あの超有名人も使っていた家族を想った信託
平成28年9月の推計によると、現在日本の総人口に占める65歳以上の高齢者の割合は、27.3%となったそうです(約3,400万人)。女性だけをみると、なんと30.1%。3人に1人に近い割合で高齢化が進んでいます。その中で、認知症予備軍も含めた認知症の割合は、約4人に1人(800万人)と言われています。2025年には、約3人に1人になるとも言われています。
そして、平均寿命が男性80歳、女性87歳。健康寿命(健康で自立した生活ができる)が男性71歳、女性75歳だそうです。統計からみると、亡くなるまでの、およそ10年は自立した生活ができなくなっています。
これら情報から考えると、相続対策もですが、認知症対策もしっかり備えておく時代になっているのではないでしょうか。
今後の相続対策には欠かせない選択肢の一つである「家族信託」。(制度の概要はコチラ !)
相続対策にはまだ一歩踏み出せないご家族でも、親御さんが生きている時の財産管理を目的とした、認知症対策としての活用も可能です。
さて、タイトルでも謳っていますが、家族を想って信託を使った超有名人とは誰なのでしょうか?実は、世界的ミュージックスターのマイケル・ジャクソンさんなのです!マイケルさんは信託を活用してどのように莫大な資産を次世代へ繋いだのか、みていきたいと思います。
1.マイケルさんの信託内容
アメリカの法律では日本とは違い、相続人に財産が当然に相続されないことになっています。そのため、「プロベート」と呼ばれる制度(裁判所や第三者が関与する制度。制度の詳細は割愛します。)を利用する必要があるのですが、このプロベート、費用も高額で、手続きが複雑で、時間も長く掛かると、かなりやっかいです。
このプロベートを回避する方法として、「リビングトラスト」(本人が元気な内に信託契約を締結して相続対策すること)が普及しています。
日本で、後見制度を回避する方法として家族信託を選ぶ方がいるのと、なんだか似ていますね。
マイケルさんも、このリビングトラスト制度を活用したのです。
マイケルさんが組成した信託の登場人物は、
託す人(委託者) | マイケルさん |
---|---|
託される人(受託者) | マイケルさんが作った財団。 その名も「マイケル・ジャクソン・ファミリー・トラスト」 |
利益を得る人(受益者) | マイケルさんの3人の子供達とお母さん、慈善団体 |
となります。
財団に託した内容は、
・資産の、売却・購入・賃貸・抵当入れ・質入れ・交換・処理を行う権利
・事業の継続、保険契約を維持する権利
・前述の目的のために法律文書を作成し、執行する権利
・遺産の最初の20%は、子供に関連する慈善団体に寄付する
・そこから経費を支払った後の50%をお母さんに、残りの50%を3人の子供達で等分する
・もし、子供達もお母さんもいなくなったら、親戚の子供達にあげる
・子供達が成人するまでは、生活費や教育費は都度受け取る
・子供達が受け取る遺産は、30歳になったら1/3を、35歳で1/2を、40歳で残りの全額を受け取る
・事業の継続、保険契約を維持する権利
・前述の目的のために法律文書を作成し、執行する権利
・遺産の最初の20%は、子供に関連する慈善団体に寄付する
・そこから経費を支払った後の50%をお母さんに、残りの50%を3人の子供達で等分する
・もし、子供達もお母さんもいなくなったら、親戚の子供達にあげる
・子供達が成人するまでは、生活費や教育費は都度受け取る
・子供達が受け取る遺産は、30歳になったら1/3を、35歳で1/2を、40歳で残りの全額を受け取る
となっており、遺された子供達の生活を、長期的にサポートする内容になっていました。
このマイケルさんの信託にも組み込まれていますが、遺言では出来ない家族信託の大きな強みの一つとして、遺産を一度に全部渡すのではなく、分割して継続して安定的に渡すことが可能ですので、未成年者や認知症患者、障害者等、財産の渡し方を考えないといけない相続人がいる場合には、とても大きな力を発揮してくれると思います。
また、利益を得る人が、【お母さん・子供】 ⇒ 【親戚の子供】
と、連続型になっているのも遺言ではできない、信託ならではの特徴です!
将来を見据えて、家族の本当の幸せを願った信託内容からは、マイケルさんのとても大きな家族愛が感じられますね。
※注:マイケルさんの事例はあくまでもアメリカの制度における事例です。日本の「信託」制度とは異なる部分もございますので、ご検討される際は必ず家族信託の専門家へご相談ください。
2.まとめ
マイケルさんと同じく世界的ミュージックスターのプリンスさんは、マイケルさんと違って相続対策を何も行っていなかったため(遺言も信託契約も無かったようです)、プロベートを利用することになり、知らない人が子供だと名乗り出てきたりして、現在家族は遺産を受け取れずとても困っているとのこと。何も準備をしていないと、想定もしていなかった結果となりえるのが、相続であり資産承継問題なのです。
マイケルさんもまさか自分が50歳で死ぬなんて思っていなかったと思います。
上記の信託契約を締結したのは、亡くなる7年前の43歳の時。まだ相続を考えるには早いと思われるかもしれませんが、マイケルさんが生前に自分の想いを「形」にして残しておいたことによって、結果的には身内の揉め事の回避や、家族が幸せに安心して暮らしていけることに繋がったのです。
亡くなってからでは、もう対策はできません。認知症になってからでも、対策はできません。家族の幸せを願う時こそ、相続対策・認知症対策に一歩踏み込むタイミングなのかもしれません。
【遺産相続コンシェルジュからのアドバイス】
「相続」と考えると自分が亡くなるときの話なので、元気なうちはなかなかイメージしにくいのかもしれません。また高齢化が進む中で、年齢が若ければ若いほど「相続対策」と言われてもピンとこないのが現状だと思います。
では、相続対策ではなく、資産の事業承継対策と考えたらどうでしょう?
一般企業の事業承継では、先代が元気なうちに株を譲渡していくなど、少しずつ権限を後継者に委譲していきます。権限を委譲していく中で、自身の想い(理念)や具体的なノウハウを伝えていき、何年も時間をかけて承継していくのです。
それは不動産を持って事業をしている地主さんや家主さんも一緒ではないでしょうか?
何も準備のないまま、相続が起きると、後継者は何もわからないまま不動産事業を引き継ぐことになります。結果、素人の後継者が引き継いだ事業がうまくいくはずもなく、衰退していくのです。
そう考えると、特に不動産を保有しているご家族では、相続対策だけではなく早め早めの資産承継対策が必須となるのです。
そして元気なうちに家族と「相続のこと、資産承継のこと」を話し合って決めるにあたって、「家族信託」はそのきっかけを作る方法の一つになると思います。
プロサーチでは、「相続対策」だけではなく「承継対策」も視野に入れた提案を進めています。5月28日(日)には地主さん・家主さんの承継対策をテーマにしたお客様向けセミナーも予定していますので、こうしたテーマにご興味のあるお客様がいる場合はぜひお誘いください。(記:中田千太郎)