今だからこそ考えるべき「民泊」とは!?
今注目の民泊とは?
先日のニュースで、2016年の訪日外国人の数が1,000万人を超えたことが明らかになった(6月5日時点)。つい2,3年前には年間1,000万人目標だったものが、今では2,000万人突破も現実なところまできている(2015年は1,974万人)。
この影響により、外国人が日本経済を支えている一方で、深刻なホテル不足に陥っている現状がある。特に東京・大阪のホテルは、高稼働率(80%超)のため予約がほぼ取れない状態が続いており、圧倒的に宿泊施設が足りていない。東横インでは一時、全店で稼働率が100%になりギネスに認定されたほどだ。
この問題の解決策の一つとして注目されているのが「民泊」である。
テレビや新聞で一度は目にした方も多いと思うが、そもそも「民泊」とは何だろうか?
読んで字のごとく、「民家に泊まる」ことを意味するが、現在では「自宅や別荘、空き家などをホテル代わりに他の人を宿泊させる」ことを指している。
この先駆け的な存在が、Airbnb (エアビーアンドビー)だ。Airbnbは、宿泊施設・民宿を貸したい人と借りたい人を結ぶマッチングサイト。世界192カ国の33,000の都市で登録された自宅や空き家などを提供し、誰でも利用することが出来る。近年、日本でも登録者が増えてきており、我々のお客様の中でも、「投資に利用できないか?」「空き家をうまく活用できないか?」などの問い合わせが増えてきている。
民泊の問題点
このように期待が膨らむ民泊だが、問題視されていることがある。それは「民泊は旅館業に該当するのでは?」という問題だ。もし旅館業に該当した場合、営業するには許可が必要になり、勝手に営業活動は出来なくなる。民泊も例外ではないのだ。
旅館業の判断要件を簡単にまとめると以下のようになる。
<旅館業の判断要件>
①宿泊料を徴収している
休憩料、寝具賃貸料、クリーニング代、光熱水道費、室内清掃費等も宿泊費に該当
②社会性がある
不特定の人を宿泊させる、広告等で広く募集をかける場合など
③反復継続性がある
継続的に宿泊募集している。曜日限定、季節限定でも繰り返し行っているなど
④宿泊者が宿泊場所を生活の本拠としていない
本拠の判断:使用期間1ヵ月以上が目安
つまりオーナーが「宿泊料を受けて、不特定の人を宿泊させる行為を継続して行っている」ことが焦点となる。民泊は基本的に「不特定多数の人に数日間、宿泊施設を提供して対価を得る」ことなので、この判断はかなりグレーとされている。民泊の場合、オーナーは個人の方が多いので、営業行為にあたるかどうかの判断や確認が難しいようだ。
もし無許可で営業した場合は、罰則(6月以下の懲役又は3万円以下の罰金)も規定されている。実際、過去に逮捕された事業者もいるので注意が必要だ。
民泊普及に向けた政府の動き
この問題に対して、政府も解決に向け動きだしている。
<政府の主な動き>
●2015年12月 国家戦力特区の大田区で民泊条例制定
●2016年4月 旅館業法の「簡易宿所」に民泊位置づけ(床面積要件を緩和)
●2016年6月 民泊新法の原案含む「規制改革実施計画」が閣議決定
※2017年通常国会に法案提出予定
1泊2日からOK、住宅地でも民泊可能、宿泊数上限180日以下(予定)等
まず政府は、「国家戦略特区」の旅館業法の規制を緩和。それに伴い、大田区で初の民泊条例が制定させた。この条例を満たせば、旅館業法の規定を受けずに民泊を行うことが出来るのだ。
これを機にいよいよ民泊が本格始動か?と思いきや、実際に民泊をおこなうには、なかなか厳しい条例となっていた。
<民泊条例の主な要件>
①宿泊客の滞在期間7日以上(6泊7日)
②居室要件(床面積25㎡以上、区画、設備、器具等に制限)
③清潔な居室の提供
④外国人旅行客の滞在に必要な役割(施設の仕様方法、廃棄物の処理方法等の説明)
※大田区国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業に関するガイドライン参照
誰もが思ったことだろう。滞在期間7日以上の条件…。
いくら外国人旅行者の需要が多いとはいえ、7日以上同じ場所に宿泊する人はどれだけいるのだろうか?旅行者の多くは、地方を含め広範囲を旅行するケースが多く、わざわざ同じ場所に戻って宿泊するのは現実的ではない。案の定、今年4月末までの事業者の登録申請件数は11件ほどに留まっている。
このままでは旅館業法の申請もされない、特区での登録申請も増えないまま、無許可の民泊が普及してしまう可能性がある。そこで案としてあがったのは新法の制定だ。
新法の制定により、民泊の主な要件は以下のようになることが想定されている。
※民泊サービスのあり方に関する検討会最終報告書(案)参照
新法では宿泊日数の要件もなくなり、民泊参入へのハードルがぐっと低くなることは間違いないだろう。しかし、新たに営業可能日数に制限(年間180日以内)が掛かる可能性が高く、反発している団体も出てきている。仮に年間180日となった場合、その年の残りは民泊として営業できなくなるだけでなく、日数を超えた場合は、旅館業法の適用となるため許可が必要となってしまう。
新法成立後は、3つの法律や条例(旅館業法、民泊条例、新法)が混在することになるので、目的や投資スタイルに応じた制度の選択が必要となるだろう。あまり理解しないうちにおこなってしまうと、行政指導や営業停止に陥ってしまうことに注意したい。
今後の課題
何よりも注意したいのは、民泊の仲介業者に対しても規制が入る可能性があることだ。行政が業者に対し、違法な民泊物件情報サイトの削除命令や業務停止命令等を行えるよう検討されている。もちろんAirbnbも対象となる。
つまり新法成立後は、遵法性のある投資家の物件しかサイト掲載されず、これまで通りに民泊を行えない人が増え、市場が混乱することが予想される。そして投資家は、新法(営業日数制限)か旅館業法(許可)どちらかの選択を迫られることになるだろう。今、Airbnbを通して民泊を行っている人は、今のうちから今後の投資スタイルを考え、どちらでも民泊が行えるよう準備が必要だ。
また現状、Airbnbに頼りきっている業態も問題だ。ほぼ業界を独占しているAirbnbが規制により経営破たんや業務停止になったら?その時は、業界そのものが立ち行かなくなってしまうだろう。今後、仲介業者も増えていくことが予想されるが、世界と繋がっているAirbnbのようなサイトに成長するには時間が掛かかり困難だ。そうならないためにAirbnbとしても脇を固めてくる(遵法性を保つ)だろうが、一つのリスクとしてとらえておきたい。
民泊を考慮した対策提案
とはいえ課題も多い民泊だが、うまく活用すれば効率の良い不動産投資ができる可能性を秘めている。
先日、民泊に興味をお持ちのお客様へ、新法を考慮したシェアハウスと民泊のハイブリット投資を提案させていただいた。普段は外国人専用のシェアハウスとして運用し、空きが出た際には次の賃借人が見つかるまで民泊として旅行者へ貸し出す。これにより、空室リスクをグッと抑えることができ、外国人(在日や旅行者)の需要を同時に確保できるメリットがある。もちろん相続税評価においても、貸付による評価減も取れて相続税対策としても有効的だ。あくまでも一例だが、今後弊社でもこうした民泊を視野に入れた対策提案も増えていくだろう。
今はまだ使い勝手が良くない民泊(制度)だが、新法が成立してから本格的に普及してくる可能性は高いだろう。その波に乗り遅れない為にも、今は民泊に対する理解を深める準備期間として、自分たちのビジネスにどう繋がるか考えてみては如何だろうか。
遺産相続コンシェルジュからのアドバイス
政府がオリンピックに向けて民泊主導で動いていることは明らかです。不動産を所有している方(空家等)や不動産投資を考えている方は、今のうちから民泊を含めた対策や活用の検討をしてみては如何でしょうか。
(記:友重孝一朗)