【プロが警告】土地活用を検討するオーナーが後悔しないプラン選びのポイント
不動産を使った相続税対策の王道、借入れをして土地にアパート建築。
しかし、その土地や周辺の状況によっては建てない選択も必要かもしれません。
誰に相談するかによって土地活用の提案は全く異なります。
ひとつの視点での提案の中から判断すると、上手に活用しきれず損をしてしまったり、家族の希望が叶わず仲たがいしてしまう可能性もあります。
本記事のポイントは下記のとおりです。
・不動産は「実現したいこと」を叶えるための道具。「何のために」という目的を明確にすることが重要であること
・どのような状態であれば目的を達成できたと言えるか、その基準を明確にすること
今回の記事では、老後や相続対策のために土地活用等を検討する前に確認しておきたいポイントを事例と共にお伝えします。
利益をうまない「負」動産を上手につかってゆとりのある暮らしを手に入れた事例
相談者の田中さん(仮名)は、3年前にご主人を亡くし、自宅と駐車場を相続。
今後の生活のことや、万一自分の身に何か起こったら…と悩んでいました。
詳しく聞くと、どうやら、年金と駐車場からの収入で生活をしているようですが、駐車場は空車が目立ち、収入は落ち込んでいるということでした。
さらに、駐車場の固定資産税が高くほとんど利益を生んでいない状況です。
・アパート建築を勧められたが、果たして実行してよいのか判断できない。
・大きな借り入れはせずに子どもには負担がかからない資産を残してあげたい。
田中さんは、弊社に相談される前に、自らインターネットで不動産相場を調べたり、アパートメーカーなどの無料相談会に参加したりして、情報収集に努めていたようでした。
私
『アパートメーカーさんや、売買や賃貸を扱う不動産会社さんへご相談され、どのようなご提案がありましたか?また、老後や相続を見越したヒアリングありましたか』
田中さん
『アパートメーカーさんのご提案は、駐車場の敷地いっぱいに、2LDKや3LDKの3階建マンション建築をしようという話でした。建築費は2億円くらいです。』
『不動産仲介会社さんは、賃貸のご提案はなく売却査定書のみで、売るとも決めていなかったのですが、査定書の説明の後すぐに仲介させてくださいって言われました。』
相談した先の担当者からは、田中さんの悩みに対するアドバイスや提案はなく、商品説明ばかり。
このような建築や売買といった提案を受けても、では実際にその土地で何をしたらいいの?と、田中さんは判断ができず迷われていました。
ここで活用方法や相続税対策などを考えるにあたり、まず確認すべき3つのポイントを詳しくみていきましょう。
ポイント1 公平な視点で徹底的に不動産調査をすること
賃貸や売買、つまり、アパート経営はどうなのか?売却できる金額は?と、両方を徹底的に調査します。
本事例の場合、インターネットや現地視察、賃貸会社へのヒアリングなど調査の結論、田中さんが所有する土地で収入減少や空き家に悩まない健全なアパート経営をするには、相当の努力が必要であることが分かりました。
<この土地で健全なアパート経営が大変な理由>
・周辺のアパートは空室がかなり多いこと。とくに築15年以上の物件に目立つ。
・賃貸会社によると、空室になってから申し込みがあるまで半年はかかることが多い。
・競合物件が多く、お客様に見つけてもらえず数多の物件情報に埋もれてしまう、など。
インターネットで調べた数値上の相場情報をみるだけでは分からないことがあります。
実際に現地周辺の物件や人通りなどを見て、『そもそも、この土地はアパート経営に適しているのか』『選ばれ続ける賃貸物件にするにはどうしたら良いか』『土地活用ではなく売却するとどうなりそうか』などを意識して当該立地のマーケットを肌で感じることが大切です。
この視点が欠けていると、賃貸経営においては『比較対象が多いよくある物件』に埋もれ、賃料や敷金礼金などを引き下げるなどしなければいずれ競争相手に打ち勝てなくなります。
ポイント2 目的や想いに沿った不動産活用をすること
子どもに負担を残したくない、老後資金を確保したいという不動産活用の目的と、上記の調査結果を踏まえて、大きな借入金はしないようにして、将来、子ども3人への負担を減らし、遺産分割で揉めないような提案に絞り込みました。
【提案1 駐車場を残し、そこで土地活用する場合】
・マーケットが求めている住宅の提供が必要
・土地の一部を売却し、その売却資金を活用して建築する
・土地全体の活用は建築借入金返済が重く、税引き後の手取りも少ないため除外
【提案2 駐車場を全部売却し、資産を組換えする場合】
売却代金の一部を使い、下記へ組み替える。
・管理の手間が少なく都心部好立地の「小口化不動産」を購入する
・生命保険への加入。相続税対策効果あり(非課税枠 500万円×子3人=1500万円)
※小口化不動産とは?
節税や収入といった分かりやすい数値上の効果だけを考え、目的や想いを明確にしないまま対策を進めてしまうと、『借入金返済するのが大変』『子ども3人で分けるのが困難』な財産を遺すこととなり、子どもに負担を残し感謝されないという事態になってしまいます。
ポイント3 目的を達成するための基準を確認すること
田中さんは、豊かな老後を過ごしたいという想いがありました。
弊社提携のファイナンシャルプランナーとも協議し、Aさんは月30万円以上の収入を確保できれば、お孫さんへのお小遣いや月一度程度の国内旅行にいけることがわかりました。
もちろん、ポイント2の不動産活用の提案はこのシミュレート結果を踏まえたものになっています。
『不動産を活用して収入を得たい!節税したい』というご相談者さんに、具体的に必要な収入や節税額はいくらですか?と聞いても明確なお返事があることは殆どありません。
ポイント2のような目的を設定していない、目的があってもこのポイント3の基準がないためです。
『何をどのように活用したらいいのか分からない』状態を避けるためには、目的の達成基準を明確に決めることが大事なのです。
まとめ
ご依頼から1ヶ月後、田中さんのご自宅へ伺い、ご家族おそろいの中、ご報告しました。
まず不動産マーケットや近隣状況について説明すると、「まさかそんな状況だったとは…」と驚いていました。そして、弊社からの不動産対策をお伝えすると、田中さん達は「借入れはしたくないね」「今後を考えると都心部がいいんじゃないか」など意見が飛び交いました。
そして、「駐車場の土地を全部売却し、都心部の小口化不動産を3つ購入と生命保険に加入するわ」とご決断。
田中さんは「何をしたらいいのかさっぱり分からない状態だったけど、プロサーチさんのご提案は、私の想いに沿うものばかり。あとは子どもたちにも聞いて選ぶだけだったわ。とてもスムーズに決められたの。この後のサポートもよろしくお願いします」と、とても嬉しそうだった。
今回のポイント
・不動産は「実現したいこと」を叶えるための道具。目的を明確にすることが重要であること
・どのような状態であれば目的を達成できたと言えるか、その基準を明確にすること
田中さんのように「この土地で何ができるんだろう」「とにかく収入を増やしたい」「相続税を減らしたい」と、想いや目的が明確になっていない状態で手段から検討に入ってしまうと数多とある不動産活用から選ぶことは至難の業であり、自社商品を売り込みたい業者からすると格好の的です。
将来困らないように、客観的に自分の土地のマーケットと価値を十分に理解し、対策の目的を明確にすることが大切です。
相続財産評価を下げたり収入を増やすには、建てることだけではなく、事例のように上手に組み換える対策も有効です。まずはどのような方法があるのか不動産と相続・税務の両方に詳しい専門家に話を聞くことをお勧めします。
現在は全国から寄せられる相続に関する相談の解決に尽力しながら、家族信託の提案や、相続問題解決のヒントをメルマガ・セミナーなどで情報を発信している。