空き家になった実家を賃貸にするメリット・デメリットと賃貸に出す際の注意点を詳しく解説

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空き家になった実家を賃貸にするメリット・デメリットと賃貸に出す際の注意点を詳しく解説写真

2021.7.15
更新 2022.3.15

 
「親が老人ホームに入所して空き家となった実家を、誰も使う予定がないから相続が発生するまでの期間、賃貸に出して収入を得たい」
 
このようなご相談が増えています。
 
その理由は、親が施設に入所した後の生活費や施設費用の捻出のため…なのですが、実際に検討していくと次のような悩みが出てくるようです。
 
・室内のリフォームはどの程度するべき?
・一定期間だけ貸したいときはどうしたらいい?
・空室や修繕など、貸している間のリスクをできるだけ軽減するにはどうすればいい?
・賃料はいくらで貸せる?
 
具体的に考えてみるとあなたも同じような疑問が出てきませんか。
 
本記事では、実家を賃貸するときのメリット、デメリットと失敗して後悔しないために押さえておきたいポイントをお伝えします。
 
 
本記事のポイントはこちら。

・空き家を賃貸に出すことで家賃収入の確保のほか、建物の維持管理を図ることができるメリットがあるが、貸主都合での解約ができず、賃貸管理の手間が増えるといったデメリットが発生する。
 
・賃料収入向上など資産形成目的であれば長期賃貸、親の老人ホームなどの入居費用や固定資産税や管理費などの費用捻出目的の親の相続発生までの資金確保目的であれば短期賃貸を検討する。
 
・投資期間や賃料収入を考えずリフォームに費用を掛けすぎると、投資した費用を回収できないことがある。部屋や設備を綺麗にすることが目的ではなく、賃貸収支が成り立つようにシミュレーションすることが大切。
 
・賃貸借契約には【普通賃貸借契約】と【定期借家契約】の2つがある。賃貸してから3年や5年後に入居者に退去してもらいたい、家賃滞納や近所迷惑など不良入居者に困りたくないときは、定期借家契約を選択する。
 
・一般的な賃貸の他に、倉庫などとして貸す方法がある。収入や貸す期間などによって検討する。

 
 
■関連記事
相続対策に成功する家族と失敗する家族の違いとは?ゼロからわかる相続対策の進め方
 
 

 空き家となった実家を賃貸にする場合のメリット・デメリット

メリット・デメリット
 
実家を賃貸するとき、固定資産税などの支払いの足しにしたい、誰かに使ってもらいたいなどの理由がありますよね。
 
もし実家を賃貸するとしたらどのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。代表的なものを見ていきましょう。
 

 賃貸した場合のメリット

実家を賃貸することで得られるメリットは次のようなことが挙げられます。
 

・家賃収入を得られる
・人が住むことにより建物が傷みにくくなる
・放火や空き巣から実家を守れる
・不審者が居つくことがない
・賃料収入を基に庭や建物の管理状態を保てる など

 
収入が得られることで、親の介護費用の捻出になったり、実家を維持するためにかかる費用がまかなえますね。
 
この他にも、誰か住んでいることで不審者も寄り付きませんし、建物や庭などで問題があれば借りている人から連絡がきますから、早々に対応することができます。
 
空き家のままよりも、近隣の方への不安や迷惑といったことも減らせるでしょう。
 

 賃貸した場合のデメリット

メリットがある一方、貸すことによるデメリットも把握しておきましょう。
 

・一度貸したら、貸主の都合で解約するのが難しい
・苦情対応や滞納、入金管理など賃貸管理の手間が生じる
・短期的な賃貸とする場合は高額な家賃収入は期待できない
・賃貸時のリフォーム費用、設備修理や入居者の入れ換え時の原状回復などの費用がかかる
・不良入居者だと建物や設備を大事に扱わないことがある

 
人からお金をもらって貸す以上、賃貸人としての責任が生じますから手間や費用が掛かることは覚悟しておきましょう。
 
空き家状態の実家を保有しているときの注意点や、売却するときのことも知りたい方は『必ず訪れる「実家どうする?」問題。売却や処分、賃貸の注意点をプロが解説』をご覧ください。
 
また、貸したほうがいいのか、売ったほうがいいのか悩んでいる方は、『空き家の実家「貸す」「売る」どちらがいい?判断基準をプロが徹底解説!』も一緒に読んでみてくださいね。
 

 空き家となった実家は長期で貸す?短期で貸す?

時計と人形
 
「親の相続があるまで」「ずっと貸し続けてもいい」など、実家を貸すにしてもいつまで貸すのか、ということも考えないといけません。
 
短期で貸す、長期で貸す、それぞれメリットや注意点があります。
 

 長期で貸し出す際のメリットと注意点

10年以上の長期で貸し出すときの目的は、親の相続発生後も、空き家になった実家を相続する子が、資産形成や安定した収入源の確保したいからということでしょう。
 
このときのメリットと注意点をお伝えします。
 

メリット

(1)賃借人は長く借りられ、立ち退きを心配する必要がないため、相場条件で貸せる
・短期の契約ではないので相場の賃料で貸すことができる
・入居者が入りやすい
 
(2)風呂やキッチンなどの設備交換も含めたフルリノベーションができる
・投資した費用を長い期間かけて回収できる
・競合物件より魅力があると入居者が付きやすくなる
 

注意点

(1)賃貸中の実家を自己利用や建替えなど他にしたいことができても自由に使えない
・貸主の一方的な都合では賃貸借契約を解除できない
・退去してもらうには立ち退き料を支払う場合がある
 
(2)築30年以上の実家の場合、建物の補修や改修費用がかさむことがある
・給排水管の交換、屋根などの防水、外壁補修や塗装で百万円単位の費用がかかる
・風呂やキッチンも交換する時期がくるので、それらの修理や交換のための費用がかかる
 

 短期で貸し出す際のメリットと注意点

短期で貸し出すときの目的は、親の老人ホームなどの入居費用や、実家の固定資産税や管理費の支払いのため、相続発生するまでの間だけ賃料収入を得たいということでしょう。
 
このときのメリットと注意点をお伝えします。
 

メリット

(1)相続が発生した後など先々の計画を立てやすい
・建て替えて自分で使うなど、実家を自由に使うことができる
 
(2)遺産分割するときの対策になる
・親の相続後に実家を売却することで、不動産共有ではなく売買代金で遺産分けできる。
 
(3)リフォームや補修や改修などの費用負担が軽くなる
・貸す期間が短いため、長期と比べて、賃借人の入退去による原状回復工事の回数や、補修や改修することが少ないので費用負担が軽くなる
 

注意点

(1)短期の貸し出しのため、入居者が入りにくい
・賃料は相場よりも低くなる
 
(2)リフォームなどの費用は抑えること
・無計画に費用をかけると、賃貸している間に回収できないことがある
・綺麗にすればするほど賃料が上がるわけではない
 
 

長期と短期のメリットと注意点をお伝えしました。
それぞれメリットを最大限発揮するためには、賃借人との契約形態もポイントです。
 
長期で貸し出す場合は、賃借人が安心して長く借りられる普通賃貸借契約で貸すことをおすすめします。
 
一方、短期で貸し出す場合は、定期賃貸借契約です。このあと説明しますね。
 
 

 空き家となった実家を賃貸に出したい場合の3つの検討ポイント

賃貸
 
空き家状態の実家を貸そうと考えている、すでに貸しているけど今の入居者が退去する予定があるという方は、これからお伝えする3つのポイントを押さえて失敗や後悔をしないようにしていきましょう。
 
 

 1.空き家のリフォームは投資回収期間を考慮して内容を検討する

まず1つめは、投資回収期間を考慮してリフォーム内容を決めることです。
理由は、リフォーム費用(=投資)をかけすぎてしまうと、その投資回収に時間がかかってしまうからです。
 
「費用を掛けフルリフォームをすれば、その分高い賃料で貸せる」と考えているお客様は多いのですが、実はそんな簡単にはいきません。
地域によって、賃料相場の上限というものが存在するためです。
 

その上限を超えた賃料で貸すには、内装が綺麗なのは前提条件でしかなく、「レインボーブリッジが一望できる唯一の部屋」のような“その物件でしか手に入らないもの”があることが必須条件です。
 
どのくらいリフォーム費用をかけても良いのか賃貸収支シミュレーションを作りましょう。
 

必要な情報

(1)賃料や礼金などの収入
(2)固定資産税や管理費等の支出
(3)3年間、5年間など貸す期間を決める
(4)リフォーム費用の原資(自己資金または借入)

 
 

例:実家(一戸建て)を5年間賃貸したときの簡易収支シミュレーション

・築40年、3LDK、80㎡、固定資産税毎年10万円
・月額賃料15万円、管理会社へ管理委託(賃料の5%)
 
<賃貸シミュレーション>

※減価償却費は考慮していません。※所得税30%とします。
※ずっと満室とし、入居者の入れ替えはないものとします。
 
 
シミュレーションの結果、5年間で得られる収入は、約530万円です。
 
次に、リフォーム内容と費用のイメージ(概算)を確認します。
 

 
フルリフォームだと約450万円かかりますから、ほとんど手残りがありません。
空室期間や、賃料下落があると5年間では投資回収できなくなります。
 
入居者が入りやすいなら、とフルリフォームしたくなるのも分かります。
しかし、築40年の戸建てでフルリフォームと簡易リフォームとでは大きな賃料差はありません。
 
実家と似ている周辺物件をピックアップして、賃料とリフォームの程度をよく確認しましょう。そうすることで、どの程度リフォームすればよいのか基準を掴むことができます。
 
 

 2.貸主都合で契約期間を定められる定期借家契約の利用を検討する

2つめは、定期借家契約を利用することです。
 
実家を貸して、親の相続までなど一定期間後に、売却したり、建て替えて子が住んだりする場合は、賃借人に立ち退いてもらう必要があります。
 
このとき、賃借人と立ち退きを巡って争いになり決着がつくまで年単位でかかることがあります。こうなってしまうと、計画がとん挫したり、立ち退き料を支払うことになります。
 
できることなら立ち退き問題を生じさせたくないですよね。
 
このような問題を生じさせないためには『定期借家契約』での契約が有効です。

 

普通賃貸借契約

一般的に使われている賃貸契約形態は『普通賃貸借契約(更新型)』です。
契約期間が満了しても、賃借人が住み続けたいという意思表示をすれば住み続けられるのが特徴です。
 
賃貸人が立ち退いてほしいと言っても、正当事由がなければ賃借人は応じる必要がありません。
 
正当事由とは、例えば、建物が朽廃し貸し続けると住んでいる人の命の危険や近隣住民にも危害が及ぶ可能性があるという場合や、賃料を3か月以上滞納していて信頼関係が崩壊しているなどです。
 
このような正当事由がない場合は、正当事由を補完するため、立ち退き料を支払うことがあります。
 
立ち退き料を支払って解決できることもあれば、感情的に揉めてしまうとそもそも立ち退きまでに年単位でかかってしまったり、立ち退き自体を断念せざるを得なかったりするケースもあります。
 

定期賃貸借契約

『定期借家契約(再契約型)』は、契約期間が満了するときに貸主が再契約を希望しなければ、借主が契約存続を希望しても契約は終了します。正当事由も立ち退き料も不要です。
 
ただし、契約満了の半年から1年前までに借主へ契約終了や再契約の通知をする必要がありますので注意してくださいね。
 
将来的に空き家を売却したり自ら住んだりする可能性がある場合には、普通賃貸借契約ではなく定期借家契約を利用することで、貸主側の都合で契約期間をコントロールすることができます。
 

 3.利用用途を検討する

 
3つめに、実家をどのように貸すかも重要ポイントです。
 
今回は居住用と倉庫用で、収入や運用面などを比較していきます。
 
<前提条件(都内)>
・築40年、3LDK(リビング10帖、居室6帖(畳)×3部屋)、80㎡
・居住用/月額賃料15万円 契約相手は1名
 倉庫用/月額賃料1帖5,000円 契約相手は複数人(1帖単位で貸せるため)
 

※倉庫の1帖あたりの賃料は、モノオク株式会社のサービスのデータを参考としています。
※倉庫で貸せる部分は、人が荷物を置くために使うスペースを除いた部分のため、リビング10帖⇒6帖分、居室6帖⇒5帖分として計算しています。
 
 
居住用として貸す方が賃料収入は多くなりますが、設備修繕など突発的な費用負担があることも計算に入れておく必要があります。
 
一方、倉庫はスペースを貸すだけですから、住宅用と比べ設備修繕費用はかかりません。
 
また、居住用と比較するとドア交換(セキュリティのため)とクリーニングくらいなので、初期投資を30万円程に抑えることができます。
 
居住用と倉庫用、貸すときのそれぞれのメリットとデメリットの一例をご紹介しました。
 
この他にもシェアハウスや民泊などでの活用があります。
 
貸し方によって収入もかかる費用も全く変わります。
とにかく収入を最大化したいのか、収入は欲しいが初期投資を抑えたいなどの考えを踏まえ、人に住んでもらうのか、倉庫などスペースとして貸すのかの活用方法を選択するようにしましょう。
 
 
また、このほかにも知っておいてほしいことがあります。
 
もし親が認知症等で意思判断能力がなくなってしまうと、実家を貸すことはもちろん、再募集したりリフォームすることができなくなります。
 
このときの対策として、親が元気なうちに家族信託をしておくことをおすすめします。
 
家族信託については、『家族信託ってなに?概要や仕組みをわかりやすくイラスト解説!』を読んでいただくと、どのようなものか分かります。
 
 
プロサーチ株式会社では、実家を賃貸するとき、どのような貸し方が良いのか、注意すべきところなどの無料診断が可能です。
 
実家を賃貸するかどうか迷っている方も、具体的な話が聞きたいという方も、ぜひこちらから無料診断をお試しください。
 

 

 

 まとめ

 
本記事のポイントはこちら。
 

・空き家を賃貸に出すことで家賃収入の確保のほか、建物の維持管理を図ることができるメリットがあるが、貸主都合での解約ができず、賃貸管理の手間が増えるといったデメリットが発生する
 
・賃料収入向上など資産形成目的であれば長期賃貸、親の老人ホームなどの入居費用や固定資産税や管理費などの費用捻出目的の親の相続発生までの資金確保目的であれば短期賃貸を検討する
 
・投資期間や賃料収入を考えずリフォームに費用を掛けすぎると、投資した費用を回収できないことがある。部屋や設備を綺麗にすることが目的ではなく、賃貸収支が成り立つようにシミュレーションすることが大切
 
・賃貸借契約には【普通賃貸借契約】と【定期借家契約】の2つがある。賃貸してから3年や5年後に入居者に退去してもらいたい、家賃滞納や近所迷惑など不良入居者に困りたくないときは、定期借家契約を選択する。
 
・一般的な賃貸の他に、倉庫などとして貸す方法がある。収入や貸す期間などによって検討する。

 
実家を貸した後になって「もっとちゃんと検討しておけばよかった!」と後悔することにならないよう、収支シミュレーションを作成し、3つのポイントを押さえて検討するようにしてください。
 
実家を賃貸するとき、親の相続のことも絡みますから不動産と相続に詳しい専門家に相談することをオススメします。

 
 
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この記事の監修
プロサーチ株式会社 代表取締役 松尾 企晴(まつお きはる)

20歳のとき母方の祖父母を火事で亡くし、祖父祖母の相続では兄妹間の争族に発展。『またいつか』ではなく『すぐにでも』行動しなければならないことや、どれだけ仲の良い兄妹でも揉めることを痛感。
会社の事業理念に『家族の物語をつむぐ』を掲げ、不動産等のモノだけではなく、親や子に対する想いや思い出などのコトも含め、家族が織りなしてきた物語(モノやコト)を親から子へと継承していくことこそが【真の相続】と考え、不動産相続のプロとして、お客様の気持ちを聴き、寄り添う姿に多くの顧客から信頼を得ている。
現在は全国から寄せられる相続に関する相談の解決に尽力しながら、家族信託の提案や、相続問題解決のヒントをメルマガ・セミナーなどで情報を発信している。

 

 

 

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