なぜ、あの家は円滑な相続対策ができたのか?親子で取り組む相続対策の秘訣

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なぜ、あの家は円滑な相続対策ができたのか?親子で取り組む相続対策の秘訣写真

2020.9.1

 
 

弊社は相続関連セミナーをおよそ年100回、相続や不動産の相談を年300件ほどいただいております。
 

ご参加者やご相談者の8割はお父様・お母様のみ。
お子様とお越しになることは殆どありません。
 

個別相談を受けるとき、お子さんと一緒ではない理由を尋ねると、「自分のことだから」「まずは自分が相続のことについて勉強したい」などと回答されます。確かにご自身の財産のことですからそのお考えも分かります。
 

しかし、弊社のこれまでの経験上、親御様だけで相続対策が進んだケースは殆どありません。
 
今回は、親だけではなかなか進まなかった相続対策が、子どもを交えて話をすることで家族全員の想いを尊重しながら対策を進められた事例をご紹介します。
 
 

今回のポイントは以下の通りです。

・相続対策は親だけでは進まない。
・相続対策を始める前に「相続税評価や時価、財産が抱える問題、そしてご家族が相続や財産のことについてどう思っているか」を把握することが必要。
・自分で子に伝えられない場合は専門家に頼ることも検討する。

 

親だけで相続対策が進むケースは少ない

親は「相続対策は自分だけですること」と捉え、相続の法律や税金のこと、節税などの相続対策の手段について、自分で調べたり聞いたりして組み立てていこうとします。
 
しかし、そのように進めているといつしか、
『子どもに財産や相続対策のことを、いつ、どのように伝えればよいのか』
『子どもが遺してほしい財産はなんだろうか、揉めないような遺し方ができるだろうか』
と、「子どものこと」を考えるようになります。
 
たくさん勉強しても、いざ財産などのことを伝えようとするとき、話すタイミングや子への伝え方に悩み、そのまま何もせず、または上手く伝えられずに立ち止まってしまう方をたくさん見てきました。
 
それでは、子どもと話すことで相続対策が進んだ具体的な事例をお話しします。
 
 

【お名前】父Aさん
【来社のきっかけ】弊社とお付き合いのある税理士からのご紹介
【お悩み】相続対策を考えたいがどのようにすればよいか
【家族構成】
Aさん(父 83歳)、Bさん(息子 51歳)、Bさんの奥さん(48歳)、Bさん夫婦の子2人
農業を親子で営み、Bさんの奥さんが家計を切り盛りする、代々続く専業農家
【保有資産】
自宅300坪、自宅前に畑(生産緑地)1,500坪、違う場所に畑を300坪所有

 

 
父Aさん 「相続税の納税手段が知りたい。子どもや孫の今後を考えると農業以外の安定した収入を残してあげたい」
 

松尾 「お子さんにはお話しされているのですか?」
 
父Aさん「そろそろちゃんと子どもと話したいと思っています。しかし財産や相続の話なんてしたことないし、何からどのように話せばいいかわからない・・・」
 
家族と日ごろ顔を合わせていても、なかなか切り出せずに今日まできてしまったようでした。
 
 

相続対策を始める前に財産と気持ちの把握が必要

 父Aさんは、自分の財産がどこにどれだけあるかについては知っており、節税対策もいろいろなところから提案受けてきたとのこと。
 
しかし、相続対策を進める前に把握すべきことができていませんでした。
 
それは、相続税評価や時価、財産が抱える問題、そしてご家族が相続や財産のことについてどう思っているか、ということです。
 
1)相続税評価額と想定時価(遺産分割や納税に充てる財産の検討時などに活用)
2)財産の問題点とその解決方法(より良い財産として引継ぎさせるためにも必要)
3)本人や子供など家族の想い(財産の色分け、重視する対策等を明確化するため)
 

松尾「財産の状況がどのようになっているのか、ご家族はどう思っているのかの把握を私たちが間に入って行い、それらをレポートにまとめます。
そのレポートをもとに息子さん夫婦とお話ししてみてはいかがでしょうか」
 

レポートのサンプルをお見せしながらご説明すると、Aさんにご快諾いただけました。
 

 
また、このようなご依頼もいただきました。
 
父Aさん「財産の細かいところは分からないし、話しているうちに感情的になったりして、息子にちゃんと伝えられるか不安があります。できれば同席してプロサーチから説明してほしい」
 
もちろん承り、そして、ご依頼から1か月半後、財産とAさんのお気持ちの整理を終えたところで、息子Bさん夫婦同席のもとレポートの報告を行いました。
 

父から子へ託された資産と想い

今回の報告会で息子Bさんに必ず確認しなければならないことがありました。
それは、農業を続けるかどうかです。
続けると続けないのでは、畑をどうするのかなど、その後の相続対策が大きく変わるためです。
 
私から、まずは財産のことについてこのようなことを説明しました。
 
・評価や時価
・概算相続税額(税理士試算)
・不動産などの財産の現状分析、問題点と解決方法 など
 
父Aさん「松尾さんありがとう。我が家の現状が理解できたよ」
 
    「なぁB、話を聞いてどう思った?」
 
息子Bさんは少し間をおいて答えました。
 
息子Bさん「初めて聞くこともあったけど、うちのことはだいたいわかったよ。畑のまま残して農業するかどうかで大きく未来が変わるのも理解できた。それで父さんはどうしてほしい?」
 
父Aさん「このレポートにも書いてあるように、農業以外の選択肢もあるのではないかと思っている。だから、農業を続けるかどうか、お前に任せることに決めたんだ。」
 
父Aさんは少し強い口調で言い、周りは静まり返りました。
 
息子Bさん「父さん、そういわれても困るよ。代々続いてきたんでしょ?こうして欲しいとか、正直な気持ち聴かせてよ」
 
父Aさん「お前に決めてほしい。それが正直な気持ちだよ」
 
そう伝え、それ以上何も言わせない雰囲気でした。
 
 
私は、Aさん・Bさん夫婦から別々に想いを聴くことにしました。
 
この個別ヒアリングは、想いの現状を把握することにおいてとても大切なことなのです。家族だから話せない、話しにくい話をちゃんと聴くことで、ご家族の皆さんが笑顔で進められる相続対策を練り上げることができるからです。
 
 

子が自分で考えて決めた事業承継


後日、個別で父Aさんと面談した際、どうして息子Bさんに任せようとしたのかをAさんに改めて聞きました。
 
父Aさん「松尾さん、私は息子が農家を続けようが続けまいが、それはどちらでもいいのです。松尾さんも言っていたけど、相続って子が受けるものだし、子どもが幸せになるのが一番だから。少し無責任かもしれないが、息子の決断を尊重したいと思っているよ」
 
そして、今度は息子Bさんからお話をききました。
 
息子Bさん「正直、親父から農業のこととか、今後のことを任せられるとは思っていなかったんですよ。今まで、どこか他人事だった相続や農業のことを自分事として家族も交えて考えました。私は、やはり父親と一緒に続けてきた農業を引き継ぐことに決めました。」
 
息子Bさんは晴れやかな顔でお話ししてくださいました。
 
 

個別ヒアリングから3週間後、AさんとBさんの想いを織り込んだ相続対策レポートを作成し、いざ報告会へ。
 


 

父Aさんは、息子Bさんがどのように考えてきたのか落ち着かない様子でした。
私は対策レポートを話す前に、息子Bさんから農家を続けるかどうかの考えをAさんにお伝えするよう促しました。
 
息子Bさん「親父、死ぬほど考えたよ。本当に。
 
父さんや亡くなった母さんへは感謝しかない。相続は財産をもらうだけじゃなくて、想いや生き方、歴史も引き継ぐことでもあるのだなと思った。
 
俺、農業を続けるよ。」
 
父Aさんは下を向いたままうんうんとうなずいています。
 
父Aさん「お前の考えを尊重する。大変だったと思うけど、ありがとう。」
 
そう言い少し涙ぐんでいました。
 
そして農業を続けていくことを前提とした、「農業を安心して営んでいくための相続対策」を進めていくことになりました。
 
その後、息子Bさんが「父からの農業指導が一層厳しくなった」と笑顔で嘆いていらしたのが、どこか微笑ましく、少しでもお役に立てたのではと嬉しくなりました。
 
 

まとめ

・相続対策は親だけでは進まない。
・相続対策を始める前に「相続税評価や時価、財産が抱える問題、そしてご家族が相続や財産のことについてどう思っているか」を把握することが必要。
・自分で子に伝えられない場合は専門家に頼ることも検討する。

 

冒頭にお伝えしたとおり、当初のご相談者は親だけがほとんどです。
親は子どもや相続のことが心配、だけど何を話していいかわからない。
そして子どもも親になかなか相続のことをうまく切り出せない。
 
このようなご家族が沢山いらっしゃいます。
相続対策を進めるには日ごろからの『家族とのコミュニケーション』もとても大切ですが、「財産のこと」や、「親の想い」をちゃんと伝えるためのこの【現状把握】は、一番最初に行う相続対策と言っても過言ではありません。
 
今回の事例のAさんのような『子どもが財産をもらって困らないように。そして、笑顔でいてもらいたい』という想いを実現するために、相続や不動産に精通した専門家にご相談するようにしてくださいね。
  

この記事の監修
プロサーチ株式会社 代表取締役 松尾 企晴(まつお きはる)

20歳のとき母方の祖父母を火事で亡くし、祖父祖母の相続では兄妹間の争族に発展。『またいつか』ではなく『すぐにでも』行動しなければならないことや、どれだけ仲の良い兄妹でも揉めることを痛感。会社の事業理念に『家族の物語をつむぐ』を掲げ、不動産等のモノだけではなく、親や子に対する想いや思い出などのコトも含め、家族が織りなしてきた物語(モノやコト)を親から子へと継承していくことこそが【真の相続】と考え、不動産相続のプロとして、お客様の気持ちを聴き、寄り添う姿に多くの顧客から評価を得ている。
現在は全国から寄せられる相続に関する相談の解決に尽力しながら、家族信託の提案や、相続問題解決のヒントをメルマガ・セミナーなどで情報を発信している。

 

 

 

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