今こそ知りたい!「事業用不動産買い替え特例」を活用するための3つの検証ポイントとは?
『テナントが新型コロナウイルス感染症(以下、「新型コロナ」という)の影響で減収となり退去した。次のテナントの目途はない』
『既存テナントの賃料を下げてでも退去を減らしたい』
賃貸経営をするオーナーから、このような相談を受けることが増えました。
何年後になるかは分かりませんが、新型コロナのワクチン接種が進んだり、もし特効薬が出来たりすれば、またマスクをしなくても外を出歩けたり、時間を気にすることなくお酒を飲めたりする日が来るかもしれません。
街に人手が戻ることによって、新型コロナが発生する前のように安定した賃貸経営ができるようになると期待してしまいます。
しかし、賃貸経営を取り巻く環境で大きく変わってしまったことがあります。
その一つが、“オフィスのあり方”です。
zoomなどのオンライン会議や面談ツールの普及、テレワークの推進により、オフィスに出社する人の数が減っています。
弊社も2020年3月からテレワークを推進しており、社員全員が揃う機会は月に1度あるかどうか。これは新型コロナの影響がなくなっても続けていきます。
このようにテレワーク化等により社員数に応じたオフィスを確保する必要性が薄れたことで、立地は同じでも床面積を小さくして賃料の支払いコストを抑える動きや、点在していた支店を集約する動きが進みました。
オフィス/店舗ビルオーナーのほとんどは、解約や賃料条件交渉によって収益減になっているところが多いのではないでしょうか。
本記事では、賃料減収や空室増加などによって賃貸経営で悩むビルオーナーに最低限提案すべき3つの検証項目と、『事業用資産の買い換え特例(個人)/特定資産を買い換えた場合の圧縮記帳(法人)(以下総称して、「当該特例」という)』を活用して、安定収益が見込める不動産への組み換えについてお伝えしたいと思います。
本記事のポイントはこちら。
・築古や立地環境などによって賃貸需要が減衰している不動産や底地など、時価<評価となる不動産を組み換え対象とする
・当該特例は令和5年3月31日までに譲渡する必要があるため、今から提案し、ビルオーナーに検討してもらう
不動産を買い換えるときの特例
長期保有している不動産を売却するとき、建物は減価償却され残存価額(簿価)が低く、また、購入時の売買価格が不明な場合、売却価格から控除できる取得費といった経費が少ない分利益が増え、譲渡所得税や法人税(以下総称して、「譲渡税」という)の負担が重くのしかかります。
当該特例は、簡単に言いますと、オフィスビルを譲渡して一定期間内に賃貸マンションを取得して賃貸事業をすることで、譲渡税を最大80%「課税の繰り延べ」ができる制度です。
※譲渡や購入する資産が所在する地域などによって、上記繰り延べの割合が70%や75%となる、買換える不動産(土地)は300㎡以上のものに限られるなど、適用要件や適用可否については必ず最寄りの税務署や税理士等の専門家に確認してから実行するようにしてください。
当該特例を適用することで、支払う税金が減るので売却代金が多く手元に残ります。
(注:あくまで税金の繰り延べです)
選択肢の提供と、当該特例の活用
相談者 | ビルオーナーAさん |
---|---|
資産 | 最寄駅から徒歩10分の1棟オフィスビル(築35年) |
相談 | 空室が埋まらず、新型コロナの影響で既存テナントから賃料減額の相談も相次いでいる。 相続した不動産だけど、今後改修費もかさむため保有継続すべきか、売却すべきか 悩んでいる。 |
お話を聞くと賃貸収入が満室時の50%程にまで下がっていて、建物の小修繕やテナントからの苦情対応、所得税や固定資産税等の負担などで年間の手取りも激減。今後、建物の大規模修繕の費用捻出はもちろん、借入金をしたとしても、返済できるのか不安が大きい様子でした。ご依頼を受け、保有継続/建て替え/組み換えの3つの検証を行いました。
・過去の修繕履歴(確定申告書や管理会社からの月次報告書など)
・建物の現状分析/調査、見積もり(建物調査会社へ依頼)
・賃貸マーケット調査
・空室対策、リフォーム等の費用に関する資金計画 など
まずは、賃貸物件の現状把握を行い、将来の収入や支出を予測。その数値等をキャッシュフロー表へ落とし込みます。
・立ち退き費用、再建築費用などの資金計画
・土地利用の検証(土地全体に建築、土地の一部を売却してその代金を建築費充当する等)
・長期のキャッシュフロー表、修繕計画表の作成など
建物の賃貸収入が減収となっている事実があるため、賃貸マーケット調査は要検証です。
・賃貸レントロール作成(収支、賃貸条件、入居者層の確認)
・過去の修繕履歴
・当該物件に関する書類(建物竣工図、地積測量図など)
・賃貸や売買のマーケット調査 など
賃貸状況を把握し売買価格査定や売却後の概算手取り額の提示(税理士チェック)をします。
ご依頼から1ヶ月半後、検証データを提示しながらAさんにご報告。
Aさん
「検証ありがとう。色々と考えたけど手放そうと思う。検証③の資産の組み換えがいい。保有継続や建て替えは、現状が散々なだけに自信もないし、親には申し訳ないけど売却したい」
とのことでした。
売却に関して、税理士と連携し次のアドバイスをしました。
①購入時の価格(取得費)が不明のため譲渡税の負担が大きく、売却手取りが少なくなる
②当該特例を適用することで、売却手取りを多くすることができる
③上記②をすることで購入資金が増えるので、より良い不動産を購入できる
また、当該特例を利用して、購入資金を増やすことで下記のようなメリットを享受できます。
・物件規模や構造が変わる(3階建⇒5階建などで総戸数が増え、賃貸稼働率が安定する。木造アパートタイプから鉄骨系マンションタイプへ(※賃料坪単価が上がる傾向))
・購入代金に対し、自己負担割合が増え、借入金の割合が減るため、返済リスク低減 など
弊社ではこれまで、以下のような不動産を所有するお客様に提案してまいりました。
・立地環境等から賃貸需要が減衰している賃貸不動産(賃貸収支の改善の見込みが低い)
・人に貸している土地(底地)(時価より相続税評価の方が高く、相続税負担が重い)
適用するには令和5年3月31日までに譲渡する必要がありますから、新型コロナの影響や立地環境から賃料収入が減ってしまった等で賃貸経営に悩むお客様へ提案してみてはいかがでしょうか。
遺産相続コンシェルジュより
本記事のポイントはこちら。
・築古や立地環境などによって賃貸需要が減衰している不動産や底地など、時価<評価となる不動産を組み換え対象とする
・当該特例は令和5年3月31日までに譲渡する必要があるため、今から提案し、ビルオーナーに検討してもらう
賃貸不動産を所有するお客様の多くは、新型コロナがいまだ終息しないこと、オフィスや住まいへの考え方が変わったことなどから、今後の賃貸経営に不安を抱えています。
自分や親が所有する不動産をどう考えていくことがベターなのか?と悩んでいるのです。
今回は事業用資産の買い換え特例を利用する際の検証ポイントについてお伝えしましたが、まずは、不動産の現状把握をしたうえで、選択肢の提供とその検証をすべきでしょう。(記:山内綾子)
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