天皇陛下のメッセージに込められた次世代への温かい気持ちと事業承継のヒント

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天皇陛下のメッセージに込められた次世代への温かい気持ちと事業承継のヒント写真

2016年8月8日、「生前退位」の意向を宮内庁の関係者に示している天皇陛下は、ビデオメッセージでお気持ちを表されました。
 
『私も八十を越え、体力の面などから様々な制約を覚えることもあり、ここ数年、天皇としての自らの歩みを振り返るとともに、この先の自分の在り方や務めにつき、思いを致すようになりました。
 
(中略)
 
何年か前のことになりますが、2度の外科手術を受け、加えて高齢による体力の低下を覚えるようになった頃から、これから先、従来のように重い務めを果たすことが困難になった場合、どのように身を処していくことが、国にとり、国民にとり、また、私のあとを歩む皇族にとり良いことであるかにつき、考えるようになりました。既に八十を越え、幸いに健康であるとは申せ、次第に進む身体の衰えを考慮する時、これまでのように、全身全霊をもって象徴の務めを果たしていくことが、難しくなるのではないかと案じています。
(中略)
 
天皇が健康を損ない、深刻な状態に立ち至った場合、これまでにも見られたように、社会が停滞し、国民の暮らしにも様々な影響が及ぶことが懸念されます。更にこれまでの皇室のしきたりとして、天皇の終焉に当たっては、重い殯(もがり)の行事が連日ほぼ2ヶ月にわたって続き、その後喪儀に関連する行事が、1年間続きます。その様々な行事と、新時代に関わる諸行事が同時に進行することから、行事に関わる人々、とりわけ残される家族は、非常に厳しい状況下に置かれざるを得ません。こうした事態を避けることは出来ないものだろうかとの思いが、胸に去来することもあります。
(中略)
 
これからも皇室がどのような時にも国民と共にあり、相たずさえてこの国の未来を築いていけるよう、そして象徴天皇の務めが常に途切れることなく、安定的に続いていくことをひとえに念じ、ここに私の気持ちをお話しいたしました。 
国民の理解を得られることを、切に願っています。』
 
天皇陛下のこのメッセージを聞いてみなさまはどのようなことを感じましたでしょうか?ちなみに生前退位に対する各新聞社の世論調査の結果は次のようになっています。

 
◆朝日新聞
「生前退位をできるようにすることに、賛成ですか。反対ですか」

賛成 84%
反対 5%
 
◆読売新聞
「生前退位ができるように、制度を改正すべきだと思いますか、制度を改正する必要はないと思いますか」

改正すべきだ    84%
改正する必要はない 11%
 
◆日本経済新聞
「生前退位について、政府はどう対応すべきだと思いますか」

今の天皇陛下に限って生前退位を認める制度をつくるべきだ 12%
今後の天皇すべてに生前退位を認める制度をつくるべきだ  65%
現行制度のままで公務を代行する摂政を置くべきだ     15%
いえない・わからない                  7%  
 

なんと80%以上の国民が生前退位に対して賛同しているのです。みなさまはこの結果をどのように受け止めるでしょうか?私は、まさにこの天皇陛下のメッセージ、そして生前退位を提唱した思いにこそ、次世代のことを思った「相続」「事業承継」に対する考え方の原点、そして具体的な行動へとつながる大きなヒントがつまっているのではないかと感じました。
 
経営者のみなさん、自分の身に何かあったときの対策は打てていますか?
 
例えば、会社を経営されている方はこんなことを考えたことはないでしょうか?
 
・もし自分が事故や病気で意思判断能力がなくなったときには会社の経営はどうなるのだろう?
・自分が亡くなって、会社の経営権が今まで会社経営に携わったことが一度もない配偶者や子どもに相続されることになったら会社は存続することができるのだろうか。
 
中小企業の社長で、自社株をほとんどご自身で保有されているような方は、自分の身に何かあったときには会社存続をしていくにあたって大きなリスクを抱えていることになります。なんとなくわかっている方も多いと思いますが、それについての具体的な対策は何も行えていないのが実情です。それはなぜなのでしょうか。
 
・自分はまだ元気だし、若いから大丈夫。
・後継者が育っていない。頼りないし、まだ任せることはできない。
・今、株を多く譲ってしまうと、自分は経営に携わることができなくなる。
・株を贈与するにしても、贈与税等のまとまった資金が必要。
・とにかく仕事が忙しくて、そんなことを考える余裕はない。またいつか。
 
このような考えの中で、結局何も具体的な対策を打っていない社長も多いのではないのでしょうか?
 

これは知っておくべき!家族信託を使った事業承継の新しいカタチ

 
ここで一つ事例を紹介したいと思います。
会社を経営されているA社長と取締役のBさん。ちなみにA社長とBさんは家族・親戚などの身内ではなく、それぞれ配偶者と子供がいます。
 
A社長は、今までこの会社を大きく成長させてきてくれたBさんに、将来は会社の経営権を譲りたいと考えています。ところが今、自社株を贈与すると、Bさんは贈与税を支払うための現金の準備をしなくてはなりません。また少しずつでも自社株を贈与することによってA社長はオーナーの権利を失っていくことになります。
 
そんな状況の中、Bさんはこのような不安を抱えていました。
 
・もしA社長が不慮の事故などで意思判断能力がなくなったり、将来認知症になったときには会社としての重要な判断ができなくなり、会社が今のまま存続できなくなってしまうかもしれない。
・万一、A社長が亡くなってしまったときには自社株が今まで全く経営に携わったこともないAさんの家族にいってしまう。そうすると事業継続の問題やお金の問題など様々なトラブルが起こる可能性があるのでは。
 
A社長は今の会社に尽くしてくれているBさんには大変感謝をしていて、自分に何かあったときには全てBさんに任せたいという気持ちがある一方で、自社株の贈与では、どうしても引っかかる部分がある。そんなときに耳にしたのが、自社株の事業承継をスムーズに行っていくことを目的とした家族信託だったのです。
 

自社株の事業承継をテーマにした家族信託の仕組み

【登場人物と役割】
A社長:委託者兼受益者
Bさん:受託者
 
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【本スキームの仕組みとメリット】
・「指図権」をA社長に与え、A社長が元気な間はこれまで通りA社長が経営の指示命令を行う。もしA社長が指示できない状態(意思判断能力の喪失、認知症など)になったときには、議決権が受託者であるBさんに一元化することになるので、いざとなってもBさん単独の判断で会社経営が滞りなく行うことができる。
・受益権をA社長としておくことで、A社長が仕事できない状態になったとしても、A社長は配当を受け取ることができる。贈与とは違い、自社株をBさん渡してしまうわけではないので、経営権や収益を得る権利は自分の手元に残しておくことができる。
 
これにより、A社長が元気なうちは今と何ら変わらぬ会社経営を行うことができ、A社長に万一のことがあったときには、Bさんが中心となって会社経営ができる仕組みを作ることができたのです。Bさんもこれで一安心。将来、A社長の家族とのトラブルに巻き込まれることもありません。このように家族信託をうまく使うことによって、社長に何かあった時の万一の備えとスムーズな事業承継を行うことが可能になったのです。
 

遺産相続コンシェルジュより


いきなり会社の経営権(自社株)を渡してしまうことには抵抗のある社長も多いと思います。もちろん自分が元気な間は、会社の経営権は自分で持ち続けたいでしょうし、まだ後継者に譲り渡すのには早いと思っている社長も多いことでしょう。ところが、何も対策を打たないまま、社長が不慮の事故等で意志判断能力がなくなってしまうようなことがあると、誰がどのように困ることになるのでしょうか?
もしそのような事態になった場合、経営における重要な意志決定が出来なくなり、会社自体が存続の危機を迎えることになるかもしれません。そうなると従業員はもちろんのこと、取引先、そして自分の家族までも会社に関わる全ての人たちが不幸な結果となってしまうのです。
今回、冒頭にご紹介した天皇陛下のメッセージからは、後継者そして日本国民全員に迷惑がかかることのないようにと考えられた心温かい気持ちが込められており、それを実現するための強い覚悟がひしひしと伝わってきます。ですから国民の80%以上の人が生前退位について賛同しているのでしょう。
会社を経営されている方は、この機会に、事業承継を自分の問題として一度、真剣に考えてみてはいかがでしょうか?また専門家の方はクライアント先でこうしたリスクが考えられる先があれば、一度、問題提起をしてみてはいかがでしょう。もちろん、専門家のみなさまも自分事として考えてみては。(記:髙橋大樹)
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