最新路線価から見る不動産市況と専門家として考えるべきこと
今月、2018年度の路線価が発表されました。
路線価については知っている方も多いかと思いますが、不動産をお持ちの方や我々のような不動産相続の専門家にとっては大変重要な指標になります。
なぜなら、路線価は相続税の評価額に影響し相続税額が変わるからです。もちろん、不動産マーケットの動向を見る大切な指標の一つでもあります。
昨年は銀座の路線価がバブル期の価格を超えるなど、大きな話題になりました。
まずは今年の結果をみてみることにしましょう。
今年の路線価の傾向
全国平均は前年を0.7%上回り3年連続で上昇。(昨年度の上げ幅は0.4%)
都道府県別にみると18都道府県が上昇し、29県が下落しています。
【 観光需要に沸く沖縄 】
今年一番上昇率が高かった都道府県は、なんと沖縄県。上昇率は5.0%を超え、現在の上昇率算定方法になった2010年以降で最大の上昇率でした。
(表1)
沖縄は今、観光客数が5年連続で過去最高(2017年は939万人)を更新しており、観光客数の増加に伴い、ホテルや観光施設の建築ラッシュが続いています。
特にホテルの建築申請数は200件/年を超えており、今年もその勢いは続いているようです。
人が集まるところには大きなお金が動きます。経済が回る土地は、それだけ価値も高くなる(結果、路線価が上昇する)のは当然のことでしょう。
この現象は、沖縄に限った話ではありません。
主要な観光地である大阪や京都、神戸や福岡などでも最高路線価が10%以上も上昇していることがわかります。これは企業のオフィス需要が好調なだけではなく、観光需要による影響が大きいことがわかります。
(表2)
(表1・2ともに国税庁 「平成30年分都道府県庁所在都市の最高路線価」を元に作成)
特に訪日外国人数は右肩上がりで増えており、2017年の訪日外国人数は過去最多の2869万人。政府は2020年の東京オリンピックまでに、4000万人に増やす目標を立てています。
この観光需要を取り込めるか取り込めないかが、今後の不動産指標の重要なカギとなるでしょう。現に、観光客を取り込めない地方都市の路線価は下落の一途を辿っており、都心部や観光地との二極が鮮明になってきていますので、今後もより格差が広がっていくことが想定されます。
【 気になるあの路線価 】
今年の最高路線価は、皆さんご想像の通り銀座の鳩居堂前で1㎡あたり4432万円(バブル期を超えた昨年より9.9%上昇)となり、33年連続で全国最高額でした。
昨年に引き続き、大型の商業施設などで観光需要を取りこんだことが大きく影響しています。(昨年対比で㎡あたり約400万円、つまり坪単価で1,200万円も上昇!)
昨年はGINZASIX(ギンザシックス)や東急プラザ、今年は東京ミッドタウン日比谷の開業などが記憶に新しいと思います。もしこの銀座に1㎡土地を持っていたら、都内でも新築の戸建てが買えてしまうというすごい金額です。
各地点の全路線価のうち上昇率が高かったのは、何と4年連続、北海道ニセコで88.2%上昇(32万円/㎡)。
外国人観光客に人気で、近年はアジア系富裕層の投資対象となり、分譲型ホテルなどが高額で売買されています。
プロとして考えるべきこと
この路線価の上昇に応じて注意しなければならないのは相続税です。
冒頭でも触れましたが、つまりは路線価が上昇することで相続税評価額が上がり、支払う相続税も増えるということです。
都心の路線価は5年連続で上昇しているため、都心に不動産を持たれている方は、相続税評価額の上昇に注意が必要です。
弊社でこんなお客様がいらっしゃいました。
吉祥寺の地主様で、お母様とお子様3人。
資産規模は10憶円。
※弊社で5年前に不動産を使った相談対策(節税・分割対策のための組み換え)を実施。
その対策以降は大きな対策はしていない。
このお客様に再度相続税の試算を提案したところ、なんと路線価が5年間で20%も上昇しており、組み換えをした不動産の賃料収入と合わせて資産が1億円も増えていました。
お客様は一瞬喜んだのも束の間、すぐに再度相続(税)対策が必要とわかり、保険や贈与、小口化不動産などを活用し対策をして頂きました。
【 今が見直し検討のチャンス 】
勿論、他のお客様も例外ではありません。
都心に不動産をお持ちの方で、過去に相続対策をしている人は見直し必須となるでしょう。再度相続(税)対策だけでなく、根本的に対策を見直さなければならない可能性もあります。
不動産や相続に関わる専門家にとって、このことは『必ずお客様に伝えなければならないこと』であり、プロとしてアドバイスできるようにすべきなのではないでしょうか。
不動産市況がまだ良い今だからこそ、相続対策の見直しや不動産の対策(特に売却・処分等)をご検討の方、もしくはお客様がいらっしゃる方は早めに対策されることをおすすめ致します。(金融機関や不動産事業者の動きから、現在は不動産融資の引き締め、購入不動産の厳格化、価格の落ち着き、売れ残り増…、振り返ると今年がマーケットの頂点かもしれません)
(参考:国税庁「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」
遺産相続コンシェルジュからのアドバイス
不動産や相続に関わる専門家の皆様は、今回の路線価をきっかけに、今後の資産の持ち方や相続対策を提案するなどして、お客様の問題に向き合ってみては如何でしょうか。
(記:友重孝一朗)