親子間のコミュニケーションが相続対策の大きなポイント

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親子ではなしにくい「相続」のはなし

2014年4月21日、プロサーチ創業10周年。京王プラザホテルで10周年記念の感謝祭を行った。
 
この感謝祭の「感謝」とは、今までプロサーチがお世話になった人に「感謝」をするということ。それと同時に、普段なかなか感謝の気持ちを伝えることができていない家族に「感謝」の気持ちを伝えるということ。私も今回、母親を感謝祭に招待をして、みんなの前で母親への感謝の手紙を読んだ。こうやって自分の想いを言葉にして母親に伝えたのは人生で初めてだと思う。母親は目に涙を浮かべて、すごく喜んでくれた。やっぱり言葉にしないと伝わらないことっていっぱいある。特に家族の想いが交錯する『相続』という仕事をしていると、相続成功の一番のポイントは親子間のコミュニケーションだということを強く実感させられる。

自分の建替えプランを計画したけど、話が進まない

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ちょうど私が昨年お手伝いしたお客様が親子間での想いの伝達がうまくいっておらず、対策を行おうとしていながらも、なかなか前に進んでいない状況だった。
 
お客様の家族構成は70歳のお母さん、40歳前後の子供3人の4人家族。長男のAさんが中心となって不動産・相続対策を進めていた。弊社主催セミナーがきっかけで、Aさんが一人で個別相談を受けに来られた。話を聞くと、お母さんと同居をしている土地(300坪程度)に建っている築40年の自宅の建替えを検討中で、Aさんは土地全体を使って、見栄えの良い大規模な賃貸併用住宅への建替えを考えていた。何社かのハウスメーカーに依頼をしてプランを作ってもらったが、結局最後のところで母親が決断しきれずに話が一向に進まないとのことだった。そこで私の方から「一度、私がお母様に話を聞いてみましょうか?」とご提案をした。
 

親子だから話しやすいこと、話しにくいこと

後日、Aさんが仕事でいない平日に、お母さんの話を聞きにご自宅へ伺うことになった。

 

お母さんの話を聞くとこういうことだった。
・長男が意識を持って積極的に話を進めてくれるのはありがたいが、いくら相続対策と言っても、これから大きな借入をして建替えをすることはすごく不安が大きい。
 
・お父さんが残してくれた土地はできるだけ残したい。
・お父さんが生前不動産投資で失敗したのを見てきたので、いきなり大きな投資はこわい。時間をかけてでもいいから、少しずつ進めていきたい。
・100%平等とは言わないが、長男だけではなく次男と三男にも不動産を残してあげたい。
・引っ越しが大変なので1回で終わらせたい。
 
そしてお母さんが最後にぼそっと一言。
「親子だから話やすいこと。親子だから話にくいこと。いろいろあるのよねぇ」と。
 
「皆さん、どこのご家庭もご一緒ですからご安心ください。身近なだけに普段伝えることが難しいお互いの想いや気持ちを通訳してしっかりとお伝えをすることが私の仕事ですので!」
 

お母さんの気持ちを織り込んだ提案書

後日、お母さんの希望を取り入れて無理のないプランを中心に何パターンかの活用提案をさせてもらった。(提案内容は下記「実行と結果」参照。)
無理のない自宅の引っ越し・建替え、相続税軽減効果、分割、納税資金確保とすべてを満たしているプランを見て、Aさんは「こんなやり方があったんだ。」お母さんを見ると安堵の表情を浮かべている。Aさんは「なんかこのプランを見て、初めて母の気持ちに気づきました。高橋さんありがとう!」とのこと。
 
そして、それから約2週間後にAさんから電話があった。
「先日いただいたレポートを基に、次男と三男も呼んで家族会議をしました。その時、母が初めて自分の気持ちを正直に話してくれました。母とちゃんと話をするきっかけを作ってくれて本当にありがとうございました。母の気持ちを形にすることが兄弟全員一致の結論なので、それを踏まえて今後の不動産対策実行を支援してください。」との依頼だった。

 

3段階・3年計画の有効活用プラン

お母さんの気持ちに加え、将来の分割イメージ・納税財源の確保・相続税評価圧縮効果の検討を行い、下記のプランを具体的に提案することになった。
 
◆3段階に分けた3年計画300坪有効活用プランのご提案
① まずは現在、駐車場の130坪部分に賃貸併用の自宅を建築。(建築中は、今の家に住み続けることができる。)
② 賃貸併用の自宅が完成したら引越し。完成した賃貸部分が満室になった段階で旧自宅を取り壊し、旧自宅の土地のうち70坪に賃貸住宅をさらに建築。残った100坪はしばらく駐車場にしておく。
③ 第2段階の賃貸住宅の入居が安定したら、残った駐車場100坪を3分割して戸建て賃貸を3棟建築する。
 
◆上記計画のメリット
・将来何かあったときに、土地全てを手離さなくて済む。
・相続の時に3兄弟で共有になることなく不動産の分割ができる。
 長男:賃貸併用住宅(土地130坪) 
 次男:賃貸住宅(土地70坪)
 三男:戸建て賃貸(土地33坪)
・将来戸建て賃貸(2棟)を中古住宅として売却したお金を納税財源に充当できる。
・入居(収入)が安定した時点で次の計画に入るので、気持ちが安心。
・もちろん相続税評価圧縮効果あり(建物建築、貸家、貸家建付地、小規模宅地等)
・今の家に住みながら計画が実行できる。(仮住まいの必要なし、引越しが1度で住む)
 
まずは賃貸併用住宅の建築工事から取り掛かることになった。全体プランが決まったおかげで、やっとお母さんも肩の荷が下り、新しい住まいの打ち合わせを楽しみにしているとのこと。最後の活用が完了するまで、責任を持ってお手伝いしていきたい。

遺産相続コンシェルジュからのアドバイス

相続対策の一番のポイントは親子での会話・コミュニケーションではないかと感じることがよくあります。今回の事例の中でも紹介しましたが、実際に相続の相談を受けていると「家族(親子)だから話やすいこと。家族(親子)だから話しにくいこと。」があるという実態に気が付きます。こうした問題を解決するためには、私たちのような第三者的な専門家を介在させることも一つの方法かもしれません。私たちが最も大切にしていることは、対策によって相続税を下げることでも、たくさんの収益を上げることでもありません。それは『相続』に対して、家族の想いをしっかりと反映させることです。そのためには相続をさせる側【親】と相続を受ける側【子】の想いをお互いに伝え合う必要があります。私たちの作る不動産・相続対策レポートは、そのためのツールの一つであり、私たちの存在が親子間の気持ちを繋ぐ架け橋となることがよくあります。相続成功のカギは親子・関係者全ての想いが一致することにあると言えるでしょう。(記:髙橋大樹)

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