【2021年 公示地価】今後の不動産市況における新型コロナの影響と注意点

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【2021年 公示地価】今後の不動産市況における新型コロナの影響と注意点写真
2021.4.30

 
国土交通省が、2021年3月23日に令和3年度の公示地価を発表しました。
この公示地価は、昨年1年間の不動産取引データを基に、2021年1月1日時点の基準地の土地価格を算出したものです。
 
2020年に発表された公示地価や路線価などは、2019年の不動産取引を基に作成されていますから、新型コロナウイルス感染症(以下、「新型コロナ」という)の影響を盛り込めていませんでした。
※国税庁から相続税路線価の見直し検討の話がありましたが、結局は見直されませんでした。
 
今回の公示地価は、昨年の新型コロナの感染拡大から緊急事態宣言などを経たこれまでの不動産取引の影響を織り込むものになりますので、よりリアルな不動産指標を映し出しているでしょう。
 
本記事は、新型コロナの影響を踏まえた最新の不動産市況を知りたい方や、これからの不動産市況に不安がある方に、是非とも読んでいただきたい内容になっております。
 
 
本記事のポイントはこちら

・2021年の公示地価は全用途の全国平均が6年ぶりに下落。
 
・商業地では収益性の低下により地価が下落。一方で、移住先として人気の高いリゾートエリアでは地価が上昇傾向に。
 
・今後の不動産市況のポイントは3つ。
「しばらくは現状維持」「2022年生産緑地問題に注意」「2年後がターニングポイント」

 
 

 2021年の公示地価を読み解く

銀座
 
さっそく、2021年の公示地価から現在の不動産市況を読み解いていきましょう。
 
<公示地価の結果>

参考:朝日新聞
 
 
【全国平均】
住宅地や商業地などを合わせた全用途の全国平均が前年より0.5%下がり、6年ぶりに下落に転じました(前年は1.4%の上昇)。
新型コロナの感染拡大による訪日客の激減や外出自粛の影響で、都市部を中心に大きく下落しています。
 
用途別に見ても、商業地が0.8%下落(前年は3.1%上昇)となり、7年ぶりに下落。住宅地も0.4%下落(昨年は0.8%上昇)と5年ぶりの下落。
全ての用途において新型コロナの影響を受けていることがわかります。東京オリンピックの開催決定以降、順調に伸びていた不動産市況の腰を折られた形となりました。
 
 
【上昇ランキング TOP5】
住宅地/変動率順位

1位
北海道 俱知安町山田
変動率25.0%
2位
北海道 北広島市共栄町
変動率17.7%
3位
北海道 北広島市東共栄
変動率15.6%
4位
北海道 北広島市美沢
変動率15.2%
5位
北海道 俱知安町南3条東
変動率13.8%

6位以下、北海道北広島市、長野県白馬村、福岡県福岡市博多区、福岡県福岡市中央区と続きました。
※俱知安町はニセコリゾートブランドとして世界的に有名に。現在も開発が続く。
※北広島市は新球場を核としたボールパーク開業予定による住宅需要増。

 
商業地/変動率順位

1位
北海道 俱知安町南1条西
変動率21.0%
2位
福岡県 福岡市中央区清川
変動率15.0%
3位
福岡県 福岡市博多区店屋町
変動率14.0%
4位
福岡県 福岡市中央区平尾
変動率13.7%
5位
福岡県 福岡市博多区奈良屋町
変動率12.8%

6位以下も福岡県がずっと続き、9位に北海道北広島市が入りました。
 
 
【下降ランキング TOP5】
住宅地/変動率順位

1位
熊本県 人吉市相良町
変動率▲14.6%
2位
福島県 いわき市平下平窪
変動率▲10.5%
3位
千葉県 我孫子市布佐平和台
変動率▲8.4%
4位
愛知県 南知多町片名
変動率▲7.8%
5位
神奈川県 三浦市三崎町
変動率▲7.8%

6位以下、北海道岩見沢市、北海道奈井江町、兵庫県香美町と続きました。
 
商業地/変動率順位

1位
大阪府 大阪市中央区道頓堀
変動率▲28.0%
2位
大阪府 大阪市中央区宗右衛門町
変動率▲26.5%
3位
大阪府 大阪市中央区難波
変動率▲25.7%
4位
大阪府 大阪市中央区日本橋
変動率▲22.7%
5位
大阪府 大阪市中央区心斎橋筋
変動率▲20.3%

6位以下、大阪府大阪市中央区、愛知県名古屋市中区、大阪府大阪市中央区と続きました。
※大阪府大阪市中央区はコロナ禍による国内外の観光客減少が響いた。
 
 
特に影響が大きかったのは、ホテルや飲食店が集まる都市部の商業地です。東京の銀座も軒並み▲7%減となっています。
 
訪日客の激減と外出自粛の影響で、ホテルは業績不振に陥り撤退を余儀なくされ、これまで土地を高く買ってきたプレイヤーが不在。都心の繁華街では、やむなく時短営業となった飲食店の撤退や賃料交渉により不動産の収益性が低下し、公示地価が下がってしまいました。
 
一方、テレワークの普及で首都圏からの移住が増えたため、移住先として人気の高い軽井沢など一部の地域で地価が上昇するといった変化、特にスキーリゾートエリアは堅調に開発が進められ公示地価は上昇傾向です。
 
 

 今後の不動産市況において気を付けること

今後
 
今後の不動産の市況を考える上でのポイントを3つ上げてみます。
 

■しばらくはこのまま現状維持が続きそう(商業地の回復は遅いかも)
■住宅地への影響は、2022年の生産緑地問題に注意
■2年後が次のターニングポイント!?

 
 
<しばらくは現状維持!?>
昨年1年間の不動産取引を見たときに、4月の緊急事態宣言の際は取引数や単価共に下落しましたが、その後V字回復。
現在では緊急事態宣言前の状況まで戻ってきており、取引も活発に行われています。
 

 
また、現状、世の中に出回っているお金の供給量(マネタリーベース)は、コロナ禍以前より2割以上多くなっていると言われています。
そのお金が、今は株式や不動産へ投資されているため、このような取引状況になっていると推測します。
 
これは新型コロナの影響が続く限り、世界中にコロナマネーが出回りますので、続いていくことでしょう。
 
 
<住宅地は2022年の生産緑地問題に注意>
これまで生産緑地(畑)としてしか活用が出来なかった土地が、2022年になると売却など土地活用が出来るようになり、市場に宅地が大量供給されると言われています。
 
皆様ご存知の通り、物の価格は需要と供給のバランスで決まります(スーパーマーケットの野菜がいい例。豊作なら需要<供給となり値段は安く、不作なら需要>供給となり値段は高く)。供給過多になればその分買い手市場になりますので、不動産価格に影響が出る可能性があります。
特に生産緑地の多い地域で、売却を検討されている方は注意が必要でしょう。
 
関連リンク:生産緑地がある地域
(出典:国土交通省HP)

 
 
<2年後がターニングポイント!?>
「2年後」に起こる可能性があることは以下の通りです。
 
①企業のコロナ融資の返済が始まる
⇒昨年より中小事業者に向けた新型コロナ対策として、実質無利子で融資が受けられる支援措置が実行されています。
昨年融資実行した企業は、この融資の返済が2年後から開始されるのです。
もしそのタイミングで“コロナの終息”と“経済の回復”が出来ていなかった場合、返済できない企業が多く出てくるでしょう。
 
そうなると企業はキャッシュポジションを上げるために不動産売却を増やす可能性があるので、供給が増え、不動産市況に影響を与えます。虎視眈々とその時を狙っている投資家は少なくないと思います。
 
②日銀の黒田総裁の任期があと2年
⇒これまで不動産価格が上昇してきた背景として、日銀が行ってきた金融緩和の影響が大きく影響しています。
その金融緩和を積極的に行ってきた黒田総裁の任期があと2年。
もしも次の総裁が金融緩和に否定的な方になった場合、金融の流れが変わり大きな影響が出ることは間違いありません。
 
 
このように先行きに不安が多いこの “不動産マーケット”で準備しておきたいこと。
 

・現状分析(正確な売却価格の把握)
・書類整備(書類がないと“不安材料”として価格が下がる)
・収益不動産の場合は、収益を上げる/支出を下げる工夫をする(価格にダイレクトに影響)
・今のうちに“より良い不動産へ”組換え。法人(圧縮記帳)/個人(買換特例)を要検証

 
不動産や相続に携わる専門家として、お客様の大切な財産を守ることは重要なミッションです。
上記のようにこれから確実に起こることをキャッチアップし、お客様へ伝えることが必要でしょう。
 
過去に相続対策をしたから安心!と思っているお客様はいらっしゃいませんか?
特に都心やインバウンド需要が強い主要都市、生産緑地が近くにある不動産等をお持ちの方で、5年以上前に相続対策をした方は要注意です。まず確実に追加対策が必要になると考えていただいていいでしょう。
 
プロサーチではそれらを解決できるツールや、学べるセミナー等をご用意しておりますので、是非ご活用いただけたら幸いです。
 
 

 遺産相続コンシェルジュより

 
本記事のポイントはこちら

・2021年の公示地価は全用途の全国平均が6年ぶりに下落。
 
・商業地では収益性の低下により地価が下落。一方で、移住先として人気の高いリゾートエリアでは地価が上昇傾向に。
 
・今後の不動産市況のポイントは3つ。
「しばらくは現状維持」「2022年生産緑地問題に注意」「2年後がターニングポイント」

 


今回の公示地価の結果は、昨年からの新型コロナの影響を反映したものになりますが、ややタイムラグがあり、そのデータは本当に「今」を反映したものとは限りません。
マーケットは刻々と変化していますので、常に現場ではどうなっているのかとアンテナを張る必要があります。
 
コロナ対策等で市場にお金が溢れている今の状況では、不動産市況も歪みが生じやすいため、2021年7月に発表される路線価なども確認しながら、常に注視していく必要があります。(記:友重孝一朗)

 
 

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