実家が70万円!?あなたも知らない不動産の怖さ
当社プロサーチでは不動産に関するご相談を数多くお受けしていますが、中でも一筋縄で解決しないことが多いのは「不動産の売却」のお手伝いです。
なんの変哲も無い不動産だと思っていても、対象不動産について調べていくうちに誰も知らなかった予想外の事実が発覚することも。
今回は、『実家は普通の家だったし相場並みで売れるだろう』といっていたお客様が、不動産の持つ怖さを実感された事例を取り上げます。
相談内容
生命保険代理店のTさんからのご紹介でお会いした相談者Aさん(70歳)。
ご相談内容を聞くと、『いま、妹家族と一緒に住んでいて、足腰を悪くしてからは自立生活が難しいから、もう実家(戸建て)は不要。なので売却して整理したいわ』とのこと。
毎年の固定資産税や、植栽等の管理での負担が大きく、貸すにもリフォーム代など先立つ費用がないし、実家は貸したくないという気持ちも根底にあり、悩んだ末に売却を決断されたようです。
また、売却の話をしているときに、売却した金額で今のうちに墓じまいをしたいとの話も伺うことが出来ました。
実は道路に面していなかったご自宅
相談を受けてから、現地と役所へ不動産調査を行いました。現地を見る限りはごくごく普通の一戸建てでしたから、役所の調査もいつも通り進めていました。
しかし、建築基準法上の道路(この道路に接していないと建築物の建築は原則不可)に面しているかどうかを担当課に聞いたところ、『道路に接していない』との回答。
では、Aさんのご実家は違法に建築されたものなのでしょうか?
実はそうではなく、道路に面していない場合にこれを救済するため、建築基準法第43条但し書きによる許可というものがあり、やむを得ない事情がある場合に適用し建築を許可する制度があります。(特例中の特例と思ってください。またこの許可を受けた道路を「但し書き道路」と呼びます。)
依頼者Aさんのご両親が過去に購入した当該自宅は、この制度を適用して建築していました。再建築不可ではなく、一定の手続きと許可を得ることで再建築できることが分かったのは幸いでした。
※注意点
但し書き道路に接する不動産は、場合によっては(私道などの場合)ローンの利用が困難なケースもあります。また将来において「但し書きの認定」が受けることが出来ない場合は、建て替えが不可能なケースも予想されます。
昭和48年築ということもあり内装はかなり傷んでいました。一方外見はきれいでしたので、再建築の他に、費用はかさみそうでしたがリフォームして建物を活用するという購入者も想定しながら調査を進めました。
価格が低い不動産は、市場からも不動産業者からも相手にされない!?
調査から1週間後、Aさん宅に調査報告等のため伺いました。
調査結果を伝えたところ、初耳の内容が多かったようで『外から見たら普通の一軒家なのに…』と大変驚かれていました。調査してみて初めて知ることはよくあります。それだけ『不動産』とは色々な権利関係や法規制が複雑になっています。
私から、『こちらの土地は住宅街ではありますが、市場には通常の道路に面した土地でさえかなりの量が売れ残っているため、再建築に一定条件が付き、リフォームや解体にかかる費用などを総合的に考慮すると、売値が50万円前後になる可能性あります』とお伝えしました。
Aさんは『正直そこまで価格が低いとは思いませんでした。ただ相場というものは理解しなければなりませんよね。高く売ろうとしたって買う人がいないんじゃ意味がないわね。でもせめて、墓じまい程度の価格は出てほしいな』と。不動産を買ったときは数千万円もしたのに、30年程でここまで変わるのかと、Aさんと同様、私自身も驚きました。
実はAさん、1年ほど前に不動産管理(空家見回り)をお願いしている不動産会社へこの売却相談をしていたそうです。しかし、何の連絡もないまま月日だけが過ぎていたとのこと。確かに、50万円ほどの価格の不動産ですから、人を動かす費用の方が高くなるかもしれません。しかも、建築が難しい不動産ですから、建築の申請に必要な、道路に接している4件の方の書類への実印押印と印鑑証明取得のお願いや、対象地の隣が更地でしかも所有者の所在が不明という理由で相手にされなかったようです。
想像以上に苦戦した買主探し
まず、不動産を売却するにも特殊な事情があるため苦戦するのは目に見えていました。所有者Aさんは手間や負担をかけずに売りたい、購入検討者はできれば不安要素が少ない物件を買いたいはずですから、双方にとって頭の痛い『再建築は出来るのか?』をまず明らかにすることにしました。
これは、先述の1年前ほどに依頼した管理会社は更地の所有者に連絡が取れないとすぐに諦めたと思いますが、当社は1日で解決しました。更地ということは、売却するなり、建築するなり、何かしらその土地で行うことを意味することが多いです(固定資産税の問題があるからです。宅地なのに更地だと、建物があるときと比べて税額約6倍も負担増になります)。
売りに出されていないかを確認したところ、売りに出されていることが判明。すぐにその仲介会社に連絡を入れ、事情を伝えたところ『もちろん、ご協力します』と二つ返事でした。あっけなく解決。
先の管理会社はいったい何を調査したのだろう…。怒りよりも、プロ意識の無さに寂しい気持ちになりました。
※ちなみに、その仲介会社ご担当者も当該土地が通常の道路に面していると思い込んでいました。まさか但し書き道路だとは思わなかったようです(涙)。
買主を探し始め1ヶ月。各会社の見解は次の通り。
・人気駅ではなく駅からの距離もあり難しい
・但し書道路の為建て替えが難しい
・但し書道路の申請が通らないリスクが怖い
・停止条件(但し書道路の申請が通ったら)契約
このように良い返事は一つもなく、購入者にとって課題のある不動産の売却活動は容易ではありませんでした。
その中でも手を挙げて頂いた業者さんが4社ほどいましたが、購入条件がかなり厳しいものやリフォームしてから引渡が欲しいなど、売主様のご負担が大きくなる条件がありました。
プロサーチでは普段から、インターネット上に出ていない不動産を扱うことが多く、その情報を基に不動産業者様、並びに士業の先生方などの専門家とのネットワーク基盤作りに力を入れています。今回もそのネットワークを駆使した結果、扱いが難しい不動産を得意としている不動産業者様を見つけることが出来ました。
交渉の結果、価格70万円(査定額よりも140%UP)で、しかも今回売主様に有利な条件を全て飲んでいただき、確定測量(費用40万程の負担)無し、但し書き道路の申請(不許可のリスク)無しでご契約、お引渡しさせていただきました。
また売買価格の交渉だけではなく、お客様になるべく早く、負担もかからないように不動産会社と話を進めていったことで、以前の不動産会社が1年以上かかったところを、わずか3ヶ月で解決でき、お墓じまいの費用も捻出でき、「真剣に取り組んでくださってありがとう。自宅が大きな負担になっていたから、やっと肩の荷が下りました。本当にありがとうございました。」とお礼のお言葉を頂きました。
遺産相続コンシェルジュからのアドバイス
将来自宅の売却をし、老人ホームなどの施設への入居を考えている方もいるでしょう。しかし、いざ売却をしようとしてもすぐに現金化ができるとは限りません。
思っていた金額よりも低い金額でしか売却できないケースや、今回の様な訳アリの不動産、その他に不動産の場所や状況・状態によっては、売却自体ができない(買手がつかない)こともあり得ます。
そうすると、目的であった施設入居する資金が準備できないなどの事態にもなりかねません。そのため、将来不動産を売却等する可能性があるのであれば、不動産の時価イメージや、売却をしようとしたときにどの様な問題があるのかを事前に不動産会社などにお話を聞きに行くのも一つの手かもしれません。当社では不動産調査のみのご依頼も承っています。お気軽にご相談ください。(記:山田大地)