【令和3年税制改正】不動産や贈与の税金はどうなる?これを読めば、不動産オーナーに解説・提案ができる!

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2021.1.15

 
2020年12月10日、与党より2021年度の税制改正大綱が発表されました。
 
ご存知のとおり、税制改正大綱とは、消費税や固定資産税、贈与税、相続税、法人税など、私たちの国民生活に影響がある税金等について、“これまでの税制の見直し”や“新たな税制の創設”について書かれています。今年3月の国会を通過すると正式に施行されます。
 
本来であれば国民皆がこの税制改正大綱を見て、資産や生活の対策を考えていければよいのですが、100ページ以上もあり、しかも専門用語だらけ…。普段から税金や法律に深く接していないお客様が正しく理解するのはなかなか困難です。
 
本記事では、税制改正大綱の改正案のうち、“不動産(固定資産税、住宅ローン減税)”“生前贈与(教育、結婚・子育て、住宅)”に絞って、不動産オーナーや生前贈与を検討している方向けの相続対策のポイントとその活用方法をできるだけ簡潔にお伝えします。
皆様のお客様へのご提案や情報提供の一端として、ぜひ役立てていただければ幸いです。
 
 
今回のポイントは以下のとおりです。
 

・コロナ対策の一環として2021年度の土地の固定資産税は据え置かれる。
 
・住宅ローン減税は、適用期限の延長と、所得制限はつくものの面積要件が緩和され、“1LDKや2DKなどの単身者向けタイプ”も対象になった。
 
・親からの住宅取得資金の贈与はさらに要件が緩和され、非課税枠が拡大。これまで以上に贈与がしやすくなる。
 
・教育資金や結婚子育ての一括贈与は制度が厳格化された。“子どもが小さい今のうちに贈与しなさい”としていて、つまり、経済回復のために祖父母や親が子や孫に早く贈与して若い世代にお金を使ってもらうように意図されている!?
 
・相続税節税対策に特例を活用した贈与は有効だが、贈与しても老後の生活や遺産分割、納税財源に影響がないことの検証は必須。

 
 

土地の固定資産税

土地の固定資産税は、3年ごとに“評価替え”という見直しがあります。地域によって異なりますが、固定資産税評価額は上がり続けています。毎年届く固定資産税明細書を見比べると分かると思います。
 
この評価替えですが、前回は2018年でした。ということは、次は2021年に行われます。昨年まで不動産バブルが起きていて、地価が上がったところが多かった年です。そうなると、評価替えでは“固定資産税評価額が上がる”ことになり、つまり“固定資産税額が上がる”ということです。
 
しかし、今回の税制改正大綱では、2021年の評価替えで固定資産税評価額が上がった場合、コロナ対策の一環として“2021年度に限り、税額は上げず、据え置く”ということが盛り込まれました。このまま今年3月の国会を通過すれば、不動産を所有している方にとっては朗報ですね。ぜひお客様にお伝えください。
 

住宅ローン控除


住宅ローンを借りて居住用に不動産を購入した場合、一定要件を満たすことで10年間又は13年間、購入額の1%を上限に所得税から毎年税金還付を受けられます。
 
これまでは床面積50㎡以上の不動産が住宅ローン減税の対象でしたが、今回の改正案で“床面積40㎡以上50㎡未満の不動産も住宅ローン減税の対象に追加”されました。
 

【床面積要件】
改正前 床面積50㎡以上
改正後 床面積40㎡以上50㎡未満を追加


ただし、床面積40㎡以上50㎡未満の場合は購入者の年間所得の合計が1,000万円以下であることと、2021年1月1日から2022年12月31日までの2年間のうちに入居することが条件です。
 
40㎡から50㎡の間取りは1LDKや2DKといった単身者タイプです。これまでの住宅ローン控除は50㎡以上の3LDKなどのファミリータイプ向けの制度と言えました。
 
一度でも面積要件を改正すれば、今後も日本の住まいのあり方の変化などによって柔軟に改正案に(30㎡も対象とするなど)盛り込んでくるのではないかと思います。
 

教育、結婚/育児、住宅資金の贈与


贈与制度とは、祖父母や親から、住宅購入・育児・結婚などたくさんのお金を必要とする子や孫世代への贈与をしやすい環境を整え、子・孫世代にお金を使ってもらうための制度です。
 
今回の改正案では「子や孫が小さい今のうちに贈与してくださいね!大きくなってからの贈与は少し厳しくしますよ」と、贈与のタイミングが遅くなるにつれ贈与メリットが少なくなるようにされたと言えるでしょう。
 
以下の改正内容をみると、“相続時に贈与されたお金が残っていたら全て相続税対象とする”、さらに“孫やひ孫に贈与したお金が残っていたらその残額に対し相続税2割加算”となりました。
 
 
<教育資金の一括贈与>
贈与者が死亡したときに、贈与資金のうち教育資金として使い切れず残っている場合の相続税課税対象は、下記のとおり改正となりました。
 

改正前 贈与者の死亡前3年以内の贈与に係る残額のみ相続税の対象
改正後 すべての贈与に係る残額が相続税の対象


ただし、受贈者が以下の場合は課税対象ではありません。
23歳未満、学校等に在学している、教育訓練給付金対象の訓練中の者

 
贈与者が死亡したときに、受贈者である孫・ひ孫に贈与資金が残っている場合、税額が下記のとおり改正となりました。※なお、被相続人の子はそもそも2割加算対象ではありません。
 

改正前 2割加算なし
改正後 2割加算あり


この改正は、2021年4月1日以後の贈与に適応されます。
 
 
<結婚、子育て資金の一括贈与>

贈与者が死亡したときに、受贈者である孫・ひ孫に贈与資金が残っている場合、税額が下記のとおり改正となりました。※なお、被相続人の子はそもそも2割加算対象ではありません。
 

改正前:残額が相続税の対象、2割加算なし
改正後:残額が相続税の対象、2割加算あり


また、受贈者の年齢要件が引き下げられます。
 

改正前:20歳以上50歳未満
改正後:18歳以上50歳未満


 
<住宅取得資金の贈与>
改正前は、2021年4月1日以降の贈与は非課税限度額が減縮されるとのことでしたが、今回の改正案では、“減縮させず、2021年3月までの契約分と同額にする”となりました。
 
【一例】
良質な住宅家屋(※)を購入する場合で、消費税率10%が課税される家屋に対する贈与を受けた場合の非課税限度額
 

改正前:1,200万円
改正後:1,500万円


(※)省エネ・耐震・バリアフリーの基準を満たした住宅
 
また、面積要件も引き下げられます。

改正前:50㎡以上240㎡未満
改正後:40㎡以上240㎡未満


条件は、贈与を受けた年の受贈者の年間合計所得が1,000万円以下であることです。
 
 
■関連記事
生前贈与は節税対策のため? 家族全員が想いを叶える贈与方法お伝えします。
 

生前贈与の活用事例


家族構成
ご相談者様(男性69歳)、奥様(68歳)、子(32歳)、孫(5歳)
 
ご相談内容
一昨年、母からの相続で不動産や現預金を相続しました。
今度は自分の相続対策をしていきたいのですが、自分たちの家族にとって相続税を下げる効果的な方法はありますか。(父は既に他界)
 
ご提案
まず弊社で財産分析を行い、相続税評価額や相続税額、不動産や資産の問題点とその解決方法などを洗い出しました。
そして、遺産分割や納税財源に問題はないかをチェック。遺産分割や納税財源に影響しない範囲でできる『節税対策』のプランをご報告しました。
 
プランの中の一つに、教育資金の一括贈与を提案しました。
 

対策前 課税遺産総額1.2億円、相続税率30%、相続税1,100万円
 ・奥様と子は法定相続分で相続し、子の相続税が1,100万円
 ・奥様は配偶者控除での相続のため相続税負担なし
対 策 孫(5歳)に、現金1,500万円を贈与
対策後 課税遺産総額1.05億円、相続税率30%、相続税870万円
効 果 相続税▲230万円。贈与税は0円

 
現金をお持ちのお客様が相続税節税対策を考えていたり、子や孫のためになにかしてあげたいというお考えがあったりするときには、特例を活用した贈与をご提案してみてはいかがでしょうか。
ただし、お客様の財産について「贈与しても、老後の生活、遺産分割や納税財源に影響がない」ことを検証してからがよいでしょう。
 
 
<専門家向けセミナー>
「コロナ禍でも、不動産や相続の提案に強くなる!最新不動産活用方法と顧客への提案方法」
 
 

遺産相続コンシェルジュからのアドバイス

今回のポイントはこちら。
 

・コロナ対策の一環として2021年度の土地の固定資産税は据え置かれる。
 
・住宅ローン減税は、適用期限の延長と、所得制限はつくものの面積要件が緩和され、“1LDKや2DKなどの単身者向けタイプ”も対象になった。
 
・親からの住宅取得資金の贈与はさらに要件が緩和され、非課税枠が拡大。これまで以上に贈与がしやすくなる。
 
・教育資金や結婚子育ての一括贈与は制度が厳格化された。“子どもが小さい今のうちに贈与しなさい”としていて、つまり、経済回復のために祖父母や親が子や孫に早く贈与して若い世代にお金を使ってもらうように意図されている!?
 
・相続税節税対策に特例を活用した贈与は有効だが、贈与しても老後の生活や遺産分割、納税財源に影響がないことの検証は必須。

 
本記事で取り上げた“不動産の税金”や“子や孫への贈与”という身近な税制は、毎年のように改正されています。我々は専門家として、お客様に『改正される前に対策をやっておけばよかった!』と、悔しい思いをさせるわけにはいきません。
弊社としても常に情報をキャッチアップし、“そのお客様にとって必要な情報”を提供していきたいと考えております。
 
また、不動産相続コンサルタントとして専門家の皆様にも有益な情報を提供してまいりますので、お客様へのご提案の際に役立てていただければ幸いです。(記:松尾企晴)
 
 

この記事の監修
プロサーチ株式会社 代表取締役 松尾 企晴(まつお きはる)

20歳のとき母方の祖父母を火事で亡くし、祖父祖母の相続では兄妹間の争族に発展。『またいつか』ではなく『すぐにでも』行動しなければならないことや、どれだけ仲の良い兄妹でも揉めることを痛感。会社の事業理念に『家族の物語をつむぐ』を掲げ、不動産等のモノだけではなく、親や子に対する想いや思い出などのコトも含め、家族が織りなしてきた物語(モノやコト)を親から子へと継承していくことこそが【真の相続】と考え、不動産相続のプロとして、お客様の気持ちを聴き、寄り添う姿に多くの顧客から信頼を得ている。
現在は全国から寄せられる相続に関する相談の解決に尽力しながら、家族信託の提案や、相続問題解決のヒントをメルマガ・セミナーなどで情報を発信している。

 

 

 

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