実家の管理にお困りの方へ。空き家を活用して将来の相続税を抑える方法

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実家の管理にお困りの方へ。空き家を活用して将来の相続税を抑える方法写真

2020.10.20

 
 
実家が「空き家」状態であると、固定資産税や管理費などお金が出ていくことばかりで、さらに相続税上のメリットが得られなくなるなど、お金の面では良いことがありません。
 
しかし、さまざまな事情や考えから「実家はそのまま残したい」方もいらっしゃるでしょう。
 
そこで今回は「実家を残しながら、お金の不安を軽減できる対策」についてお伝えします。
 
 

今回のポイントは以下の通りです。
 

・相続税を大幅に下げたい場合は「相続発生の3年以上前に賃貸」すること
 
・実家の活用方法は、どのように“残したいか”“使ってほしいか”が決断ポイント

 
 

相続発生3年以上前から貸して相続税評価が50%OFF?

空き家状態の実家をつかって賃貸収入を得たいが1年間借り手が見つからないとのご相談から、結果「借り手がすぐにつき、相続税評価を大きく下げられた」Aさんのお話です。
 
【ご家族構成】
お母さん(79歳) 
長女Aさん(53歳) ご主人(56歳) お子さん2人
 

 
【状況】
お母さんが自宅の1階で20年間続けてきた診療所をたたみ、介護施設へ入ることに。
介護施設にかかる費用の一部を捻出するため、空き家となった実家(診療所兼住宅)を貸したいと思い、近所の不動産会社にテナントの募集を依頼されました。
しかし、1階が診療所、2階が自宅という特殊な作りのため一向に入居テナントが決まらず、1年の月日が経過していました。
 
長女Aさんは、空き家である実家はお母さんが健在なうちは売りたくないけれど、借りてくれる人が決まらず困っており、相続税の不安も持っていました。
 
 
≪相続税について≫
長女Aさんは自身で自宅を所有しているため、“特定居住用宅地等”の小規模宅地の特例(※)を適用することができません。
しかし、実家を貸すことで“貸付事業用宅地等”の小規模宅地の特例を適用でき、土地の相続税評価額を土地面積200㎡までを50%も減額できます。
 
長女Aさんは、「心配事の一つであった相続税の支払いを少しでも抑えられるわ!」と嬉しそうでした。
 
※「家なき子のための相続税の軽減」、つまり、配偶者や相続人が住み続けるなら、実家の相続税は安くしますよ、というもの。
 
ただし、「相続発生の3年以上前から貸していること」が適用要件の一つにあります。
つまり、実家を貸した日から3年未満にお亡くなりになるとこの特例は適用できなくなり、50%OFFを使えないということです。

 
私からのアドバイスは、『今すぐに貸すことと、これからもお母さまに元気にてもらうこと』とお伝えしました。
 

 
≪実家の活用について≫
長女Aさんからご依頼を受けて、早速ご実家を訪れました。
 
物件を見て、テナントが決まらない原因として、以下のように考えました。
 

・診療所スペースが広くてどんな使い道があるか分からない。
・2階の居住部分も一切掃除もリフォームしていない荒れた状態で、『住みたい』というイメージが湧かない。
・募集賃料を相場の約12万円よりもかなり高めの25万円で設定していた。

 
しかし、家中を見回すと古いが家具や絵画あちらこちらに配置されていて、特徴のある雰囲気をしています。
Aさんに話を聞くとお母さんはアンティークの家具と絵画を集めるのが大好きだったといいます。
 
たしかによく見ると「レトロ」で洒落てる!!
 
私は、それらアンティーク家具を有効に使った活用の提案もしてみよう!と相続対策を含めた活用プランを色々と検討し、3つに絞りました。
 

プラン1 『現状のまま戸建てとして貸す』
賃貸マーケットの読み直しから、賃貸条件変更を提案。
プラン2 『人に貸さない/月単位からの利用契約/1畳単位貸し物置きサービス』
人が住むためのリフォームをせず、初期コスト負担を減らした簡易的な貸し方を提案。
メリット:人が住んでいるわけではないので、入居中のトラブルがなく管理面が楽。
プラン3 『複数人の住まい/月単位からの定期契約/部屋貸しシェアハウス』
共同リビングや居室にお母さんが大切にしていたアンティーク家具を配置し4LDKから7LDK(一部屋3帖~程度)にリノベーション。
トイレットペーパーなどリネン関係の交換など面倒な運営管理は全て業者にお任せで、不動産事業者が一括借上げ。

 

活用方法
借り手がつかず
空き家のままの場合
プラン1
戸建賃貸
プラン2
倉庫貸し
プラン3
シェアハウス
小規模宅地適用
相続税評価
6,000万円
3,000万円
3,000万円
3,000万円
改修費用
0円
200万円
20万円
400万円
収入(月額)
0(▲租税分)
12万円
10万円
25万円

 
 

収支シミュレーションや他の活用方法と比較検討していきました。
 
長女Aさんやお母さんは
 

“人に住んでもらって使ってほしい。その方が実家の建物を長く維持できると思うの。”
“いざ自分や子ども(孫)が使うときに、できるだけすぐ使えるようにしておきたい。”
 
このような想いがあり、そして、不動産事業者が借り上げるサブリース方法によって「すぐに賃貸した状況となる」等の理由で、シェアハウス活用を決断されました。
 
 
≪その後≫
シェアハウスのリノベーションは3週間で完了。
お披露目会と称して、介護施設からお母さんを招き、きれいに仕上がった内装と自分が大好きで大切にしてきた家具や絵が部屋の至る所に配置されているのを見てとても感動されていました。
 
そして帰り際に「本当にありがとうございました。素敵な人達が使ってくれたら嬉しいです。」とお母さんから最高の笑顔と言葉を頂きました。
 

(実際のリフォーム後の様子)
 

まとめ

今回のポイント

・相続税を大幅に下げたい場合は「相続発生の3年以上前に賃貸」すること
 
・実家の活用方法は、どのように“残したいか”“使ってほしいか”が決断ポイント

 
 
実家が空き家のままでご相続が発生し、“小規模宅地の特例”の適用ができない場合は、相続税の負担が高くなり、相続税納税のため渋々売却しなくてはならなくなることがあります。
 
そのような状況にさせないよう、親が元気なうちに“実家どうする”を家族で話し合っていただきたいと思います。
 
今回の事例のように、ただ単純に一戸建てで貸すだけではなく、貸し方(例シェアハウス)や契約手法(定期借家)、立地条件や家の間取りによっては、より有効な活用方法を検討できる場合もあります。
 
『空き家状態の実家』の有効活用には相続や税金などの問題が絡んできます。ご相談は、相続や不動産に強い専門家にご相談くださいね。
 

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この記事の監修
プロサーチ株式会社 代表取締役 松尾 企晴(まつお きはる)

20歳のとき母方の祖父母を火事で亡くし、祖父祖母の相続では兄妹間の争族に発展。『またいつか』ではなく『すぐにでも』行動しなければならないことや、どれだけ仲の良い兄妹でも揉めることを痛感。会社の事業理念に『家族の物語をつむぐ』を掲げ、不動産等のモノだけではなく、親や子に対する想いや思い出などのコトも含め、家族が織りなしてきた物語(モノやコト)を親から子へと継承していくことこそが【真の相続】と考え、不動産相続のプロとして、お客様の気持ちを聴き、寄り添う姿に多くの顧客から評価を得ている。
現在は全国から寄せられる相続に関する相談の解決に尽力しながら、家族信託の提案や、相続問題解決のヒントをメルマガ・セミナーなどで情報を発信している。

 

 

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