相続税策でアパート建築して失敗する前に、知っておきたい相続対策3つのステップ
『節税対策のためアパート建築を提案されたけどそのまま進めていっていいの?』
『相続税の納税や節税のためにとりあえず生命保険加入した方がいいのかな?』
このようなご相談をよく受けます。
しかし、相続税の節税対策を実行する前に“あること”をしておかないと、税金は安くなったけど「遺産分割で揉めてしまう」「相続税を支払うために苦労した」という事態を招くことになります。
本記事では「相続で揉めないために、節税対策する前に行うこと」と「相続対策の順番」を解説します。いま相続税の節税を考えている方や、これから相続対策を進める方はぜひ読み進めてください。
今回のポイントは以下の通りです。
・各相続対策を行う前に資産の現状把握をすることで、分割対策や納税対策を正しく行うことができる。
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揉めない相続対策3つのステップ
相続対策には、大きく分けて「遺産分割」「納税財源確保」「節税」の3つあり、相続で揉めないようにするためには、遺産分割⇒納税財源⇒節税の順で進めることが基本であり大切なことです。
現状の資産での遺産分割は分けやすいか、評価や時価、収益など納得できるか。
ステップ2:納税財源確保
ステップ1の遺産分割で、各相続人の納税財源が確保され、納税に困らない状態か
ステップ3:節税
その節税対策をした場合、ステップ1及び2は問題ないか
節税対策から始めてしまうと、“遺産分割や納税で困る状況に陥る”と考えてください。そうならないために、ステップ1と2を先に済ませ、“ステップ1と2の問題とならない”節税対策を検討し実行してください。
事例
なぜ、節税対策から始めると分割や納税で困ることになるのでしょうか。ここで事例をみていきましょう。
※長男・次男ともにそれぞれ、配偶者と子どもがいます。
資産内容:母自宅(土地100坪)、畑(100坪)、現預金2,500万円 借入金無し
自宅と畑は最寄り駅から徒歩20分
総資産額:1億7,500万円(評価内訳:自宅5,000万円、畑1億円、現預金2,500万円)
相 続 税:総額約2,600万円
相談内容:相続税の節税をしたい。借金して畑にアパート1棟の建築を勧められているが、進めていいのだろうか。
5年前のお父様ご相続後、お母様は耕作を止めてしまい畑は更地状態。相続税の負担も大きいことから、節税対策しなければと考えていらっしゃいました。
アパート建築での節税対策前後を比較してみます。
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対策前
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対策後
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①総資産額
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1億7,500万円
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8,000万円
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資産評価内訳
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自宅5,000万円
畑1億円 現預金2,500万円 |
自宅5,000万円
アパート1億500万円 現預金2,500万円 借入金▲1億円 |
②基礎控除
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▲4,200万円
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▲4,200万円
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③課税遺産総額(①-②)
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1億3,300万円
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3,800万円
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④一人当たり(③÷相続人2人)
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6,650万円/人
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1,900万円/人
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⑤ ④×相続税率
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④×30%-700万円
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④×15%-50万円
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相続税(⑤×相続人2人)
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2,590万円
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470万円
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※②基礎控除:3,000万円+(600万円×相続人の数)
※相続税率については国税庁HPをご覧ください。
現金(借入金)を不動産に換えることでおよそ2,120万円も相続税を節税できそうです。お母様の現預金で相続税を納税できますし、収益物件も手に入り安定収益が確保できますから、このままアパート建築による相続税対策を進めていく方も多いです。
しかし、遺産分割・納税財源を飛ばして節税対策を進めてしまうとどうなるでしょうか。
長男さんにこのように尋ねました。
借入金付きアパートは誰が相続しますか?
2)納税財源について
実家だけを相続した場合、相続税を納税する現金はありますか?
長男「自分が実家で、弟がアパートを相続すると思っているけど、弟に聞いたことはない。」
「相続税納税のことは考えていなかった。」
どれだけ節税できるかに興味が強いため、アパート建築した後の遺産分割と納税までは考えていませんでした。
後日、長男と次男のお二人とお話しすることとなり、上記のことを確認しました。
次男さんは「相続税を引き下げたいのは同じだけど、駅から離れているし1億円の借入金は怖いよ。アパートは相続したくないな」とのこと。
結局アパート建築は見送られましたが、弟さんの意見を聞かないままアパート建築していたらどうなっていたでしょうか。
「誰が借金付きアパートを引き継ぐのか」で揉めたかもしれません。また、現預金2,500万円もどのように分けるかによって納税財源が不足することも考えられます。仮に長男さんが自宅のみ相続すると相続税300万円超の納税が必要となるので、工面しなければならなくなります。不動産を多く相続する場合は、特に納税財源に留意するようにしてください。
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相続対策の前に必要なこと
これまで、相続対策ステップ1から3までをお伝えしましたが、ステップ1遺産分割とステップ2納税財源の検証には、まず資産の現状把握が必要です。
資産の現状把握とは、現在保有している資産がどのような状況にあるかを正確に数値化することです。
1.現預金、借入金の額
2.各資産の相続税評価額と相続税額
3.財産明細
・生命保険の契約内容や保険金
・不動産の種類、権利関係、時価
・有価証券
また、資産の現状把握は一度したら終わりではありません。
・資産処分や節税対策などによる資産構成の変化
・相続税評価額の再計算(相続税路線価は毎年7月に公表される)
・相続人の数の変更 など
これらを常に把握しておくことで、遺産分割では、各相続人の取得額で試算でき、法定相続分に対して問題ないか(遺留分の問題が生じるか)がわかります。納税財源では、遺産分割に応じ現預金で納税ができるか、または、不動産などの資産売却(時価)で対応できるのかが分かります。資産の現状は常に最新の情報に更新しておくことが大切です。
なお、相続税評価額や相続税の計算が分からない場合は、会計士や税理士、最寄りの税務署で確認できますし、不動産時価は近くの不動産会社や不動産ネット査定を活用(営業の電話は相当きますが…)、税理士や生命保険などの専門家から紹介してもらってご確認ください。
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まとめ
・各相続対策を行う前に資産の現状把握をすることで、分割対策や納税対策を正しく行うことができる。
平成27年に相続税法が改正され基礎控除額が3,000万円+600万円×相続人の数(改正前:5,000万円+1,000万円×相続人の数)に引き下げられました。この改正で相続税がかかる人が増えたことで、“相続税対策”を求める人が増え、アパートや生命保険など相続対策のセミナーが目立つようになりました。
資産購入などによる節税対策は、対策効果がすぐに出て数字で把握できるという分かりやすさがあります。飛びついてしまう気持ちも分かりますが、本記事でお伝えしたような節税を先行した対策には遺産分割等へのリスクがあるので、一度立ち止まり、現状把握からステップ1へと進めてください。
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あなたは不動産の相続に関してこのようなことを考えていませんか?
・我が家に限って揉めることなんて、絶対にない。
・不動産の相続対策としてはアパート建築などの節税対策を考えておけば十分だ。
・何も言わなくても、父はきっと何かしらの相続対策をとってくれているはずだ。
・他の兄妹は、私に親の財産管理を任せてくれるはずだ。
もしこのような考え方をされているのであれば、いますぐ考えを直しましょう!
ちゃんとした現状把握を行ったうえで相続対策を行えば、この考えではなくなり、親が生きているうちに親とともに円滑な相続対策を実現することができるようになります。
単に不動産の節税対策を行うためにアパートを建築するといった、巷に溢れる不動産節税のノウハウではなく、何をすべきか整理ができ、そして、解決すべき問題や希望を叶えるためにすべきことを家族で共有できる、5000件超のお客様の相談事例から導き出した、プロサーチ流の不動産相続対策の方法をお伝えします。
【お伝えする内容(予定)】
・円満相続対策の5つのポイント
・失敗事例1:空き家状態の実家が売れず、820万円も税金等の負担が増えてしまった。
・失敗事例2:不動産の価値半減⁉ 納税のため切り売りして窮地に追い込まれた地主
・「自分の財産への意識と傾向」から見る現状把握の実態
・やって知ろう!あなたの「財産把握レベルチェックシート」
・収入を倍に!親と兄弟妹3人が叶えた相続対策と進め方
・相続対策を検討する際に知っておきたい専門家選びのポイント
現在は全国から寄せられる相続に関する相談の解決に尽力しながら、家族信託の提案や、相続問題解決のヒントをメルマガ・セミナーなどで情報を発信している。