相続した不動産を共有名義にすると価値半減?!共有不動産をめぐるトラブル回避策!

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2021.6.1

 
 
「不動産の共有が原因で仲良かった兄弟2人と揉めてしまい、今では会うこともない」
 
「ひ孫の代まで共有者が増え20人以上で連絡取れない人もいるから、不動産は塩漬け状態」
 
このように、不動産を共有している兄弟姉妹間で「売却したい」「住みたい」などで意見が合わず仲が悪くなり、お互い弁護士を入れるような紛争に発展したり、共有者と連絡取れず売却等が困難になるなど、共有トラブルのご相談が後を絶ちません。
 
 
共有に至るきっかけには主に3つのパターンがあります。
 

1.相続  (例)相続人間で遺産分割協議が纏まらないとき
2.贈与  (例)夫の不動産の持分を、妻や子に贈与する
3.購入  (例)夫婦共有名義で購入する

 
つまり、不動産を所有しようとすると、購入時や相続時など、どこかのタイミングで共有状態になる可能性があるということです。
 
本記事は、不動産相続の専門家である私が、共有で起こる不動産問題と予防策について解説します。今後不動産を共有しようか悩んでいる方は共有するかどうか、すでに共有状態の方は、売却や管理をしていくときの判断ができるようになります。
 
 
今回のポイントは以下の通りです。
 

・不動産を共同名義にすると、自分の意志決定のみでは不動産を売却などができず、共有者全員の同意が必要となる。
 
・持分だけ売却しようとすると売却価格は時価の50%まで下がる可能性がある。
 
・共有する場合は、ルールを決めておくことでトラブル予防をしておくことが重要。

 
 

共有でできること、できないこと


 
不動産の共有持ち分を持っている人は、自分の判断でどこまで行えることがあるのか、共有者の同意が必要な行為はどのようなものがあるのか、など悩んでいる方もいらっしゃるでしょう。
 
まずは、「共有持ち分者の単独で行えること」「共有者全員の同意でしか行えないこと」について、代表的なことをお伝えします。
※本記事ではよく相談がある代表的なことに絞って解説しています。
 
 

 共有者が単独で行える3つのことと留意点

不動産の保存や利用行為に関することは、共有者が単独の意思で行うことができます。
 

1)現状維持のための小修繕やリフォーム

トイレが壊れたから直す、建物に穴が開いているから塞ぐといった修繕等は、共有の不動産を維持する目的(保存行為)のため単独実施が認められるでしょう。
 

留意点
修繕費が発生するのであれば事前に共有者に対して費用負担の合意を得ておきましょう。工事後に『私はその費用を支払いたくない』と拒否されてしまうこともあります。

 
 

2)共有者が不動産を使うこと

共有持分が2分の1だとしても、居宅または事務所等としてその不動産のすべてを自分で使うことができます。
 

留意点
不動産を使用するに際して、自分と同じく共有者も使いたいとなると話し合いが必要ですし、賃料も請求されるでしょう。勝手に使って無用なトラブルを招く前に、賃貸条件や使用方法など取り決めておくことが大事です。

 
 

3)持分のみを売却する

不動産全部を売却するには、共有者全員の同意が必要です。しかし、自分の持分のみであれば、共有者や見ず知らずの第三者に対して、自由に売却することができます。
  

留意点
まずは共有者に買い取ってもらえるか打診しましょう。第三者への売却は共有者と比べ、売買価格が安くなる傾向があるからです。
※第三者が購入検討する売買価格については後述します。

 
 
共有者が単独で行えることには制限がありますが、何もできないわけではありません。
法律的に行える/行えないことを確認したうえで、上記の留意点のとおり、共有者への配慮や合意形成をしっかりと取っておくことが重要です。
 
 

 持分が過半数を超えている場合

持分が過半数を超えると、『管理行為』が認めらます。
 
例えば、短期間の賃貸です。
 
不動産を活用して一定期間収入を得たいというとき、土地は5年以内、建物は3年以内の「一時使用目的の賃貸借契約」であれば可能です。
 
※一時使用目的賃貸借契約とは、1年間や2年間の短期間の契約で、退去のとき貸主は正当事由なく(≒いわゆる立ち退き問題なし)契約解除することができます。実行するときは賃貸を扱う不動産会社や弊社までご相談ください。
 
他には、保存行為を超えるような、大規模修繕やリノベーションもすることができます。
 
共有者AとBの2名が2分の1ずつ共有している場合、単独では2分の1のため過半数を超えませんから、短期賃貸や大規模修繕等の管理行為をするには全員の同意が必要です。
 
 

 共有者全員の同意でしか行えない3つのことと留意点

不動産の変更に関わることについては、共有者全員の同意がなければ行うことができません。
 

1)共有不動産の売却

共有者全員が売主となり、第三者等へ売却することができます。
 

留意点
売却価格や依頼する不動産仲介会社等を巡って、兄弟間の希望が合わず売買条件等が決められない、つまり売却活動すらできないという状況に陥ることがあります。
これでは本末転倒ですから、ルールを決めた方が良いでしょう。
 
(例)
売却等価格:不動産会社から『不動産査定額』を集め、一番高い金額とする
不動産会社:共有者全員それぞれが1社ずつ選ぶ  ・・・など

 
 

2)長期間の賃貸

3年間や5年間といった期間等の制限を受けることなく、第三者へ自由に賃貸することができます。
 

留意点
1と同様、賃貸条件や依頼する不動産仲介会社等を巡って賃貸募集を開始できないなどに陥ることがあります。

 
 

3)建物解体

建物を解体したり、建て替えたりすることが可能となります。
 

留意点
解体する前に、建物以外の塀や庭も壊すのかどうかのような解体内容やその費用についての合意をできるだけ書面で取っておいた方が良いでしょう。共有者から私は費用に合意していないなどと言われないよう、工事内容や費用を全員が合意のうえ進めたという証になります。

 
 

持分のみを売却する場合


 
共有持ち分を売却する場合、売買価格はいくらになるでしょうか?
 
(例)
3兄弟が親から時価3,000万円で売れる実家を相続で共有しました。
次男が売りたいと言い、長男と三男は売らずに貸したいと言っていたとします。
 
3兄弟全員が売却すると言えば、時価は3,000万円ですから、それぞれ1,000万円もらえますね。
 
では、次男が他の兄弟に売ったときと、第三者に売った時の価格を比べてみます。
 

次男が他の兄弟へ売却する持分価格イメージ:800万円~1,000万円

・長男と三男は自分たちで賃貸収入を得る目的があるので、時価相当で購入してくれる可能性が高い。
・しかし一方で、長男と三男で共有状態が続くため自由度は低い。自由が制限されるからと、兄弟から価格ディスカウント交渉される可能性もある。

 

第三者へ売却する持分価格イメージ:300万円~500万円(50%超の価値下落!)

第三者が購入する持分価格は自社の利益を上乗せしたうえで購入価格を設定するため、以下のリスクを考慮した低い購入価格となります。
 
・長男や三男が、第三者から持分を時価相当(1,000万円)で買い取ってくれず、何も活用できなくなる。
・第三者が、長男や三男の持分を購入できないと、何も活用できなくなる。
※第三者とは不動産買い取り業者を指します。

 
このように価格が違います。
 
一般的な持分売買の進め方は、次男はまず長男と三男に「持分を買い取ってくれないか」と話を持ち掛けます。売買価格の合意が取れればOKですが、その価格を巡って取引不成立となることもあります。
 
不成立となると、次男は第三者に売ることになり、1,000万円の価値があったのに、500万円~700万円も手取りが減ることとなってしまいます。
 
また、長男と三男も第三者と共有となることで、賃貸条件やリフォーム内容などの合意形成の場面で第三者からいちいち反対されたり、金銭を要求されたりと苦慮したり、売買で持分価格をふっかけられたりすることもあります。
 
誰も得していませんし、相続した親の財産の価値が目減りしていますね。
 
 

共有者間で揉めないためのルールを決める


 
ここまでの整理として、つまり不動産の共有によって生じる問題とは、「不動産の価値が下がること」です。
 
では価値を下げないために共有しなければいい、というのは簡単ですよね。
 
しかし、どうしても遺産分割協議の話し合いがつかず共有になったり、兄弟仲が良いからと特に考えずに進めてしまったりなどの事情もあるでしょう。
 
得をするのは持分を安く買い取って共有者に高く売る不動産会社だけです。不動産会社が笑顔になるのではなく、自分たち家族たちが喜ぶようにしていく方が良いですよね。
 
そのためには共有者間のルールが必要だと考えます。
不動産の種類などによってルール項目が変わるのですが、実家を共有した場合の一例をお伝えします。
 

ルール1 売却などの行動を起こす前に共有者へ連絡する
 
ルール2 持分売買するときは、公示地価を基に算出した売買価格とする
 
ルール3 実家に住む者は、○○賃貸不動産会社の査定額とおり共有者に賃料を支払う
 
ルール4 共有者全員で売却するとき、○○不動産会社に依頼する

(※または「公平を期すためまずは相続税相談した税理士○○様から不動産会社を紹介してもらい、その会社から提案を受けることとする」など)
 
ルール5 このルールは、自分の相続人(配偶者や子など)にも承継させること。

 
 
このようなルールを共有者間で合意しておくことで、いざ売却や賃貸等したいときの判断基準になります。
 
『兄弟仲もいいし、仰々しくルールなんて決めなくても良いだろう』
このように言っていた方々からの共有問題の相談をたくさん受けてきました。
「共有問題化」させないようにルールを決めて書面に残しておきましょう。
 
 

まとめ

 

・不動産を共同名義にすると、自分の意志決定のみでは不動産を売却などができず、共有者全員の同意が必要となる。
 
・持分だけ売却しようとすると売却価格は時価の50%まで下がる可能性がある。
 
・共有する場合は、ルールを決めておくことでトラブル予防をしておくことが重要。

 
不動産共有の問題が顕在化するときは、“所有の意識変化”があります。
 
よくあるきっかけは「相続」です。
父の相続で母と子たちが共有で相続。このときの子の心理状況は、「俺のものじゃないから別に何でもいい。」
そして、母の相続で一変します。親の所有物という意識から、「俺のものだから、売却したい」と自分の所有物だと意識が変わったときです。
 
他にも配偶者が口を出すなど、顕在化する要因は沢山あります。
不動産の共有は問題が根深くなることが多いため、共有に関して不安がある方や、売却を考えているなどの悩みがあるときは、不動産と相続に強い不動産の専門家に相談しましょう。
 
 

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もし本人(親)が認知症になってしまったら、現預金の引き出しや、実家を売却するなどの行為が自由にできなくなるのはご存知でしたか?
 
例えば、親の預金口座での生活費の管理ができない、老人ホームへの入所金を確保するため 不動産を売却しようと思ってもできないなど、計画していた今後の生活に支障がでてしまうのです。
 
しかし、認知症になっても計画したとおり安心して財産管理ができ、そして子どもに資金面や財産管理などでの負担を軽くできる対策があります。
 
それが、「家族信託」です。
 
家族で財産を管理する「家族信託」という対策方法をこの機会にぜひ知ってほしいと思います。
 

< お伝えする内容 >
・家族信託とは何か?制度と仕組みを丁寧に解説!
・後見制度との違い ~メリットや留意点~
・実家や空き家、アパートなどの実例から家族信託を知る
・家族信託で財産管理に成功する家族/失敗する家族 ・・・など
 
< ぜひ聞いていただきたい方 >
・本人(親)が70歳以上で、体調面に不安がある方
・自分や家族のために財産管理をしっかり行っていきたい方
・財産管理をそろそろ子どもに任せたい(任せて欲しい)と思っている方
・相続対策を安心して確実に進めたい方
 

 

この記事の監修
プロサーチ株式会社 代表取締役 松尾 企晴(まつお きはる)

20歳のとき母方の祖父母を火事で亡くし、祖父祖母の相続では兄妹間の争族に発展。『またいつか』ではなく『すぐにでも』行動しなければならないことや、どれだけ仲の良い兄妹でも揉めることを痛感。会社の事業理念に『家族の物語をつむぐ』を掲げ、不動産等のモノだけではなく、親や子に対する想いや思い出などのコトも含め、家族が織りなしてきた物語(モノやコト)を親から子へと継承していくことこそが【真の相続】と考え、不動産相続のプロとして、お客様の気持ちを聴き、寄り添う姿に多くの顧客から評価を得ている。
現在は全国から寄せられる相続に関する相談の解決に尽力しながら、家族信託の提案や、相続問題解決のヒントをメルマガ・セミナーなどで情報を発信している。

 

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