購入検討される方は『相続税』の視点だけではなく、『不動産』の価格や維持管理なども見ていく必要があります。
 
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この記事の監修
プロサーチ株式会社 代表取締役 松尾 企晴(まつお きはる)

20歳のとき母方の祖父母を火事で亡くし、祖父祖母の相続では兄妹間の争族に発展。『またいつか』ではなく『すぐにでも』行動しなければならないことや、どれだけ仲の良い兄妹でも揉めることを痛感。会社の事業理念に『家族の物語をつむぐ』を掲げ、不動産等のモノだけではなく、親や子に対する想いや思い出などのコトも含め、家族が織りなしてきた物語(モノやコト)を親から子へと継承していくことこそが【真の相続】と考え、不動産相続のプロとして、お客様の気持ちを聴き、寄り添う姿に多くの顧客から評価を得ている。
現在は全国から寄せられる相続に関する相談の解決に尽力しながら、家族信託の提案や、相続問題解決のヒントをメルマガ・セミナーなどで情報を発信している。

 

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