借地権とは?地代の相場や借地を売ったり賃貸するときの進め方や注意点を解説

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2022.2.1

 

「親が地主から借りていた土地を相続したけれど、この先どうすればいいんだろう。」
「借地を売却しや賃貸するとき、どんな手続きが必要で、まず何をすればいいかわからない。」
 
このような悩みや不安はありませんか?
 
借地権を売却するときや建て替えするとき、地主さんにどう伝えるべきなのか、どのような手続きが必要となるのか、なにか費用がかかることはあるのか、気を付けることはあるのか、などよく分からないことが多いですよね。
 
もし借地権を地主さんの承諾を得ずに売却すると、土地賃貸借契約を解除されてしまうリスクがあるなど、借地権のことを知らないとトラブルに発展したりすることがあります。
 
本記事では、借地権を売却するときや借地上の建物を賃貸したり建て替えたりするときの手続きや注意点などを詳しく解説していきます。
 
 
今回のポイントは以下のとおりです。
 

・借地権には旧法と新法があり、土地を借りたときの賃貸借契約の時期がいつなのかによって、適用される法律が変わる。
 
・借地権の売却では、地主さんに事前に売却の承諾を得て、譲渡承諾料を支払うことが必要。 その他に地主さんに支払う承諾料には、建て替え、建物の構造変更など条件変更などがあり、もし承諾を得ずに無断で売却等をしてしまうと、土地賃貸借契約の解除をされる可能性がある。
 
・契約時の更新料は、法的な縛りはないが慣例として認められており、更新料は借地権価格×更新料率で計算する。この借地権価格には、『取引事例の価格』と『公的指標の公示地価等』のいずれかで求めるため、地主さんと借地人さんとで意見が分かれ更新料の金額を巡って揉めることがある。
 
・底地と借地権の同時売却、等価交換、底地の購入は、地主さんの相続などのきっかけの場合が多く、滅多に訪れない機会である。このような相談を受けたときは、借地権の価格を求める、購入などをするメリットや留意点を押さえて取り組む必要がある。

 
 

 借地権とは

土地と家
 
地主さんから借りている土地を借地といい、地代等を支払ってその土地を使う権利を得ているわけですが、その権利のことを借地権と呼びます。
 
この借地権とは、『建物を所有する目的とする地上権又は土地の賃借権』を言いますが、覚えていただきたいのは、借りている土地に建物がある時の権利だということです。
 
もし土地を借りても、資材置き場や駐車場として利用していると、原則それは借地権ではないということですね。
 

 借地権には旧法借地権と普通借地権等がある

借地権には、旧法借地権と借地借家法の普通借地権と定期借地権があります。
その違いをこれからお伝えしますが、実家の借地権は旧法借地権か普通借地権のどちらかであることが大半ですので、定期借地権はちょっと触れる程度にします。
 
まず押さえていただきたい点は、土地を借りたときの賃貸借契約の時期がいつなのかによって、適用される法律が変わることです。
 

・旧法借地権:大正10年に制定、平成4年8月に改正されるまでの借地権(旧借地法)
・普通借地権:平成4年8月以降の借地権(借地借家法)

 
本記事では、旧借地法を旧法、借地借家法を新法と、分かりやすく呼ぶことにします。
 
たとえば、平成元年に土地を借りたとします。
現在は令和4年ですが、この借地権について適用されるのは旧法です。
 
平成4年8月以降、地代を支払い続けていたとしても自動的に新法の適用とはなりません。地主と合意したうえで土地賃貸借契約(旧法)を解除等して新しく契約を締結するなどで新法が適用されることになります。
 
いきなり難しい話になってしまいましたが、親が土地を借りた年月日を確認して、どちらの法律が関係するのかチェックしてみてください。
 
借地権の歴史や旧法と新法の違いの概要を知りたい方は、「借地権とは?借地を相続・贈与したときの手続きや税金を詳しく解説」をご覧ください。
 

 土地を借りるときの地代と更新料の目安

地主さんから土地を借りて家を建てるとき、タダで土地を使わせてもらう、というわけにはいきませんよね。
 
アパートの部屋を借りるときと同じく、土地を借りたら賃料を支払います。この時の賃料のことを地代といったり、土地賃借料といったりします。この記事では地代とします。
 
そして、土地を借りるときは土地賃貸借契約を地主さんと結ぶのですが、契約ですから当然、いつからいつまでという契約期間というものがあります。
 
その契約の期間が満了日を迎えたとき、まだ住み続けたい場合は地主さんと話し合って契約更新をすることになります。このとき、契約書に更新料支払いの定めがあったり、地主さんと更新料の支払いについて合意している場合は、地主さんに更新料を支払って、契約を更新することになります。
 

地代の相場

地主さんに支払う地代は、どのくらいが相場なのでしょうか。
 
地代を求めるときの計算式は何パターンかあるのですが、自分が住むことを目的に土地を借りるのであれば、最もポピュラーな計算式を押さえておきましょう。
 
計算には、固定資産税額都市計画税額(以下、総称して「固都税額」といいます。)が必要です。
 

一般的な住宅地の場合の地代:年間の固都税額 × 3~5

 
たとえば、年間の固都税額が10万円の土地で、倍率が3倍と5倍とした場合の月額地代を求めてみます。
 
10万円×3倍=30万円(年間)、月額地代は30万円÷12ヵ月=2.5万円
10万円×5倍=50万円(年間)、月額地代は50万円÷12ヵ月=約4.2万円
 
このように算出します。
 
地代計算の基準となる固都税額は、地主さんやその土地を管理する不動産会社等に聞いてみましょう。
 

更新料の相場

更新料については法律上の決まりはなく、画一的なものはありません。
 
一般的な住宅地の借地権で、これまで私が現場でみてきた更新料の相場感は、木造系か鉄骨系で異なります
 

木造系の非堅固建物:借地権価格×3%~5%
鉄骨系の堅固の建物:借地権価格×10%~15%

 
建物の寿命が長ければ長くなるほど、土地を貸している期間も長くなることや、建て替えするときの承諾料(後述します)が貰える機会も長くなってしまうなどのことから、乗じる数値を上げているようです。
 
 
また、地主さんによって、借地権価格の求め方や乗じる数値が変わるということに注意が必要です。
 
この借地権価格を求める方法は大きく2つあります。
 
・所有権での売買査定価格(以下「更地価格」といいます)× 借地権割合
・路線価から求める概算の公示地価 × 借地権割合
 ※相続税評価額ではありません。
 
概算の公示地価を使うときは、路線価から計算するため地主さんや借地人さんのどちらが計算しても同じ価格になるでしょう。
 
一方、更地価格が両者とも同じ価格になることは少ないです。
 
更地価格は、近隣の取引事例を基に計算します。
そのため、更地価格の査定額が、高ければ更新料は高くなりますし、安ければ更新料は安くなります。
 
地主さんにとってみたら、査定額は高い方が良い。
借地人さんにとってみたら、査定額は低い方が良い。
 
ということになりますね。
 
更地価格をいくらとするかで地主さんと借地人さんとで交渉することになりますが、ちょっと大変そうですよね。
 
ご自身で価格を求めることもできますが、更地価格の査定は借地権に詳しい不動産会社にお願いしたほうがよいでしょう。
 
なお、私のこれまでの経験では、概算の公示地価を基準とするほうが多いです。
 
更新料がいくらになるのかを地主さんやその不動産を管理する不動産会社に更新料を確認する場合には、その金額の根拠も確認するようにしましょう。
 
 

 借地権の相続や贈与のときの価格・売買するときの価格

計算
 
地代や更新料を求めるときの借地権価格について説明しました。
 
次に、借地権を相続や贈与するときと、売却するときの借地権価格の求め方についてお伝えします。
 
相続や贈与するときは『相続税評価額』を、売買するときは『売却査定価格』を使います。
 
ここからは、相続や贈与は「相続等」と総称することにします。
 

 借地権の相続税評価額

借りている土地を自由に使えますが、あくまでも土地の所有者は地主さんですよね。
 
借地の評価方法は、『借地権割合』という借地人さんが経済的利益を得ている割合を、自用地(更地)の評価額に乗じて求めることになっています 。
 

借地権の相続税評価額 = 自用地の相続税評価額 × 借地権割合

 

自用地の相続税評価額は、土地面積 × 路線価 で求めます。
借地権割合は、路線価図の上部にある『借地権割合』を使います。

 
ご自身の借地の路線価を調べたい、相続税や贈与税の求め方、借地権を相続か贈与どちらでもらったほうがお得か知りたい方は、「借地権とは?借地を相続・贈与したときの手続きや税金を詳しく解説」をご覧ください。
 
 

 売買するときの借地権の価格の求め方

借地権を売却するときの価格は、2ステップで求めます。
 

ステップ1:所有権としての価格を求める

まずは借地権ではなく、所有権としての価格を求めます。
 
所有の借地の特徴と似ている周辺の取引事例(所有権)を、できれば5つほど不動産売買情報が載っているポータルサイトから集めます。
 
続いて、集めた事例の㎡単価を、売買価格÷土地面積(㎡)で求めます。
そして集めた事例の㎡単価の平均値を出し、所有の借地面積を掛けて所有権価格を計算します。
 

平均値/㎡ × 借地面積(㎡)=所有権価格

 
本来であれば、借地権売買の事例を使いたいところなのですが、事例がほとんどありません。
そのため所有権価格から計算します。
 

ステップ2:所有権価格に掛け目を乗じる

ステップ1で求めた所有権価格に、相続税評価額を計算するときの借地権割合のように掛け目を乗じます。
 
「借地権割合」を目安として使うこともありますが、実際の掛け目は、対象エリアでの借地権と所有権の価格差、借地権の取引が多いエリア、目的が自己利用か商業利用なのかなどによって変わります。
 
 
具体的な数字でみていきましょう。
 
前提条件
・借地面積 100㎡
・路線価図上の借地権割合 60% 
・周辺の土地も借地権のようであるが
 ポータルサイトをみても取引情報がない
(借地権が周辺にある状況≒借地権取引があるとみなします)
 
まず、所有権価格を求めます。
 
周辺で土地形状や駅距離などが似ている取引情報
1. 価格3,000万円 土地面積100㎡ 1㎡当りの単価 30万円
2. 価格3,150万円 土地価格100㎡ 1㎡当りの単価 32万円
3. 価格3,250万円 土地価格120㎡ 1㎡当りの単価 27万円
4. 価格3,400万円 土地面積130㎡ 1㎡当りの単価 26万円
5. 価格3,450万円 土地面積120㎡ 1㎡当りの単価 29万円
                    平均単価 29万円
 

5つの取引情報を1㎡当りの単価まで計算し、その平均単価を割り出します。
 
所有権価格は、借地面積100㎡×29万円=2,900万円と計算します。
 
次に、所有権価格を基に借地権価格を求めます。
 
借地権価格を求めるときに乗じる割合について、以下を参考にしてください。
 
周辺に借地権が点在する地域:路線価図上の借地権割合(60%)+5%=65%
周辺に借地権がほぼない地域:路線価図上の借地権割合(60%)-5%=55%
 
この事例は借地権が多い地域ですから+5%の65%ですね。
 
2,900万円×65%=1,890万円
 
借地権価格を1,890万円と査定しました。
借地権の価格が知りたい方は、このように計算してみてください。
 
ただ、ちょっと難しいですよね。
 
おおよその価格を把握するには借地権割合を使って求めて、実際に売却するときは、借地権取引が豊富な不動産会社に価格査定してもらったほうが良いでしょう。
 

 借地権を売却・賃貸・建て替えするときの手続きと留意点

 
借地権を売却したり、自宅として使っていた家を賃貸するとき、建て替えなどするときは、事前に地主さんの承諾を得るなど必要な手続きがあります。
 
この手続きを踏まないと、土地賃貸借契約の解除となる可能性もあるのでしっかり把握しておきましょう。
 

 売却等するときは承諾を得て承諾料を支払う

売却などをするときは、事前に地主さんの承諾を得て、承諾料を支払います。
この『承諾を得る』『承諾料を支払う』の2点を覚えておきましょう。
 
売却等の際の地主さんへの承諾料の相場は以下の通りです。

売却(名義変更料):借地権価格 × 10%前後
相続(名義変更料): なし
建替え(建替え承諾料): 更地価格 × 3%前後
賃貸等条件変更(条件変更承諾料): 更地価格 × 10%前後

 
更新料のときと同じく、借地権価格や更地価格が幾らなのか確認しましょう。
 

 売買するときの進め方と留意点

借地権を売却するときの進め方を解説します。
 

 進め方

借地権を売却するときは、以下の段取りで進めていきましょう。
 

1.  借地権の売買価格を算出する
2.  地主さんに借地権売却の相談をして承諾を得る
3-1. 地主さんが借地権を購入する → 承諾料の支払いは不要
3-2. 地主さんは購入しない → 売却の承諾と承諾料を確認する
4.  売却活動開始
5.  買主と売買契約を締結し、地主さんへ契約と決済予定日を報告する
6.  決済日までに地主さんへ承諾料を支払い、譲渡承諾書等を受領す。
7.  買主と決済する

 
※譲渡承諾書とは、売却の承諾を取り付けたときの合意書面のことをいいます。
 
このような流れで進めていくことがほとんどです。
 

地主さんに相談する前に借地権の売買価格は把握しておく

せっかちな地主さんだとその場で買い取る価格を提示してくることもあります。そのときに価格を把握しておいた方が冷静に対処できますよね。
 

新たな借地人と地主さんとの土地賃貸借契約の条件を確認する

借地権の売却活動をする前に、地代や更新料などが新たな借地人さんでも同条件なのか、それとも条件が変わるのかを必ず確認しましょう。
 
借地権の売却活動では、売買価格の他に地代などの条件を募集図面などに掲載し、それをみて探している方が購入検討されます。
 
ですので、現在と同条件で売買契約をまとめて購入後に地代増額するなどの話が出てしまうと、買主さんから『購入条件と違う』と言われ、売主と買主とで大きなトラブルに発展してしまうこともあります。

 

譲渡承諾料の他に建替えや条件変更時の承諾料について確認する

買主が建て替えを考えていたり、築年数が延びるような大規模なリフォームや、木造ではなく鉄骨造にする、賃貸併用住宅を考えている(自宅と賃貸部分がある家)、契約期間を新たに設定し直すなどのとき、各承諾料がいくらになるのかを「2、地主さんに借地権売却の相談をして、承諾を得る」タイミングで確認しておきましょう
 
建て替え等を条件に購入する方もいます。
 
もし地主さんの承諾条件を伝えていないと、買主さんは承諾料などを予算に含めずに購入の検討をしてしまいます。
 
そして、購入後に建て替えには承諾料が必要などの話が出てしまうと買主さんから『聞いていない、払うつもりはない』と言われ、大きなトラブルに発展してしまうこともあります。
 

買主がローンを組む場合は融資承諾書も必要

譲渡承諾書はあくまでも売却の承諾のみです。ローンを組むときに金融機関は地主さんから融資承諾書(実印、印鑑証明とするケースが多い)を貰うように依頼することがほとんどです。この場合の手数料も確認しておくといいでしょう。
 
 
このように色々と事前に準備したり、確認しておくことがありますね。
進め方などを間違えると、地主さんとの関係が悪くなり承諾を得られなくなる、買主とトラブルに発展する等が起こり得ますので注意しましょう。
 
参考までに、譲渡承諾書のひな型です。
 
譲渡承諾書
 

 賃貸するときの進め方と留意点

自宅として使っていた家を貸したいとき、勝手に貸したらNGです。これも地主さんから事前に承諾を得ることが必要です。
 
なぜ自宅を貸すのに承諾が必要なの?と思いますよね。
 

たとえば、地主さんも借地人さんも土地賃貸借の契約を終わりにしたいと思っていても、建物に住んでいる人が退去しない限り、土地の契約も終了させることができなくなりますよね。
 
このような事にもなり兼ねないので、必ず事前に承諾を得て、条件変更承諾料を支払いましょう。
 

進め方

1. どのように貸すか決める(定期借家として貸すのかどうかなど)
2. 地主さんに相談して、承諾を得る
3. 地主さんに承諾料を支払う
4. 賃貸経営の開始

 

地代など基本条件が変更されるのか確認する

土地を借りる目的が自宅用から賃貸事業用にかわるので、地代が高くなる場合もあります。
 

建物のリフォーム内容を伝える

リフォーム等を考えている場合は、大規模なリフォーム工事をして建物寿命が延びると判断されると、建て替え承諾料が必要になるかもしれません。「2. 地主さんに相談して、承諾を得る」のタイミングで確認しましょう。
 

 建て替えするときの進め方と留意点

建て替えは当然ながら新築建物になりますから、土地賃貸借の契約期間が延びる、更新されるのは予測できますよね。建て替えする内容を地主さんに伝えて承諾を得ましょう。
 

進め方

1.  新築する建物の構造、規模、工事期間、融資を受けるのかどうかを計画する
2.  地主さんに相談し、承諾を得る
3-1. 融資を受ける場合、建て替え承諾料の支払いと融資承諾書を同時に取得する
3-2. 融資を受けない場合、建て替え承諾料を支払う
4.  建築開始

 

建て替え前後の建物の構造が異なると条件変更となる

建て替えで、木造(非堅固)から鉄骨造(堅固)にすると、条件変更に該当し条件変更承諾料も必要になることがあります。とくに旧法借地権では契約期間が延びるので地主さんに影響があります。
 

賃貸併用住宅、2世帯住宅とするときも条件変更に該当する可能性がある

先ほどの賃貸するときと同じ理由で、借地人さん以外にも建物を使う人が追加されますので、条件変更に該当するかもしれません。承諾料が必要なのか確認しましょう。
 

 地主さんから承諾を得られなかった場合

 
売却等の承諾を得られることを前提にお話ししてきましたが、地主さんから承諾が得られない場合もあります。
 
たとえば
・売却の相談をしたとき、地主さんの買い取り希望額が安くて断った
・過去に更新料の支払いや金額のことで揉めたことがある
・地主さんから立ち退きを求められて断ったことがある
・地主さんとの話し合いが平行線でまとまらない
などで、地主さんとの関係が良くないとき、地主さんが借地権を取り戻して何かしたいことがあるときに断られることが考えられます。
 
地主さんから承諾が得られないからと、承諾を得ずに売却などをすると、土地賃貸借契約の解除を求められる可能性があり、土地を明け渡さないといけなくなるかもしれません。
 
そうなると困りますよね。
 
このように地主さんから承諾が得られないとき、借地人さんの救済措置があります。
 
借地非訟という方法です。
 
借地非訟とは何かを簡潔にいうと、地主さんに代わって裁判所が承諾し、承諾料を決めるというものです。
 
もしこの制度を利用するとき、借地人さんは土地の所在地を管轄する地方裁判所又は、双方合意があれば簡易裁判所に、借地非訟の申立てをすることになります。
 
取り下げの他、話し合いの結果として、和解で終わるか、調停か、最期には裁判所の決定(決定書という承諾条件が付されたものを交付される)のいずれかとなります。
 
もしもの場合のセーフティーネットとして使うことができますが、ご自身で行わない場合は弁護士に依頼することになり弁護士さんへの報酬が発生します。
 
また、申し立てから決定まで1年くらいかかることもあるようです。
 
いつまでに売りたい!など売却等に期限があるようでしたら、借地非訟の手続きも視野に入れ、地主さんとの話し合いは時間的な余裕をもって進めていきましょう。
 
 

 地主さんと直接取引をする方法


 
地主さんから借りている土地を借地権といい、地主さんが所有している土地を底地といいます。
 
借地権と底地で、よくある3つの取引「同時売却」「等価交換」「底地購入」についてお伝えします。地主さんが土地を手放すことは少ないのですが、たとえば地主さんに相続が起きたタイミングだと底地を売却する可能性があります。
 
借地人さんとして、地主さんから底地売却や等価交換などの相談をされたときなど、いざという時のために知っておくといいと思います。
 

 同時売却する

地主さんの底地と、借地人さんの借地権を同時に売却するときのメリットと留意点をお伝えします。
 
底地と借地権を同時にですから、買主からみたら『底地+借地権=所有権』となります。当然ながら、『所有権価格』で売ることができます。
 
ここで問題になるのが、どうやって売買価格を地主さんと借地人さんとで配分するかです。
 
よく勘違いされるのですが、借地権割合(路線価図に記載のもの)ではありません。
あくまでも借地権割合とは相続評価額を求めるときに使うものだからです。
 

配分を決めるときは第三者を入れるとスムーズに進むことがある

この配分には法律的な定めがなく、あくまでも話し合いで決めることになります。
 
地主さんからしてみたら所有者は自分であるから配分は多くもらいたい、
借地人さんにとっては借地権割合でも決められているし自由に土地を使えるのも借地権
なのだから配分は多くもらいたい。
 
このように意見が割れることがあります。
 
配分について直接の話し合いを続けるよりも、不動産会社等の借地底地の専門家を第三者として間に入れたほうがいいかもしれません。
 

同時売却のチャンスは逃してはならない

借地権を売却するとき、地主さんも売却する意思があるようでしたら一緒に売却したほうが間違いなく高く売れますので、『配分で揉めて売却自体を取りやめる』といったことが起こらないよう留意して進めていきましょう。
 

 等価交換する

借地権と底地を交換して、所有権の土地を持ち合うことをいいます。
 

 

このように借地権と底地権を交換する方法を等価交換といいます。
 
お互いに所有権として所有できるようになるので、地主さんの承諾なく売却や建て替えができるようになります。地主さんも土地を自由に使うことができますね。
 

借地権と底地の価格を調べてから実行する

借地権と底地の価格を調べ、同等の価値で交換するときの土地面積を計算します。不動産の査定、土地の交換による譲渡税をなしとする特例があるなど不動産の他に税務的な検証も必要です。税理士等の専門家も交えて進めましょう。
   

等価交換後の土地に家を建築できるように計画する

せっかく等価交換して所有権になっても、建築ができない土地では交換した意味が薄れてしまいます。測量図を作製して検証することが必要なので、建築会社や土地家屋調査士も交えて進めましょう。
 

土地を分筆するために土地境界確定をする必要がある

地主さんが所有する土地、借地人さんが所有する土地を分けるため、土地を分筆する必要があります。土地家屋調査士さんに依頼して当該土地に接する土地や道路の所有者と境界立会いを済ませましょう。もし境界で揉めてしまうと土地分筆ができなくなり、等価交換ができなくなります。お隣さんと揉めないように慎重に進めましょう。
 

 地主さんから底地を購入する

地主さんに相続が起きると、その相続人が底地を売却することがあります。
 
数十年に一度あるかどうか滅多にないことですから、もし売却の声がかかったら慎重に判断しましょう。
 

底地を購入することで得られるメリット

・地代や更新料の支払いがなくなる
・譲渡や建て替えなどのときの承諾や承諾料が不要になる
・地主さんを気にせずに土地利用することができる
・所有権として売却することができる

 

ポイント:底地を購入する金額の基準を確認する

たとえば、所有権での相場価格が1億円、借地権の相場価格が5,000万円とします。
このようなときは底地の売買価格が5,000万円以下であれば、安く底地を購入できたことになりますね。
 

注意点:土地所有者としての責任が生じる

契約上の特約がなければ、例えば、崖崩れや地盤沈下など土地に絡む問題があれば土地所有者の責任となります。土地を借りているときはこれらの責任はないのですが、底地を購入し土地所有者になると、これら責任を負うことになります。
 
底地を購入する機会があれば、価格などしっかり検証したうえで判断しましょう。
 
 
プロサーチ株式会社では、借地権や底地に関する無料診断が可能です。
 
借地権等の時価と評価を知りたい、売却や同時売却、等価交換などするときに気を付けることはあるか、そもそも売却したほうが良いのかどうかなど、もっと詳しく知りたい、ちょっと質問したいという方はぜひこちらから無料診断をお試しください。
 

 

 
 

 まとめ

 

・借地権には旧法と新法があり、土地を借りたときの賃貸借契約の時期がいつなのかによって、適用される法律が変わる。
 
・借地権の売却では、地主さんに事前に売却の承諾を得て、譲渡承諾料を支払うことが必要。
その他に地主さんに支払う承諾料には、建て替え、建物の構造変更など条件変更などがあり、もし承諾を得ずに無断で売却等をしてしまうと、土地賃貸借契約の解除をされる可能性がある。
 
・契約時の更新料は、法的な縛りはないが慣例として認められており、更新料は借地権価格×更新料率で計算する。この借地権価格には、『取引事例の価格』と『公的指標の公示地価等』のいずれかで求めるため、地主さんと借地人さんとで意見が分かれ更新料の金額を巡って揉めることがある。
 
・底地と借地権の同時売却、等価交換、底地の購入は、地主さんの相続などのきっかけの場合が多く、滅多に訪れない機会である。このような相談を受けたときは、借地権の価格を求める、購入などをするメリットや留意点を押さえて取り組む必要がある。

 

借地権は、本記事でお伝えしたとおり不動産会社も取り扱いを躊躇するほど難しい権利です。売買などの進め方を間違えてしまうと、地主さんと揉めたり、借地権の価値を下げてしまったり、手放すことが大変になります。
 
借地権のことは、借地権と底地のことに精通した不動産会社に相談することをお勧めします。
 

 

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この記事の監修
プロサーチ株式会社 代表取締役 松尾 企晴(まつお きはる)

20歳のとき母方の祖父母を火事で亡くし、祖父祖母の相続では兄妹間の争族に発展。『またいつか』ではなく『すぐにでも』行動しなければならないことや、どれだけ仲の良い兄妹でも揉めることを痛感。会社の事業理念に『家族の物語をつむぐ』を掲げ、不動産等のモノだけではなく、親や子に対する想いや思い出などのコトも含め、家族が織りなしてきた物語(モノやコト)を親から子へと継承していくことこそが【真の相続】と考え、不動産相続のプロとして、お客様の気持ちを聴き、寄り添う姿に多くの顧客から評価を得ている。
現在は全国から寄せられる相続に関する相談の解決に尽力しながら、家族信託の提案や、相続問題解決のヒントをメルマガ・セミナーなどで情報を発信している。

 

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