【令和3年度最新】「路線価」下落に見る、コロナ禍の影響と相続対策の備え
既にご覧になった方も多いかと思いますが、2021年7月1日に令和3年度の路線価が発表されました。
路線価と言えば、土地の相続税評価に影響するだけではなく、不動産マーケットの動向を見る指標の一つでもありますので、不動産をお持ちの方や、我々のような不動産相続に関わる専門家にとっては大変重要な指標となります。
昨年の路線価は、新型コロナウイルス感染症(以下、「新型コロナ」という)の影響で全国的に緊急事態宣言が出された後の発表となりましたが、新型コロナの影響が反映されていないデータ(2019年1月~12月の取引データを基に算出)であったため、5年連続上昇という結果になりました。
今回の路線価は、昨年(2020年1月~12月)の取引データを基に算出されているため、コロナ禍の影響を反映した最初の路線価となります。
今後の不動産市況を読む上で非常に重要になりますので、さっそく見てまいりましょう。
本記事のポイントはこちら。
・上昇した地域の特徴は、駅前の一等地で開発が行われている地域。新型コロナの影響よりも土地開発による影響が上回った
・コロナ禍においても、不動産市況は需要・価格ともに増加傾向にある
・今後、顧客への提案で必要なことは、「不動産の評価と時価の見直し」と「不動産の売買ニーズへのアドバイス」
路線価は6年ぶりに下落
全国の平均値は0.5%下落(前年は+1.6%)となり、新型コロナの影響で繁華街や観光地を中心にマイナスに転じたことで、6年ぶりに前年を下回る結果となりました。
都道府県別標準宅地を見ると、上昇した都道府県は7都道府県(前年は19都道府県)にとどまり、下落は39都道府県(前年は26都道府県)と大きく増加しました。
特に、インバウンド需要がコロナ禍により大きく減退したため、これまで上昇を牽引してきた観光地等を中心に、大きな下げ幅となっています。
昨年のトップだった沖縄県は10%を超える上昇を見せていましたが、今年トップの福岡県の上昇率は1.8%止まりとなっており、どれだけ新型コロナの影響が強かったかを物語っています。
■都道府県別標準宅地の上昇率ランキング
都道府県庁所在地の最高路線価が最も高かったのは、やはり今年も東京都中央区銀座の鳩居堂前。
36年連続1位となっていますが、路線価は前年比で-7.0%となり9年ぶりに下落しました。
上昇した地域の特徴としては、駅前の一等地で開発が行われている地域となっており、新型コロナの影響よりも土地開発による影響が上回り、上昇する結果となりました。
また、上昇率は高くないものの、テレワークの普及により住宅需要が高まった地域(軽井沢等)では、価格は横ばいもしくは伸びた地域があったのが特徴です。
■都道府県庁所在地の最高路線価ランキング
気になる今後の不動産市況
今回の結果を見ると、『コロナ禍で不動産市況はこのまま下落基調になっていくのでは?』と感じている方も多いと思います。
実際に不動産売買の現場においてどうなっているかと言うと、インバウンド需要の影響が強いホテルや飲食店舗を除けば、コロナ禍前の価格や需給に戻っている(もしくはそれ以上かもしれません)というのが現状です。
上記のグラフより、中古マンションは昨年4月の緊急事態宣言をきっかけに、需要の減少(約-50%)と価格の減少(約-5%)が起きましたが、年末にかけて緊急事態宣言前の水準に戻ってきており、増加傾向は現在も続いています。
この原因としては、コロナ禍による空前のカネ余り状況にあるためです。
新型コロナ関連の補助金などで市場にお金が溢れ、行き場を失ったお金が不動産のみならず、株や高級時計、絵画など高額な資産へ盛んに投資されています。
不動産に至っては、居住用・投資用ともに供給がかなり不足しており、弊社にも、物件情報を求める投資家や不動産会社からのお問い合わせが非常に増えています。
動き出した海外投資家
昨年に比べて不動産市況は好調と述べましたが、路線価で一番打撃を受けている観光地のホテルや飲食店舗ビルなどは今後も厳しい状況が続くのかというと、実は悪い話ばかりではありません。
京都などのブランドエリアに関しては、価格の割安感(底値)が出てきたこともあり、水面下で一部の投資家によるホテルやマンションへの投資が増えてきているようです。
(実際に、2020年の海外投資家による国内不動産への投資額は2019年比で約6割増加)
また、店舗ビルに関しても、コロナ禍の影響により、立地がいいのに空きビルという物件の売買案件が増えてきているため、体力(資金力)のある飲食企業はこれをチャンスと捉え、購入し始めています。
本格的なインバウンド需要の回復が目前と判断し、投資家や不動産会社は既に動き出しているのです。
今後、顧客への相続対策提案で必要なこと
①不動産の評価と時価の見直し
コロナ禍の影響で、評価と時価に大きく開きがある不動産(ホテル、店舗、オフィス等)が出てきていますので、相続対策を考えているお客様には、改めて評価だけでなく時価も再算出することをお勧めいたします。
特に相続の遺産分割の現場においては、相続税評価よりも取引時価を重要視されるケースが多いため、不動産市況に合わせて定期的に確認を行えば、いざという時にスムーズに対応することができます。
②不動産の売買ニーズへのアドバイス
不動産の売却需要(企業の清算やキャッシュポジション増加等)や、購入需要(余っている現金を使って投資等)は、非常に高まってきています。
人気があるのはレジデンスや区分マンションがほとんど。
地方のホテルや店舗、オフィス等の売却は苦戦する可能性が高いので、そのエリアに詳しくてビルやホテル等も扱える不動産業者の協力が必要不可欠です。
仮にあったとしても、検討している間に他の方に購入されてしまいます。
条件の優先順位をつけるなどして、即決できるように入念に準備しておきましょう。
上記のような、売却や購入のニーズを持ったお客様がいらっしゃいましたら、是非ともプロサーチにお問い合わせください。
地方の案件やビルやホテルなども、各エリアの不動産会社と連携して対応してまいります。
また、相続税評価や時価を知りたい、売り方や買い方を教えて欲しいという専門家の方も是非ご相談ください。
遺産相続コンシェルジュより
本記事のポイントはこちら。
・上昇した地域の特徴は、駅前の一等地で開発が行われている地域。新型コロナの影響よりも土地開発による影響が上回った
・コロナ禍においても、不動産市況は需要・価格ともに増加傾向にある
・今後、顧客への提案で必要なことは、「不動産の評価と時価の見直し」と「不動産の売買ニーズへのアドバイス」
令和3年度の路線価は、全国で見ると39都府県で下がりました。
皆様のお客様が保有されている不動産はどうだったでしょうか?
評価が上がった下がったで一喜一憂している方は少ないと思いますが、路線価は時価を図る一つの指標ですから、遺産分割や納税財源に大きく影響します。
そのため、著しく路線価が変わった時(まさに今年です!)には、不動産の時価を算定しましょうとお客様にご提案ください。(記:友重孝一朗)