日本全国共通!成功する相続の考え方とは何か!?
いわき・郡山での不動産相続セミナー
先日、福島のいわきと郡山にて不動産・相続セミナーで講師をしてきた。都内では相続対策に関するセミナーが飽和状態で、昨年と比較するとセミナーの集客状況がやや鈍っている様子があるが、地方では相続対策に対する関心はまだまだ高いようだ。地方の場合、都内に比べると相続対策に対する情報が少ないということも一因としてあるのかもしれない。
今回は雨が降るなど天候も悪い中、いわきでは約40名、郡山では約70名の来場があり、お客様が話を聞く様子を見ても、何かを学んで帰ろうという真剣さが伝わってきた。
セミナーの内容
セミナーの内容はいつも都内でやっている内容とほぼ同じである。前半部分で不動産市況と相続税改正の概要について、後半部分で不動産相続の成功事例と相続に対する考え方をお話しした。ちょうど7/1に相続税路線価が発表されているので、路線価をもとにして講演地(いわき・郡山)の不動産市況にも触れて話を展開した。ちなみにいわきや郡山では、路線価が昨年と比較して上昇している。あわせて不動産市況も非常に良い状況だ。というのも震災復興支援による他県からの人の流入と併せて、原発近くの村の人たちも避難所として今もなお住み続けている。市内に滞在する人は増え続けているが、もともと賃貸住宅がそれほど多い地域でもないため、賃貸で部屋探しをしても空いている部屋はまず見つからないそうだ。また自宅を建てようと思って土地を探しても土地がない、土地の値段が高くて買えない。事前に地元の不動産会社にヒアリングをしたところ、土地の実勢価格は昨年と比較しても1.2~1.5倍程度まで上がっているらしい。いわきと郡山の不動産は完全な売手・貸手市場となっているとのことだった。
日本全国どこでも共通する相続の問題点
このように地域によって置かれている状況で適正な不動産活用方法が変わったり、都内と比較すれば地方では土地そのものの時価や評価額が大きく異なるため、不動産対策の観点から見ると、提案する対策内容が多少変わることもあるだろう。ただ相続全体の考え方については日本全国どこでも通じるものがある。ではそれはいったい何であるのか。
それはずばり、相続における一番の問題点が家族間でのコミュニケーション不足にあるということである。セミナーで話をしていると、どこの会場でもセミナー前半の税制や節税テクニックの話よりも、セミナー後半での家族の想いや気持ちに焦点を置いた話の方が、聞いているお客様のリアクションが明らかに大きい。最後のアンケートを見ても「相続の問題は家族の中にあるということに気が付かされました」「今まで一度も家族と相談したことはありませんでした」という回答もよく目にする。では、この問題をどう解決すべきなのか。とても難しい部分ではあるのだが、僕らのセミナーではその問題を解決するためのきっかけとなる作業を行っている。
親子で話すきっかけを生む「家族のきっかけシート」
それがこの「家族のきっかけシート」だ。ぜひ皆さんにも一度やってもらいたい。
やり方は簡単。自分にとって大切な人(親・子供・配偶者など誰でもよし)をまずは思い浮かべてもらう。その人の名前を大切な人の( )欄に記入。あとはその人のことを真剣に考えながら、左に書いてある簡単な10個の質問に答えていくだけ。まずはこの説明だけをして、お客様に書いてもらうのだ。そんなに難しい質問・作業でもないので2~3分で書いてみて下さいと促す。その間、まわりの様子を見ていると、日本全国どこの会場でやってもほぼ同じの状況が生まれる。ほとんどの人の手がとまっているのだ。3分経過後に「できましたか?」と聞くと、ほとんどの人がシートを埋めることができていない。実は私もこのシートをやってみたことがある。僕の場合は大切な人のところに、親の名前や妻の名前を書いてやってみたのだが、半分埋めたところで全く手が進まなくなった。ものすごく身近な人に対するこんなに簡単な質問だが、多くの人が答えられないのだ。まずは自分が大切だと思っている人の事をちゃんと知ることができていない現状に気が付くことが大事なのである。つまりは、大切な人のこんなに簡単なことですらわからない中で、財産の話や相続の話をすることがどれだけハードルの高いことなのかをまず実感してほしいというのがこのシートの第一の目的である。
そして、時間がかかってもいいのでまずは全てを埋めてみる。一生懸命にその人のことだけを考える。そして最終的には、そのシートを見ながら実際にその大切な人と答え合わせをしてほしいのだ。もしかしたら、ほとんど合っていないかもしれない。でも合っているか合っていないかよりも大事なことがある。それは頑張って埋めたシートによって家族での会話が生まれることだ。お客様はみんな何かきっかけを得ようと思ってセミナーに来るのだが、ただ参加をしただけでは、なんとなく知識を得た気持ちにだけなり、家に帰って2、3日も経つと、もう何事もなかったかのように日常の生活に戻ってしまう。だから僕らのセミナーでは、こうして実際に自分自身で体感をしてもらって、それを家に持ち帰ってもらう。まずは家族で相続の事を話し合えるきっかけを作るところまでをお手伝いできるように考えて作り込んでいるのだ。
実際にきっかけシートを使ったお客様のお話
実際にセミナーに参加された60歳のAさん。Aさんはいわゆる地主さんの息子さんで、将来の相続のことを心配しての参加のようだったが、80代のお父さんはまだまだ元気。不動産を含めた財産の管理は全て自分で行い、詳しい財産の内容はAさんには全く教えてくれないらしい。そこで今回、Aさんはセミナーが終わった後に、自宅に帰ってお父さんにこう聞いてみたとのことだった。
Aさん「そういえば親父って子供の頃、何になりたかったの?」
何の前触れもなく唐突に聞かれたお父さんはおそらく驚いたのだろう。
「なんで急にそんなことを聞くんだ?」とお父さん。
Aさん「実は今日、相続セミナーに参加してみたら、相続の一番のポイントは親子間のコミュニケーションにあるっていう話を聞いてきてさ。それでこのきっかけシートをその場でやってみたら、親父のことを何にも知らない自分に気が付いたんだ。だからまずは親父のことをもっとちゃんと知りたいなと思って。」
もしかしたら、それを聞いてお父さんも何か感じたところがあったのかもしれない。
またAさんが相続について真剣に考えていることに初めて気が付いたのかもしれない。
その日の会話をきっかけとして、お父さんは徐々に自分の財産のことについてAさんに話をするようになったそうだ。こうしたことがAさん一家にとっての相続対策の大きな大きな第1歩となったのではないだろうか。
遺産相続コンシェルジュからのアドバイス
普段、多くの不動産会社や税理士事務所が行っている相続対策セミナーではどうしても「相続税節税」の部分に焦点が当たってしまいがちであり、節税するための方法やうまく節税ができた事例など、税対策の部分が中心となる話が多いのが現状である。ところが、相続の本質的な問題は、「税金」の部分よりも、「気持ち」の部分にあることが多い。特に親と子のコミュニケーションが取れていないことが最終的に大きな問題になることが多く、個別相談を受けているとその「気持ち」の部分で相続がうまくいかなかった話もよく聞く。例えば、親が良いと思って行った大きな借入金をしてのアパート建築による相続対策が、子供にとっては「借入金を引き継ぎたくない」「1つの敷地に1つのアパートを建てると将来、兄弟で分割ができない」など親と子で相続対策に対する大きな食い違いがあることもある。こういう話は事前に親子間でコミュニケーションがしっかり取れていれば、起こり得ない話なのだが、相続の現場ではよくある話なのだ。しかしながら、いくら親子であっても、何のきっかけもなく急に相続や財産の話をするのは難しいことの方が多い。そこでまずは親子で会話をすることから始めよう!というのが私たちの提案する相続対策の第1歩なのである。相続対策を考える前に、皆さんのご家庭では親子でコミュニケーションがしっかり取れていますか?ぜひこの機会に一度「きっかけシート」をやってみてはいかがでしょう!(記:高橋大樹)
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