相続による不動産の分け方本当にそれで大丈夫?

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今回は、相続時の不動産の分割に関するトラブル事例。本来は、相続で分割をするときに気が付いてさえいれば、後に問題にならないことなのだが、見過ごしてしまうことが多く、当社でもこのような相談をよく受ける。これから相続で不動産の分割を検討される方、もしくは既に検討中の方はぜひ頭の中に入れておいて頂きたい。

10年前お母さんの相続発生時にはスムーズに分割!

今から10年前、お母さんに相続が発生した。お母さんの財産は自宅(土地、建物)とその向かいの駐車場付き1棟マンション(土地、建物)だった。生前は、自宅で長男のAさん(以下「Aさん」)家族と同居をしていた。
121130遺言書なども特になかったので、Aさんは、お父さんの相続時もお世話になった税理士のC先生(以下「C先生」)に相続税の申告と合わせて財産の分割方法を相談することにした。お父さんの相続時にAにさんと次男のBさん(以下「Bさん」)は、遺産分割で揉めた経緯があり、それ以来一言も口を利かない状況になっていたので、その状況を理解しているC先生に相談はしやすかったようだ。
 
Aさんからの相談を受けて、C先生はBさんの意向も聞くことにした。すると、Aさんが自宅を相続するのであれば、Bさんはマンションを相続したいとのことだった。しかしマンション全てをBさんが相続してしまうと平等ではなくなってしまう。
そこでAさんは、「マンションとその敷地をBさんに相続させてもいいが、マンションの横にある駐車場は自分が相続したい」と、C先生に話をした。
Aさんの息子は現在、レストランで働いていて、将来自分でレストランを開きたいと考えていた。そのためAさんは大きな通りに面しているこの土地でレストランをやらせたいという想いでいたのだ。
 
Aさんが駐車場部分を欲しいとの要望を受けて、C先生が、路線価評価額を基準に計算をすると、評価上ほぼ兄弟平等に財産を分けることができるということが分かった。
Bさんは駐車場はなくてもマンションの賃料収入で収益がちゃんと見込めるということ、そして評価がお互い平等であるということに納得をし、その案を承諾した。
 
このようにして、お母さんの相続に関しては、兄弟揉めることはなく、スムーズに遺産分割協議は終了したのである。

分割から10年後に大きな問題に気が付く!!

その後Bさんのマンションも順調に稼働しており、何事もなく平穏に月日は流れていた。
唯一あった大きな出来事としては、以前からAさんが相談をしていたC先生が亡くなってしまったことぐらいだろうか。
 
そして、お母さんが亡くなってから10年が経った。
Aさんの息子も料理人としてキャリアを十分積み、レストランを開業することになった。そこでAさんは息子と一緒に駐車場の土地に、レストランの建築計画を建築会社に依頼することにした。
数日後、建築会社の担当者からAさんに電話があった。「今、敷地調査で役所に来ているんですけれども、Aさんの土地には建物を建てることができないと言われました。」と一言。
Aさんは建築会社の人が何を言っているのかがよくわからなかった。気持ちを落ち着かせ、改めて話を聞いてみると、
この駐車場の土地は、20年前にお父さんがマンションの建築をした時の建築敷地に含まれている。つまり、この駐車場の土地も含めたところで、建築確認申請が出されているため、ここに別の建物を計画するとすると、新築ではなく、マンションの増築になってしまうとのこと。
新築が無理ということであれば、増築での申請はできないのかと考えたのだが、既存のマンションで建蔽率、容積率は上限値まで使っているとのことで、新たな建物をこの敷地に建てられる余地が全くない、とのことだった。
 
つまりこの駐車場土地は、マンションの建物を壊さない限り、新たに建築をすることができない土地なのである。
 
建物が建てられない土地を持っていても意味が全くない。
 
Aさんはこの土地を相続してから10年間、駐車場として利用していた。当初は満車で稼働しており、安定的に貸せていたので問題はなかったが、最近では駐車場賃料も安くなり、固定資産税の方が多く、マイナスの状況になっていた。それでもいずれは息子のレストラン開業のためにと、持ち続けていたのだ。
 
現実を目の当たりにし、Aさんは、「いっそのことこの土地を売ってそのお金で新たな土地を買いたいが、マンション敷地とのこともあるし、本当に売れるのか?」と悩んでいた。
誰に相談すべきか分からず、たまたま見かけた相続セミナーの広告で私たちの存在を知り、セミナーに参加した上で、この土地について当社へ相談に来た。

実はBさんにとってもこれは大変な話!

当社で調査した結果も同様であった。しかし、これはAさんだけの問題ではない。
Bさんにとっても所有しているマンションは、駐車場の敷地があってはじめて建築基準法を満たすマンションなのである。 
つまりBさんが将来マンションを売ろうとした時、そのマンション自体が駐車場部分の土地が無いことで違法建築になってしまう。近年の不動産マーケットでは違法物件に対しては融資が厳しく、買手がつかないことが見受けられる。仮に買手がいたとしても当然安くしか売れないのが実態だ。
 
もちろんこのことはBさん自身も気がついていない。
 
今回のケースは何が問題だったのか。そう、全ては10年前の相続時の財産分割および土地分割の仕方であった。
 
問題を解決するために、Bさんにも現在の状況を詳しく説明した。Bさんは当然自身でも調べ自分にとってもその駐車場敷地が重要であることを認識してくれた。結果、Bさんに現在の路線価(相続財産評価額程度)で買取ってもらうこととなった。

遺産相続コンシェルジュからのアドバイス


こういった問題は近年増加している。しかしこれに気が付かずに、次の世代で相続が起きて、権利関係者が増えていくと、どんどん解決するのが難しくなる。
 
ところで、私がこの事例を通じて声を大にして言いたいことは、税務上の、「不動産」の評価や分割の仕方と、実態上の不動産の利用や建築基準法では全く違うということだ。その違いを分かっている土地所有者も税務の専門家も世の中に非常に少ないことは残念に思う。
 
この事例の場合、もし不動産に詳しい当社のような存在と税務の専門家が共同で、不動産の実態を調べ分割を考えていれば、
・マンションの建築確認をどの敷地でどう取得しているか
・それぞれ分割後も建築基準法を満たした上で、分割できる
土地なのかどうか
などを考慮して不動産の分け方について提案できたはずである。専門外の建築基準法などを税務の専門家に求めるのは酷であるのは理解している。しかし、単純に相続税上の評価額だけで不動産を分けると、このようなトラブルが起き、相続人が多大な損を被ることに成りかねない。
 
だからこそ依頼する相続人も税務の専門家も不動産がからむ相続の場合は、我々のような「相続」「建築」に精通している不動産の専門家を利用するべきではないだろうか。それが次世代に良いモノを残すポイントかもしれない。(記:髙橋大樹)

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