その対策ちょっと待った!相続対策ブームに踊らされていませんか!?
最近の新聞記事や不動産ニュースを見ると、こんな情報を目にしませんか?
・アパート建築大手の〇〇、6期連続最高益!
・低金利を追い風に主力の賃貸アパート建設の受注が倍増!
・マイナス金利導入により不動産投資市況が活況!バブル期並か!
皆さんご存知のとおり、相続では現金よりも不動産に組み換えて持っている方が、結果として相続税額が少なくなる。このような節税対策が、昨年の相続税制の改正(増税)をきっかけに地主さんや富裕層による、アパート建築や不動産投資が加速した。
そして、そこにマイナス金利政策が加わることで、さらに不動産投資に対する良い環境が整ってきた。こうしたニュースをテレビや新聞、知人などから毎日のように聞くと、相続対策を考えている方の中には、その流れに乗り遅れないように、少しでも早くアパート建築や不動産投資をしないと!と思っている人も多いのではないだろうか?
えっ!相続税対策で1億円の不動産投資!大丈夫?
これは先日、私がご相談を受けたAさん(50代、女性)家族のお話である。
もうすぐ80歳を迎えるお父さんが、遺言信託をしている先の金融機関から勧められ、相続税節税のために不動産投資を検討し始めたとのことだった。
お父さんはそのことについてAさんには相談をしていなかったが、Aさんはたまたま実家に帰った時に、机の上に約1億円の借入をして不動産投資をする金融機関の提案書を発見したのである。
不動産のことについては全く素人のAさんは、それを見てびっくり。
お父さんにそれについて聞いたところ、「銀行が勧めてくれる提案だから心配はないだろう」の一点張り。
今まで家族の誰もがやったことのない、しかもかなり高額な不動産投資を考えていることに不安になったAさんは、ご主人を通じて付き合いの深い保険営業マンに相談をしたところ、弊社の存在を知り、ご夫婦で相談に来たのだ。
そこで、まずは私がお父さんと直接お会いをして話をする時間を取りましょうという提案をした。その意見に同意してもらえたので、まずはAさんとその旦那さんの両方から、不安な気持ちであるということをお父さんに強く訴えてもらい、「不動産と相続に関する専門家がいて、一度その人の話をお父さんにも聞いて欲しい」と話をしてもらうことに。
二つ返事で「じゃあ一度ぐらいは参考までに話を聞いてみるか」となったのである。
誰も教えてくれなかった今回の不動産投資のリスク
私が実際お父さんに会ったときには、特定のバッグエンド商品を持たない不動産相続の専門家であるということ、そして弊社の5つの特徴を一つ一つ丁寧に話をした。
①他社では決してマネできない提案力!
②おばあちゃんでもわかる脅威の提案力!
③売る!買う!建てる!に誘導しない公正中立性!
④家族に相続の話を切り出しにくい人大歓迎!
⑤お客様だけの相続プロフェッショナルチームを形成!
それに加えて、今まで私が経験してきた不動産相続対策に関する実際にあった事例の話や、過去のお客様の失敗事例などを話すと、徐々に信頼をしてくれたのか、少しづつお父さんからも私に対して質問が出てくるようになったのである。
しばらく話をしたところで、同席していたお母さんとAさんに「相続税節税のために、今回借入をして不動産投資をすることに対してどう思いますか?」と話を振ると、2人とも口を揃えて「借入に対する不安がとても大きい。そもそも、その方法がいいのか悪いのかも判断がつかない。」とのことだ。
またお母さんは少し呆れた口調で「今のままじゃ銀行の言いなりになっちゃわない?銀行はお金を貸したいだけでしょ。」というようなことも言っていた。
それを聞いたところで、「お母さんとAさんはこう言っていますが、お父さんはどう思われますか?」と聞くと、お父さんも心のどこかで一抹の不安があったようで、
「そうか……。相続税も安くなるようだし、銀行が勧める良い物件が手に入るから、よしやろう!って思い込んでいたけど、それが家族にとって本当にいいことなのかということは深く考えてなかったなぁ」と。
そして「良かったらこれを一度、見てくれないか」と銀行が作成した財産一覧表と、不動産投資の提案書、候補物件の資料一式を見せてくれたのだ。
「実は銀行からは、この物件はすごくいい物件で問い合わせがかなり多いから、来週中には決めてくれと決断を迫られているんだよ。意見を聞かせてくれないか。」とお父さん。
内心「これって不動産会社がよく使う方法だなぁ」と思いながらも、とりあえず財産一覧表をざっと拝見すると、確かに相続税は多少かかる。けれども、持っている現金だけでも十分に支払うことのできる相続税額でもある。
仮にこの物件を買うことで1,500万円程度の節税効果があるという提案内容だが、キャッシュフローを見ると、もし全額借入をすると、3部屋空室が出るとマイナスになる。
当初よりサブリース(家賃保証)での提案なので空室リスクはないとしても、サブリースで運用をしても手取りで年間100万円程度しか残らない。賃貸収支シミュレーション上では、超低金利で、しかもサブリースで賃料固定での想定だが、もし将来的にサブリースが外されて空室リスクを負うようになり、さらに金利が上がったとなると、逆ザヤになり得る可能性も考えられる。
またよくあることだが、賃貸募集のための費用や原状回復費用などは含まれていない。そして、物件自体も写真の見栄えは良いが、プロの視点から見ると気をつけなくてはいけないポイントもいくつかある。(例えば、最寄駅から徒歩15分以上、トイレと一緒になったユニットバス、オートロックなしなど賃料の下落につながりやすい要素が見受けられた)
こうしたことも考慮すると、現在提示されている価格も割高にも感じられるし、将来、もし売却をする場合に今回の相続税節税効果分(1,500万円)よりも価格が下がる可能性も十分考えられる。ざっと資料を見たところで、このようなリスクがありそうだということを伝えた。
そして不動産で行う相続税対策には、物件を1棟で買うだけではなく、区分所有マンションを複数購入すること、既に所有している収益性や立地条件の悪い不動産を売却して、資産を組み換える手法があることなども伝えた。
お父さんはそれを聞いて、「銀行からそんな提案は何もなかったなぁ」とぼそり。
税理士に聞いても「不動産投資なんてやめておいたほうがいい」と言われるだけで、具体的な不動産対策提案は何もなし。
今日初めて、不動産購入によるリスクを大まかにも確認でき、他にも色々と対策手法等があることを理解できたとのことだった。
最後に痛い目を見るのはお客様
このように実は一般のお客様は相続(税)対策や不動産対策において、適正な判断ができる状況にないことが多いの現状だ。
例えば銀行はお金を貸すことが目的、アパート建築会社は建築受注をすることが目的、不動産仲介会社は不動産を売ってもらう、買ってもらうことが目的となるなど、それぞれの目的があって仕事を行い、提案をしている。これは会社員として会社の利益を追求することが当然なので、仕方ないことでもある。しかし、こうした観点からすれば実際にお客様の方向を見て、対策提案をする人が世の中にはほとんどいないのが現実なのである。
自分自身だけで、相続(税)対策・不動産対策について全て理解をし、メリット・デメリットがわかって判断ができるのであれば問題はないが、もしそれが出来ないとなると、結果的に相手の言いなりになってしまっていて、最後痛い目を見るのはお客様自身なのである。
相続対策における不動産活用や不動産投資が一種のブームになっている今こそ、冷静な判断力と見極める力、そして家族間の思いの意思疎通が必要不可欠なのである。そしてその判断が自分たちだけでは出来ない場合は、公平な視点で、お客様の立場からアドバイスをしてくれる専門家を見つけるべきなのだ。
遺産相続コンシェルジュより
相続対策や不動産対策の責任は誰が取ってくれるのか?税理士か?金融機関か?不動産会社?建築会社?それともコンサルティング会社?答えは、そのどれでもない。間違った対策をしてしまった時に最終的に負担を強いられるのはお客様自身とそしてそのご家族なのである。最後、痛い目を見ないようにするためには、行う対策について自分たちでしっかりと理解をし、家族間でその考えと対策の内容を共有し、最後は自分たちで判断をして決断をする必要がある。プロサーチでは、お客様自身が適正に判断をし、家族間での意思疎通をした上で最終的な決断ができるための存在として、これからも役割を果たしていきたい。(記:髙橋大樹)