家族信託の相談は誰にする?あなたが安心して任せられる専門家を見極める3つのポイント
みなさんは「家族信託」について相談したい専門家のイメージはありますか?
「家族信託 相談」とインターネット検索してそれぞれのホームページを見てみると、≪相談は弁護士や司法書士等の法資格者、知識・経験豊富な専門家にすべし≫というフレーズが目につきます。
それ自体は間違えてないと思いますし、家族信託を扱うのであれば法律などに詳しいことは当たり前ですよね。
それでは誰に相談したらいいのでしょうか。
本記事では、家族皆が安心して財産管理できる家族信託を叶えるために提案や設計してくれる専門家の特徴をお伝えします。
本記事を読むことで、老後の財産管理に関する相談先を正しく選べるようになります。
今回のポイントは以下の通りです。
・相談先として不適格な専門家は、家族信託以外の制度に詳しくなく回答が曖昧、極端に不安を煽るなど、とにかく家族信託契約をさせようとする。
・「目的や希望を聞き提案してくれる専門家」と、その内容をもとに「家族信託契約内容を作成してくれる専門家」を役割毎に分けることもできる。
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相談先にしたい専門家を見極めるポイント3つ
認知症等で意思判断能力が喪失したときに財産が凍結され、実家の維持管理負担や相続税対策などが一切できず、「経済的な損失」や「希望が叶えられず困ること」があることが認知されはじめ、同時に、その解決法として家族信託が広まってきました。
ここで大事なのは、この「希望が叶えられず困ること」こそが家族信託をする目的となるということです。
それでは相談先として適した専門家を選ぶための3つのポイントお伝えします。
なお、お客様自身の不安や困りごとを聞く、希望や叶えたいことなどを引き出してくれること、家族信託に詳しいなんてことは、大前提のことなのでポイントから外します。
ポイント1 目的や希望に合った適切な財産管理方法の提案がある
お客様の目的や希望によっては成年後見制度など家族信託以外の検討も必要です。何でもかんでも家族信託で叶うわけではありません。
他の制度についても公平に正しく説明してもらえるかどうかがポイントです。
ポイント2 経済的観点でのアドバイスがある
不動産や金融資産など資産の管理や処分について、家族信託/成年後見制度/何もしない、これらの手段を比較して「経済的観点から○○の制度が良い」とわかれば、より多くの財産を残せる手段を選択できます。
単に制度説明だけではなく、経済的観点からも説明してもらえるかどうかに注目しましょう。
経済的効果についての例はこちらで詳しく紹介しています。
ポイント3 継続的なフォロー体制がある
家族信託は、契約後から実際に財産管理が始まります。本人(親:委託者)70歳で家族信託をスタートし相続発生まで続けるとすると、管理を託された子(受託者)は20、30年管理し続けることになります。
ずっと何事も無ければいいのですが、信託財産(自宅等)の売却、確定申告などイベントはあるでしょう。契約後もその専門家に色々と相談できるのかどうかも大切なポイントです。
特に重要なポイントは②です。
家族信託をしたほうがよい人でも決断できずに検討をやめてしまうことがあります。
その理由の一つは、相談先の専門家から経済的な視点でのアドバイスがなかったことが挙げられます。どんなに素晴らしい制度でも、決して安くない家族信託の組成費用(託す財産が都内にある相続税評価額3,000万円の自宅のみで50万円~)に見合った経済的メリットは欲しいですよね。
家族信託について相談する際は、3つのポイントを意識してみてください。
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相談先としてNGな専門家の特徴3つ
家族信託ニーズの高まりを受け、取り扱う専門家も増えてきました。先ほどの相談先として適した専門家もいれば、そうではない専門家もいます。その特徴を3つに絞ってお伝えします。
1)他の制度との比較を簡潔に説明できない
家族信託とはお客様の老後・相続の各対策における財産管理の一つの手法です。
これを理解し、他の制度も含めてお客様の目的や希望に合わせて提案すべきなのです。公平に正しく説明できなかったり、他の制度を貶めるような表現を使うということは、このことを理解していないことと同じです。
2)特定の人だけの肩を持つ
家族信託は柔軟な財産管理が出来る一方、託された子(受託者)が、他に兄弟姉妹がいるのに自分にだけ有利となるように信託財産を管理処分することができます。
このような受託者の暴走が出来てしまう内容を設計する専門家には相談しないようにしてください。
例えば、家族のうち、本人(親)以外の特定の人に有利に働くように契約設計したり、家族皆の理解を得る必要ないという専門家です。争族の火種にもなりかねませんし、このようなことは「家族のための信託」ではありません。
3)専門家の利益に誘導する
家族信託組成に際し、専門家自身とその周辺業者が結託し、依頼者の自由を奪う契約内容で進める専門家がいます。
例)
・『家族信託に関する相談は○○法律事務所とする』とか、『不動産の管理や売買の相談は株式会社○○不動産とする』など信託契約内で業者を指定する。
・本来は任意である『信託監督人』を、あたかも必要であるように表示し『信託監督人○○法律事務所』として、毎月報酬を得て、この信託監督人を変更したり外したりできないように契約書内容をロックする商品を勧めてくる、など。
相談しても的を得た回答がない、悪評、担当者と合わないなどで相談先を変えたいといったときに対応できるよう、契約内容で専門家等を変更できるようにしておいた方が良いでしょう。
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家族信託の組成ステップで相談先を分ける
家族信託を組成するまでには、大きく2つのステップがあります。
≪ステップ1≫
目的や希望の整理、制度検討、経済的観点の検証など
専門家:弁護士や司法書士、不動産会社、生命保険会社など誰でも可
≪ステップ2≫
家族信託契約書の作成、締結
専門家:弁護士、司法書士、行政書士の有資格者
※信託登記業務は弁護士又は司法書士
家族信託を進めるに際し重要なことはステップ1です。
ステップ1を疎かにすると目的や希望に合った家族信託とならないこともあり得ます。司法書士等の有資格者だから良いのではなく、ステップ1では上記の相談先にしたい専門家の特徴をもった専門家であることが必要なのです。
ステップ1で取りまとめた家族信託の骨子をもとに、ステップ2で別の専門家(司法書士等)に契約書作成を依頼するというように、専門家を分けて依頼することも可能です。
司法書士等の有資格者だからといってステップ1が上手かというとそうではありません。得意不得意があるのです。
まとめ
今回のポイントは以下の通りです。
・相談先として不適格な専門家は、家族信託以外の制度に詳しくなく回答が曖昧、極端に不安を煽るなど、とにかく家族信託を組成させようとする。
・「目的や希望などを聞き提案してくれる専門家」と、その内容をもとに「家族信託契約内容を作成してくれる専門家」を役割毎に分けることもできる。
相談先にしたい/したくない専門家の特徴をお伝えしました。ホームページで「相談実績1,000件」や「組成件数100件」など謳っているところがありますが、家族信託の相談先を選ぶときは、そのような数字よりも、本記事でお伝えした3つのポイントをもとに、相談に対してどのようなことをしてくれるのかを注視してみてください。
現在は全国から寄せられる相続に関する相談の解決に尽力しながら、家族信託の提案や、相続問題解決のヒントをメルマガ・セミナーなどで情報を発信している。