【VOL.2】こんな不動産売却には気を付けろ!土地を分筆して売却する際に考えるべきポイント
資産の組み換えや相続税等の納税、遺産分割のためなどによる土地売却のご相談をいただくことがあります。
不動産以外の専門家からよく「土地を売却するだけなら簡単ではないの?」と言われることがありますが、土地の売却には、権利関係や土地の形状、境界、越境、埋設物など様々な留意点が存在し、ときには売却を困難にすることがあります。
今回はその中でも、特に相続税納税や土地の遺産分けなどでよく提案に上がる「建物がある土地を分筆して売却する」という事例を取り上げていきます。
分筆した土地にはどのような問題点が隠れているのか?
問題がおこらないようにするためのポイント など
どうように考えたらといいのかをお伝えいたします。
【本記事のポイント】
・違法建築物になると売却をする際に売却価格が下がる可能性がある
・お客様からの相談で押さえるべき3つのポイント
~見えるリスク(構築物等)と、見えないリスク(埋設、法令上)~
建物付きの土地分筆で起こる問題点
事例 遺産分割でアパートと駐車場を分けたら大失敗!
相続後、お客様が土地分筆後に売却して問題になった事例です。
・被相続人母Aさん、相続人は子2名(Bさん、Cさん)
・駐車場はアパート入居者に借り手がおらず近隣の方に賃貸している
・Aさんに相続が発生し、BさんとCさんで遺産分割協議中
・顧問税理士の提案により、
Bさん:自宅
Cさん:アパート部分
納税資金:アパート駐車場を売却して納税
相続人のBさんとCさんは、この分割案に従い遺産分割し相続登記をおこなった。
問題発生!土地分筆によりアパートが既存不適格になってしまった
BさんCさんにとって何ら問題のなさそうですが、思わぬ落とし穴がまっていました。
Cさんが相続した半年後に、アパート管理の負担が大変だという理由から、売却して違う資産への組み換えを検討しました。そして、正式にアパートを売却することになり、ここで初めて弊社にご相談があり、不動産調査を進めると、以下の問題点が出てきました。
<問題点>
①アパートが違法状態へ(建蔽率、容積率オーバー)
⇒自治体へ建築申請をする際、アパートと駐車場の2つを含めて一つの敷地として建蔽率や容積率を計算していました。
今回、アパートと駐車場部分を土地分筆し、駐車場部分のみを売却しました。
これにより、アパートがある敷地面積だけでは建蔽率や容積率が足りなくなってしまったのです。
つまり、売却するアパートは、建築基準法上の違反状態です。
※建蔽率:土地面積に対する建築面積の割合です。建築面積は建物を真上から見たときの面積をいいます。
※容積率:敷地面積に対する延床面積の割合です。延床面積は、各階の床面積の合計のことをいいます。
※問題点:違反建築物の物件には金融機関の融資審査が厳しくなり、買主は、融資を受けられず現金をたくさん用意できる買主に限られてしまいます。そうなると、建物を解体するか、価格を下げざるを得ないかもしれません。
②給排水管が駐車場の地下を通って埋設されていた
もう一つの問題は、駐車場部分を第三者が購入することで、給排水管が第三者の土地に越境して埋設されている状態になってしまうことです。
⇒給排水管等が他人の敷地の下を通っていることはあることですが、配管工事の際は基本的に勝手に掘削工事をすることはできません。
参照:2023年4月に一部民法改正:国交省のガイドライン
(https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/sewerage/content/001441824.pdf)
売買の際には、給排水管を駐車場土地から他へ移設すること、もしくは、埋設されている事
実を容認のうえ購入してもらう、などが必要でしょう。どちらにしてもコストがかかる、売
買価格への影響は必至でしょう。
違反建築物や越境の状態により、当初想定していた時価相当額よりも、アパートの価値がなんと3割以上下がってしまいました。
自宅とアパートが同等価値とみていただけに、Cさんは思わぬ経済的損失を被ることになってしまったのです。
Bさんに対して、想定外のことが起きたとして、駐車場の売買代金の一部を、その経済的損失に充当させてほしいとお願いをしていました。関係が良好だったので大きなトラブルに発展しませんでしたが、専門家のアドバイス一つで、このような事態に発展するのです。
遺産分割や納税対策の現場で、不動産がたびたび問題となりますが、”知らなかった“では通じなくなりますから、不動産アドバイスは、詳しい人に相談しながら慎重におこないたいですね。
分筆して売却する際のポイント
先ほどの事例のように、土地分筆するときは、常に土地建物の遵法性を意識する事が大切です。
例:土地300㎡に建物(2階建ての戸建)があります。土地の一部を売却しその売買代金を、
リフォーム代金に充てる計画
・建物面積:1階75㎡、2階75㎡ 延床面積150㎡
・建蔽率:50%、容積率:100%
土地を200㎡と100㎡に分筆
⇒100㎡を売却(200㎡に自宅)の場合:問題無し(建蔽率・容積率ともに範囲内)
⇒200㎡を売却(100㎡に自宅)の場合:問題あり(建蔽率・容積率ともにオーバー)
建物の床面積150㎡、容積率が100%ですので、敷地は150㎡以上あることが必要です。
違反建築物にならずに売却可能面積は、今回のケースでは最大150㎡ということです。
商業エリア、その他建築制限などがありますから、違反建築にならないように土地分筆するには“留意すべき点が複数ある”と考えるべきです。
ポイントの整理
お客様からの相談で押さえておきたい3つのポイント
2、見えるリスク(構築物等)と、見えないリスク(埋設、法令上)がある
3、土地分筆の確認は、設計会社、不動産会社等に調べてもらう
これらを意識しておくだけで、“リスクを回避した土地分筆”が可能になるでしょう。
土地分筆は建築基準法だけでなく、時価と評価、税法、遺産分けなど、数字や気持ちの部分まで考えなければならない、とても難易度が高いものだと認識することが大切です。
私たちも、土地分筆には細心の注意を払っています。
まとめ 遺産相続コンシェルジュより
【本記事のポイント】
・違法建築物になると売却をする際に売却価格が下がる可能性がある
・お客様からの相談で押さえるべき3つのポイント
~見えるリスク(構築物等)と、見えないリスク(埋設、法令上)~
一つ分筆の仕方を間違えれば、違反建築物になることもあれば、再建築不可の土地を生むことだってあります。
安易に判断せず、不動産と相続に詳しい専門家に相談することをご推奨いたします。(記:友重孝一朗)