家族信託契約後に不動産で必要な手続きとは? 忘れがちなポイントをやさしく解説

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2021.11.22

 
不動産を家族信託した、または、する予定だけど、家族信託をしたあとに何をしたらいいのか教えてほしい。
 
家族信託が世間に広まってきたことの現れか、このようなご相談をよくいただきます。
 
親(委託者)から財産を託された子(受託者)は、親の不動産については初めて知る事ばかりですから、それもそのはずです。
 
家族信託や不動産に詳しい専門家に相談したいところですが、家族信託を扱う司法書士や弁護士といった専門家は、家族信託の契約書は作れても不動産は専門外です。また、不動産会社の多くは家族信託そのものをあまり知りません。
 
ですから、不動産を家族信託したあとのサポートはまだまだ万全ではないのが現状です。
 
そこで本記事では、不動産を家族信託したあとに行う手続きをまとめてお伝えいたします。
 
今回のポイントは以下の通りです。
 

・不動産を家族信託したあと、子(受託者)は、名義変更や管理、信託計算書の作成など、おこなうことが多岐にわたる。
 
・親が元気なうちにできることは、追加信託や子(受託者)のサポート、家族信託を継続するかどうかを判断すること。

 
 

 不動産の家族信託

家と書類
 
親が認知症等で意思判断能力が喪失してしまうと、不動産を、貸したり売ったり建て替えたりなどは一切できなくなります。
 
そうなった時に家族が困らないために、親が認知症等になっても家族で不動産を管理や売買などができるようにと家族信託する方が増えてきています。
 
家族信託とは何かを知りたい方は「家族信託ってなに?概要や仕組みをわかりやすくイラスト解説!」をご覧ください。
 
 

 不動産を家族信託するには

親が子に託すという内容で家族信託契約したあと、不動産については法務局で「信託登記」の手続きをする必要があります。
 
この手続きをすることで、託された子(受託者)が親に代わって管理や売買などをすることができます。
 

 
信託登記の手続きは、家族信託の契約書を作成してくれた司法書士がすることが殆どです。念のため、不動産の家族信託の見積もり書に信託登記手続きがあるかどうか確認しておきましょう。
 
 

 家族信託契約後に不動産で必要な4つの手続き

契約

 
親が財産管理をしていたときは、子がなにか手続きをする機会は少ないですよね。
 
不動産を家族信託すると、子が親に代わってすべての手続きをおこなうことになります。
 
では具体的に子はなにをすればいいのでしょうか。
 
これから4つの項目に分けてお伝えします。
 
 

 信託不動産に関する名義変更

家族信託した後にまずおこなうことは、名義や口座の変更です。
 
自宅・アパート・借地(地主に土地を借りて建物を建てている)の3つの不動産についてお伝えします。なお、自宅でおこなう項目は、借地やアパート等の賃貸不動産でもおこなう共通事項です。
 
 

 自宅

電気ガス水道、建物の火災保険、ホームセキュリティなどです。
必ず変えないといけないわけではありませんが、子の名義に統一しておくことでいざ売却や賃貸するときに、何が親名義で、どれが子名義なのかいちいち確認する手間が省けます。
 
 

 借地

借地は、土地を貸してくれている地主に対し、家族信託により親から子に借地人の名義が変わることを伝える必要があります。
 
名義が変わることは、家族信託する前に伝えるようにしてください。
 
これまでの経験から、名義が変わることを先に伝えないと「なぜ先に言ってくれないのか」と地主との間でわだかまりができてしまうからです。
 
今もし連絡をしていないようでしたら、いますぐに連絡したほうがいいでしょう。
 
この名義変更は、口頭で伝えるだけではなく、できれば履歴が残るように書面で取り交わしておくことがいいです。
 
▽サンプル

 
また、名義変更の承諾料を求めてくる地主さんもいます。料金は借地権価格の10%が相場ですが、計算すると地域の土地価格によって百万円単位になることもあります。
 
この承諾料を請求されたときは、承諾料を支払ってでも家族信託をするのか、家族信託はやめて任意後見など他の方法にするのか、よく検討しましょう。
 
補足ですが、名義変更の承諾料は「売買や贈与による名義変更」のときとされています。
家族信託は実質的な名義は親のままですから、売買等ではないことを地主さんにしっかりと伝える必要があります。
 
たとえば、「認知症対策や財産管理の目的で、家族信託をして私の不動産を子が管理することにした」などです。
 
 

 アパートなどの賃貸不動産

自宅や借地と異なり、名義変更等を伝える先が一気に増えます。
家族信託によって、貸主の名義が変わったことや、賃料等の支払い先等の変更を伝えることが必要です。
 

1.所有者や貸主
2.賃料等の振込先口座
3.連絡先

 
この3点について、賃借人や、管理会社や清掃会社等のアパート管理に関係する方すべてに連絡する必要があります。特に賃料の振込先は何月分の賃料から口座変更をお願いするのかを決め、賃借人さんも金融機関で手続きが必要な場合もあるので早めに通知してあげましょう。
 
 

 信託不動産の管理・収入・支払い

不動産の管理に関する項目は多岐にわたりますから、本記事ですべてをお伝えするのは難しいため、よくある代表的なことに絞ってお伝えしますね。
 
 

 自宅

庭や建物の清掃や換気、土地や建物に関する書類の保管、室内リフォーム、固定資産税等の支払いなどをすることになります。
 
親の自宅が遠方で定期的な管理がむずかしいときは、不動産を管理してくれる会社へ有料で委託することもできます。依頼する内容にもよりますが、月額5,000円~15,000円程度です。
 
なお、固定資産税都市計画税は、信託した翌年から子の自宅に納付書が届きます。信託した現預金から支払いましょう。
 
 

 借地

地主さんへ地代を支払ったり、大掛かりなリフォームや建て替えのとき地主さんへ事前相談と必要な承諾料を支払います。
 
 

 アパートなどの賃貸不動産

アパート等は以下の3つの状態によっておこなうことが異なります。それぞれ代表例な項目を挙げますので参考にしてください。
 
 

空室募集

募集条件を決める、入居審査、部屋の引渡し、空室対策が必要な時は実行する
 

入居中

賃料の入金確認、滞納時の督促、上下階の騒音など苦情対応、設備修理交換、更新契約
 

退去

退去時の立会いや部屋確認、敷金の精算や返還、原状回復工事の発注
 
アパート等は専門知識が必要となることが多いため、賃貸不動産の管理のプロである管理会社やリフォーム会社などと連携しながら、運営上の判断をする方がよいでしょう。
 
 

 信託不動産の売却

家族信託した不動産を売却するとき、子は次のようなことをする必要があります。
 

 自宅

売買の価格査定
売却方法を検討し決定する
売却を依頼する不動産仲介会社の選定
土地の測量
建物内や敷地にある私物撤去
登記識別情報通知(登記済み権利証のこと)など必要書類の準備
売買契約の締結
売買代金の受領
不動産の引渡し
……などです。
 
不動産を家族信託していますから、売却の意思確認は子に対しておこなわれます。親には意思確認しませんので、もし認知症等で意思判断能力が喪失していても売却できます。
 
 

 借地

売却に関する地主の承諾
名義変更承諾料の支払い
土地賃貸借契約の引継ぎ
……などです。
 

 賃貸

自宅と借地とは異なり、第三者(賃借人)が利用していますから、その情報も整理して引渡す必要があります。
 
賃貸契約書や入居者データ等の引継ぎ、物件管理上のデータの引継ぎ、賃貸状況の一覧表の作成と引渡し等が必要です。
 
もっと詳しく知りたい方はこちらの記事がおすすめ▽
家族信託された不動産の売買方法とは?不動産を信託した場合のメリットとデメリットも解説
 
 

 信託の報告

不動産の管理や売買だけでなく、子は受託者として信託状況などをまとめたり、委託者(親)へ報告する義務があります。
 

1.1月から12月分の収支を翌1月中に信託計算書を最寄り税務署へ提出すること
2.委託者等から信託に関する報告を求められたときに収支等の報告をおこなうこと
3.信託終了時の精算、手続きをおこなうこと

 
上記の3点は忘れずにおこないましょう。
もしご自身で行うことが大変なときは、1は税理士、2・3は司法書士や家族信託に詳しい専門家に有料でサポートをしてもらうことができます。
 
 

 家族信託契約後に親にやってもらいたい3つのポイント

ポイント
 
子に託したあとも、親が元気でいるうちはできることがあります。
 
託したのだから子の管理等に口出ししないのももちろんOKですが、親として心配なことが起きたときの対処法などを理解しておくことも重要です。
 
たとえば、「子が仕事で忙しく、うまく管理ができていない。」「明らかに不動産の管理状況や収益性が低くなった。」というときです。
 
これから3つの項目に分けてお伝えします。
 
 

 管理運営サポート

親がこれまで経験してきたことを子に伝えることです。
 
管理会社との付き合い方や、原状回復リフォームは相見積もりを取ることなど、管理運営についてサポートしてあげましょう。
 
分からないことばかりで不安な子も、教えてもらうことでラクになります。
 
 

 財産の追加信託

家族信託はあとから現預金を追加することができます。これを一般的に追加信託と呼んでいます。
 
家族信託した時は予定していなかった修繕工事等が発生したため、お金が必要になることがあります。このときに、現預金を追加信託してあげられます。
 
また、不動産も追加信託することができます。
 
 

 信託の運用判断

家族信託して子に託したけど、子の受託者としての能力や素質に問題等があれば、親は次のようなことができます。
 

1.受託者を変更する
2.受託者の行動に監視役を付け、子が独断でできないようにする(監督人といいます)
3.家族信託をやめる

 
信じて託したけど、財産管理するのは実際にやってみると大変なことばかりです。
あとから手助けや止めることができるように、家族信託の契約内容で上記の3点ができるよう、しっかり決めておく必要がありますね。
 
これまでお伝えしたように、家族信託契約を締結したとしても、お願いしない限りだれかが勝手に名義変更をしてくれるわけではありませんし、子がすぐに管理等をうまくできることは少ないでしょう。
 
不動産を家族信託することで、親の認知症対策は叶えられていますが、“信託後にやること”までしっかりと考え準備することが大切ですね。
 
プロサーチ株式会社では、不動産の家族信託に関することや、信託後の手続き、管理等についての無料診断が可能です。
 
家族信託したあとについて、どのようにしたほうがいいのかなど、気になる方はぜひこちらから無料診断をお試しください。
 

 

 

 まとめ

 

・不動産を家族信託したあと、子(受託者)は、名義変更や管理、信託計算書の作成など、おこなうことが多岐にわたる
 
・親が元気なうちにできることは、追加信託や子(受託者)のサポート、家族信託を継続するかどうかを判断すること

 
不動産の家族信託は、信託組成後からがいよいよ本番です。大切な財産を家族でしっかりと守っていけるように手続きや管理などしっかりと進めていきたいですね。
 
家族信託をした後のことは、不動産と家族信託に精通した専門家にご相談することが大切です。
 
 
 

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もし本人(親)が認知症になってしまったら、現預金の引き出しや、実家を売却するなどの行為が自由にできなくなるのはご存知でしたか?
 
例えば、親の預金口座での生活費の管理ができない、老人ホームへの入所金を確保するため 不動産を売却しようと思ってもできないなど、計画していた今後の生活に支障がでてしまうのです。
 
しかし、認知症になっても計画したとおり安心して財産管理ができ、そして子どもに資金面や財産管理などでの負担を軽くできる対策があります。
 
それが、「家族信託」です。
 
家族で財産を管理する「家族信託」という対策方法をこの機会にぜひ知ってほしいと思います。
 

< お伝えする内容 >
・家族信託とは何か?制度と仕組みを丁寧に解説!
・後見制度との違い ~メリットや留意点~
・実家や空き家、アパートなどの実例から家族信託を知る
・家族信託で財産管理に成功する家族/失敗する家族 ・・・など
 
< ぜひ聞いていただきたい方 >
・本人(親)が70歳以上で、体調面に不安がある方
・自分や家族のために財産管理をしっかり行っていきたい方
・財産管理をそろそろ子どもに任せたい(任せて欲しい)と思っている方
・相続対策を安心して確実に進めたい方
 

 
 

この記事の監修
プロサーチ株式会社 代表取締役 松尾 企晴(まつお きはる)

20歳のとき母方の祖父母を火事で亡くし、祖父祖母の相続では兄妹間の争族に発展。『またいつか』ではなく『すぐにでも』行動しなければならないことや、どれだけ仲の良い兄妹でも揉めることを痛感。会社の事業理念に『家族の物語をつむぐ』を掲げ、不動産等のモノだけではなく、親や子に対する想いや思い出などのコトも含め、家族が織りなしてきた物語(モノやコト)を親から子へと継承していくことこそが【真の相続】と考え、不動産相続のプロとして、お客様の気持ちを聴き、寄り添う姿に多くの顧客から評価を得ている。
現在は全国から寄せられる相続に関する相談の解決に尽力しながら、家族信託の提案や、相続問題解決のヒントをメルマガ・セミナーなどで情報を発信している。

 

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