生前贈与は「誰のため」「何のため」?

Pocket



生前贈与は「誰のため」「何のため」?写真

 

皆さんご存知の通り、2015年に基礎控除見直しなどの税制改正によって相続税が増税になりました。その一方で贈与税については、税率緩和、新たな贈与制度の創設など、減税方針であると明確に打ち出し、国の方針としてお金を持っている親世代が、お金を必要としている子や孫世代へお金を回し消費を促すよう舵をとり始めました。

 

このような中、「将来的な相続税の負担を軽減したい!」「遺産分割で争族にならないように今のうちに子供に渡しておきたい!」など、相続税の節税や遺産分割対策を目的として生前贈与(下記に贈与種類の一例)を行おうとする人が増えています。

 

ついつい節税等の効果だけに目が行きがちなこの生前贈与ですが、実行する前に少し考えてもらいたいことを皆さんにお伝えしたいと思います。

 

image1

※①は、省エネ等住宅に該当する場合です。その他の住宅は700万円となります。
※②は、「居住用不動産を取得するための金銭」でも可能です。
※特例等の詳細や適用要件は国税庁ホームページ又は専門家にご確認ください。

 

贈与を受ける人(子)の気持ち

 

贈与する側(親)が得たいメリットは節税効果、特定の子に財産あげられる、そして「ありがとう」と感謝されたい、ということが一般的によく聞かれる内容ですね。では、贈与を受ける側(子)はどのように感じ、どのような効果があるのでしょうか。

 

・資産が増えることによって、生活や心にゆとりが持てる!
・金銭的な理由が原因で諦めていたことに、挑戦できるようになる!
・自分や家族にしてあげたいことができるようになる(教育、趣味、家、車など)!
・不動産や株を早めにもらうと、管理や運営ノウハウなどを親から学ぶことができる!
・(貰った時は)親に感謝!

 

専門家に「贈与で節税できるって本当?」「贈与を進められているけどした方が良いのかしら?」のような相談すると、大抵の場合「贈与した分だけ財産が減るので、相続税の負担が軽減されますよ」「贈与の種類や制度はこのようになってしまして…(制度の説明)」というような回答があり、結局やっていいのか分からず、何もしないという方が多いのではないでしょうか。しかし、実際に贈与を受ける側の人にとってみると相続税の節税効果よりも、今、贈与を受けることによる生活や心の安心に対するメリットの方が大きいのではと思います。

 

生前贈与の落とし穴

贈与する側にとっては、「自分の資産をあげるのだから、子供や孫たちに感謝をされて当然」と思いがちですが、そんな気持ちでいると、思わぬところから問題が生じることもあります。

 

例えば
・特定の子供に贈与をし過ぎて、後々遺産分割協議で揉める原因になってしまった
・子供に贈与をし過ぎたために、今後の自分の生活が不安になった
・孫の喜んだ顔がみたかったのに、喜んだのは孫ではなく子供だった
・子供の配偶者側の両親にプレッシャーを掛ける結果となった

 

こうしたことを考えると、これから生前贈与を考えている人は、単純に相続税の節税だけに捉われるのではなく、その贈与が誰のために役に立つものなのか?その贈与によって不満を持つ人は周りにいないか?その贈与は誰が喜んでくれるためにするのか?など、良かれと思って行った贈与が不幸の種にならないように、受ける側の立場や気持ちになって考える必要もあると思います。

 

事例:教育資金の一括贈与なんてしなければよかった!

「孫の喜んだ顔を見たい!」と思い、銀行にも勧められ、教育資金の一括贈与を使って500万円を一括で幼稚園児の孫に贈与をしたおばあちゃんのお話です。

 

幼稚園の時に一括贈与をしているので、孫はまだ理解しているはずもなく、実際に感謝をされたのは、贈与した時に子供からの「ありがとう」という一言だけだったとのことです。

 

その後、孫の小学校入学の時に、既に教育資金で贈与をしているからお祝いはしなくてもいいかなと思いながらも、やっぱりその時にお祝いを持っていかないことになんだか罪悪感が。 しかも、子供の配偶者側の両親からは「お祝い」として現金10万円が渡されました。直接おじいちゃん、おばあちゃんからお金を貰ったと子供と孫は大喜び。こちらは既にまとまったお金をあげているのに、感謝されるのは配偶者側のおじいちゃん、おばあちゃんばかり。その様子を見て、教育資金贈与とは別に、やっぱり喜ぶ顔が見たいから(感謝もされたい)結局は毎回孫にお祝いをあげることにしたようですが、なんだか釈然としない、とのことでした。

 

こうした話を聞くと、節税対策の面からみれば、一括贈与は効果的だったと言えますが、本来の目的(孫の喜んだ顔をみたい)を、果たすことはできたのでしょうか?節税ばかりではなく、何のためにその贈与をするのか?という根本的なところをしっかりと考えて行わないと、節税効果云々ではなく、気持ち的な部分で残念な思いをし、「やらなきゃよかった!」なんてことにもなるかもしれません。

 

贈与を使って「想い」を形にするために

 

相続税の節税のために贈与をする方法はありますが、ちゃんと考えておいてほしいことは「贈与をすることによって、自分が本当に得たいものはなにか?」ということです。もし、見返りではないですが、心のどこかで

 

「子供や孫たちに喜ばれたい、感謝されたい、役に立ちたい」

 

このようなご自身の「叶えたい想い」があるのであれば、子供や孫に資産を贈与するという行動に多少の工夫をすることが大切です。

 

そして単純に、相続税節税対策として贈与をするのではなく、自分が贈与をすることによってどんなことを得たいのか、どんな気持ちになりたいのかをまずはイメージしてみてください。そしてそれは贈与のことだけに限らず、「相続対策」も全くおなじでしょう。 「相続対策」を行うことによって、自分はどのような「想い」を実現したいのか、なぜ財産を残すのか?きっと多くの人は「残された家族に迷惑をかけたくない。が困らないように。安心して・仲良く暮らせるように」との思いで、資産を残したり相続対策するのではないでしょうか?だからこそ「自分にとっての理想の相続や贈与」をイメージすることが、相続対策成功の第一歩なのかもしれません。

 

image2

遺産相続コンシェルジュからのアドバイス

私は年齢的に子供側の気持ちの方が理解しやすいのですが、正直親の「お前のためにしてやったんだ!」とか「貰えるだけありがたいと思え」という言葉は、ありがた迷惑なことがよくあります。もちろん素直にとても有難いこともあります。親の立場の方も、子の立場だった時に同じような経験を少なからずされていると思いますが、いざ自分が親の立場になったら、そのことを忘れてしまう方が多いようです。「子供はこれをたぶん好きなはずだ」とか、「これをもらったら嬉しいだろう」といった、想像の部分で相手の価値観を決めつけていることがあるのではないでしょうか。みんなが幸せになるように、「あげること」が目的とならないように、しっかりと対策を考えていく必要があると思います。

Pocket

無料冊子ダウンロード
無料冊子ダウンロード